クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2022.11.21 公開日:2022.11.21

新型ランボルギーニはドリフトも自由自在!? ウラカン テクニカに試乗。

「タイヤが滑るか、滑らないか」のギリギリを攻めるのが楽しい! ランボルギーニ・ウラカンの最新にして最終モデル「テクニカ」に初試乗。モータージャーナリストの大谷達也がリポートする。

文=大谷達也 写真=Lamborghini S.p.A.

記事の画像ギャラリーを見る

ウラカン テクニカの位置づけ

ランボルギーニ・ウラカン テクニカ|Lamborghini Huracan Tecnica

 ランボルギーニ・ウラカンの実質的な最終モデルともいわれる”テクニカ”に、スペイン・ヴァレンシア地方のサーキットと一般道で試乗した。

 それにしても「ウラカンの実質的な最終モデル」とは、いったいどういう意味なのか? 実は、2014年にデビューしたウラカンは、その後、様々な派生モデルを生み出してきた。だから、本来であれば”ウラカン”というよりは”ウラカン・シリーズ”と呼んだほうが正しいのかもしれない。しかも、過去8年間で誕生したウラカン・シリーズは、主要なものだけでも12モデルを数えるほどの大家族なのだ。

 それらひとつひとつについてここで細かに説明する余裕はないが、ざっくりと申し上げれば、マイナーチェンジ前のオリジナル・ウラカンと、マイナーチェンジ後のウラカン エヴォに大別できる。さらに、オリジナルとエヴォのそれぞれに、スパイダー(ルーフが開閉可能なコンバーティブル)、RWD(ウラカンはまず4WDでデビュー。その後、後輪駆動版のRWDが追加された)、高性能版(オリジナル・ウラカンではペルフォルマンテ、ウラカン エヴォではSTOと呼ばれた)が設定され、それらの順列組み合わせによって11モデルが生み出されてきたのである。

ウラカン テクニカがミドに搭載する5.2リッター自然吸気V10エンジンは、最高出力640ps/8000rpm、最大トルク565Nm/6500rpmを発生する。

 では、「12番目のウラカン」にあたるウラカン テクニカはどのような位置づけなのかといえば、クーペのエヴォでRWDとされているものの、既存のモデルとは違って純粋な高性能版とはいいきれない部分が残る。より正確にいえば「高性能だけれど快適性も損なわれていない」という、これまでになかった位置づけのウラカンがテクニカなのだ。

 そのベースになったのは、後輪駆動ウラカン エヴォの高性能版として登場したウラカンSTO。エンジンは、ウラカン・シリーズに共通の5.2リッター自然吸気V10エンジンだが、これをSTOと同じ640ps/565Nmまでチューナップ。ただし、レーシングカーを思わせるようなSTOとは異なり、テクニカのエクステリア・デザインはより洗練されていて都会の華やかなムードにもしっくりと馴染むように工夫されている。

 もうひとつ、STOと決定的に異なるのがその足回りで、快適性を犠牲にしてまでサーキットでの走りの性能を追求したSTOとは異なり、よりマイルドでロングドライブも苦にならない乗り心地のよさを備えているとランボルギーニは説明している。

クルマをコントロールできる喜び

ウラカンは四輪駆動のAWDと後輪駆動のRWDの両方をラインナップするが、テクニカはRWDのハイパフォーマンスモデルである。

 試乗の最初の舞台はヴァレンシアのリカルド・トルモ・サーキット。同じヴァレンシアでも、一時期F1GPが開催された海辺の市街地コースではなく、こちらは内陸部に作られたパーマネントコース。比較的フラットな地形のためにブラインドコーナーが少なく、クルマの性能を思いっきり引き出すには好都合なサーキットというのが私なりの見解で、今回もランボルギーニの腕利きインストラクターに先導されながら、1周目からかなりのペースで走行できた。

 ここで明らかになったウラカン テクニカ最大の特色は、タイヤが滑り出すまでの過程を、かなり早めに、そしてわかりやすく伝えてくれることにあった。

「タイヤが滑り出す」ことなんて、一般のドライバーが公道を走っているだけなら滅多に出くわさないはず。でも、サーキット走行を楽しむ方々の多くは、「タイヤが滑るか、滑らないか」というギリギリの線でクルマをコントロールすることに喜びを感じる。そしてそれが、サーキットを速く走るうえでもっとも重要なことでもあるのだ。

 こう説明しても、ウラカンのようなスーパースポーツカーでタイヤを滑らすことなど「絶対に無理!」と信じ切っている方々も少なくないだろう。実をいえば、私も少し前まではそう信じていた。でも、しかるべきステップを踏んで練習を積むと、意外と簡単にこのレベルまで到達できる。少なくとも「生まれつき特殊な才能を持った人々」にしかできない特殊技能でないことだけは、はっきりと断言できる。

 おまけに、エヴォの名がついてからのウラカンは、クルマ自身が積極的に「タイヤを滑らせる」電子デバイスが装着されているうえ、「タイヤが滑りすぎてスピンするのを未然に防いでくれる」電子デバイスまで装備されている。つまり、「タイヤを滑らせながら走る」際の敷居がとても低いのが、最新のウラカンなのだ。

 そうした性能は、ウラカン テクニカにもしっかりと引き継がれていた。いや、後輪駆動でありながら、「タイヤを滑らせる走り」がここまで安定していて、しかもコントロールしやすいスポーツカーは、これまで経験したことがないほど。4輪駆動に比べて本質的に安定性を欠きやすい後輪駆動で、ここまでのコントロール性を実現したランボルギーニの技術陣に拍手を贈りたい。

絶滅する前に乗るべき一台

ボディサイズは全長4567mm×全幅1933mm×全高1165mm。車両(乾燥)重量は1379kgだ。

 そしてウラカン テクニカのもうひとつの魅力が、一般道での乗り心地にある。サーキットにおける走りの性能についていえば、テクニカはSTOにわずかに及ばないものの、快適性に関してはテクニカの圧勝。速度域にかかわらず、路面からのショックを手際よく吸収してくれるので、実に快適。

 大きな段差を強行突破したときの「ドン!」という衝撃だけはさすがに手に負えないようだったが、それを除けば「ウラカン史上、最高の乗り心地」と評していいほど。普段遣いするにもまったく躊躇する必要がないくらい快適だったのだ。

 というわけで、ウラカン テクニカは「サーキット走行の楽しさ」と「一般道での乗り心地のよさ」を極めて高いレベルで両立したスーパースポーツカーだといえる。しかも、このクラスで”超高回転型自然吸気エンジン”の官能性を味わえるモデルは、いまやほとんど残っていない。ハイブリッドやターボチャージャーを持たない「最後のピュア・エンジン搭載ミッドシップスポーツ」の1台として、歴史に名を残す価値のあるモデルといえる。

 ちなみに、ウラカン・シリーズの最後を飾るのは、なんとオフロード走行も可能な”ウラカン ステラート”となる見込み。これは販売台数に上限が設けられた限定モデルで、今秋11月30日にもマイアミで発表されるようだ。

大谷達也氏とウラカン テクニカ。スペイン・ヴァレンシアのサーキットにて。

記事の画像ギャラリーを見る

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(1月5日まで)
応募はこちら!(1月5日まで)