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最終更新日:2021.12.15 公開日:2021.12.15

「ジャングルバス」|第41回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークのサービス課中山さんに、「ジャングルバス」について解説してもらいました。

文・上條 謙二

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エサあげのはさみは、ウナギ掴みの汎用品!?

ジャングルバスで観察できる動物種は、クマ、ライオン、フタコブラクダ、ゾウ、キリンなど約20種。

 「ジャングルバス」ってご存じですか? 動物たちが展示されるエリアに乗り入れて、ガイドによる解説を聞きながら、金網越しの車内から観察をする、乗り合いバスによる参加型ツアーです。動物と最も近づける距離は約20㎝、隔てるものは金網と鉄格子だけなので動物の息遣いや鳴き声、体臭までが直に感じられます

 そんなジャングルバスの特徴を、富士サファリを例にまとめてみました。

●ジャングルバスってどんな乗り物?

【見られる動物の種類】
クマ、ライオン、フタコブラクダ、ゾウ、キリンなど約20種。
【バスでの見どころ】
両サイドは窓ガラスがなく、金網張りになっているので、動物の鳴き声や動物の臭いを至近距離で感じることができる。
またクマ、ライオン、フタコブラクダには直接エサあげをすることができる(※クマとライオンには、エサあげの際、専用トングを使用)。
【バスのつくりの特徴】
バスは4tトラックを改造したもの。
客席の側面は、鉄格子と2重の金網の3重構造になっている。
バスの座席は、背中合わせの長いベンチシート(縦方向)となっており、車内からは展示ゾーンを、左右どちらに座っても楽しめるようになっている。

 「ジャングルバスは、クマ・ライオン・トラ・チーター・ゾウ・草食動物の各展示ゾーンを走ります。所要時間は50分ほどになります」(※中山さん以下同)。

 今回お話を伺った中山さんは、このジャングルバスのドライバーで、車内の解説アナウンスも一人二役で担当しています。

 ジャングルバスの魅力は何といっても、動物との距離が近いことで、「それを一番感じられるのがエサあげのとき」だそうです。ジャングルバスでのエサあげは、クマ、ライオン、フタコブラクダの動物種で行われています。

 エサあげの際の注目ポイントを伺いました。まずはクマから。「クマはエサあげの際に直立してバスの金網に前足をかけてきます。そのときのクマの前足に注目です。クマの足の肉球の表面積は広く、全面を地面につけることができます。そのため安定して立つことができます(クマは直立するのが得意)。またクマの爪はとても鋭く、爪の長さは比較的短めで湾曲しています。この爪は巣ごもりのための穴を掘ったり、木の幹につかまるのには適している」そうです。

 ところでこのクマですが、いつの間にかジャングルバスの構造を覚えてしまい、ラクダのエサあげの際に使用する金属製の取り出し口を外から指でひっかけて、エサを探すようになったそうです。

 「クマはもともと手先が器用な動物です。どこかでラクダのエサ箱にエサが残っていて味を占めたのでしょうか。お客様にはラクダのエサ箱に足を掛けないようにご案内しています」とのこと。こんなクマの賢さと器用さも観察のポイントになりそうですね。

 次はライオン。「突然オスのライオンが吠えだしたり、エサの肉を他のライオンと奪い合って争いになることがあります。ライオンのエサあげでの注目ポイントはこの迫力を感じていただくことです。またライオンは水浴びを好まないため、獣臭がします。臭いも注目してほしいポイントの一つなんです。また荒っぽい印象が強いオスのライオンがメスにエサを譲ってあげるシーンも見られることがあります。百獣の王の紳士的な部分にも注目してほしい」そうです。

 3番目はフタコブラクダです。「エサの豪快な食べっぷりが見どころの一つです。またラクダが近くに来たときは長いまつ毛に注目してください。ラクダは砂漠地帯に住む動物なので、長いまつ毛があるお陰で風が吹いても目に砂が入らないようになっています。大きな2つのこぶにも注目してみてください。ジャングルバスに向かって急いでやってくるときは、ブルブルと大きなこぶが揺れて見た目がちょっとユーモラス」だそうです。

 ちなみに、クマとライオンのエサあげの際は、鉄製のトング(長さは約30㎝)を使いますが、これ実はウナギを掴むときに使うための「鉄ばさみ」なのだそうです。「ニュルニュルとしてつかみにくいウナギもしっかりとはさめるハサミということで、エサの肉もしっかり掴めて、安全・確実に動物にエサをあげることができるので採用になった」そうです。

冬はトラの雪遊びが見られるかも

クマは、エサ場に入るときジャングルバスを追いかけてくることがある。クマは時速40km程度で走ることができるので、バスにすぐ追いついてしまう。クマの走力が優れていることを確認できるのも見どころの一つ。

 また季節ごとに動物たちの行動にも変化が現れるので、そんなところに注意して観察をするのも楽しいかもしれません。

 「秋の時期だと山岳草食ゾーンにいる、シカ科の動物です。繁殖シーズンの秋は、シカのオスがメスの群れに近づきます。オスはライバルに対して立派な角を見せつけたり、ふだんは聞くことができない、大きな鳴き声を上げて強さをアピールすることがあります。オス同士が角をぶつけ合い、激しい力比べを見ることができる」そうです。

 冬はトラの行動にも注目です。園内で飼育されているトラは、ロシアの寒い地方に住んでいるアムールトラという種類です。寒い時期は比較的コンディションがよくなって元気になり、より動きが活発になります。「とくに雪が積もった日は、運が良ければ、雪遊びをするアムールトラの姿が見られるかも」とのこと。

 動物は、1日のうちでも午前中と夕方で行動に変化があるそうです。

 「午前中はクマ、ライオン、ラクダはみんなエサの食いつきがいいです。ライオンは、午前中はメスが活動的で、午後にはオスの方の行動が活発になります。夕方になると、夜行性のトラの動きが活発になりますし、ライオンの咆哮を聞くことができることがある」そうです。ジャングルバスに乗る際は、どの動物のどんな様子が見たいかによって時間帯を選ぶことも重要そうですね。

バスが来ると、シャキッとする!?

富士サファリパークのジャングルバス架装の種類は、ライオン、ゾウ、トラ、カバ、サイの5種類、バスは計11台。このジャングルバス以外にも、天井部分まで金網張りになっている「スーパージャングルバス」も2台ある。共に入園料以外に別途料金が必要。

 ジャングルバスは、担当ドライバーがバスを運転しながら解説のアナウンスを行います。「展示ゾーンでは一般車も混じって走るので、他の車の動きに注意しながら運転し、動物の様子も観察しつつ解説のアナウンスを行います。動物の動きや状況に合わせて、適切な解説ができるように日々動物の知識の習得に取り組んでいる」そうです。

 「ジャングルバスあるある」についても伺いました。

 「『直前まで寝ていたクマやライオンたちが、ジャングルバスが来たことに気が付くとシャキッと起きてお客様のもとへエサをもらいに行くこと』です。3分ほどでお客様全員分のエサをペロリと食べちゃいます。その3分間で、より多くのお客様からエサをもらおうといろんなところに移動して頑張るクマやライオンもいます」とのこと。

 最後は「ジャングルバスあるある(お客様編)」です。

 「お子様にですが、『どうやったらジャングルバスの運転手になれるのですか?と質問されること』です。わざわざ図鑑をジャングルバスまで持参して乗車されることもあったりで、動物の知識やジャングルバスに興味を持ってくれるお子様がたくさんいることをとても嬉しく思います」とのこと。

「ジャングルバスの運転をしながら、解説のアナウンスも担当しています。お客様から『解説を聞いてとても勉強になった』と言っていただけるのが仕事の励みになります」と中山さん。

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