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最終更新日:2022.03.30 公開日:2022.03.30

動物の「眠る」|第48回アニマル”しっかり”みるみる|くるくら

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課三島さんと動物ふれあい課岸本さんに、「動物の『眠る』」について解説してもらいました。

文・上條 謙二

草食動物はエサの確保のため睡眠時間が短くなる!?

キリンは、一日のうち1時間程度しか眠らないという”ショートスリーパー”の動物。

 動物にとっての睡眠は、体や脳を休めるために欠かせない生理現象です。睡眠時間の長さや睡眠をとる時間帯は、動物種ごとにまちまちです。今回は、哺乳動物に見られる睡眠の特徴を、草食・肉食・雑食動物別に代表的な動物種を例にとりながらまとめてみました。

●草食動物2種の睡眠の特徴

 草食動物は、一日の睡眠時間が短く、これは食性が大きく関係しています。

 草食動物がとる草や葉は動物の肉などに比べて食物としての熱量が低く、そのために大量に食べることが必要になり、草食動物は多くの時間を草や葉を探すなど、一日の大半を食べることに費やさなければなりません。また野生下では睡眠中に捕食者である肉食動物に襲われる危険も多いので、これも草食動物の眠る時間が短くなる原因の一つです。

 「草食動物の眠り方で共通するのは、立ったまま、まどろむような浅い眠りになることです。睡眠の取り方も、1~5分間くらいの短時間の睡眠を何回も繰り返して、トータルで一日数時間とるような動物種が多いです」(岸本さん)。

 大型の草食動物であるアジアゾウの睡眠の特徴は、「立ったまま眠ること」です。大型になればなるほど横たわって寝ることは、起き上がるまでに時間がかかり、捕食者に襲われる際のリスクが大きくなって危険です。天敵のいない飼育下では横になることもありますが、野生下ではほとんどが立位のまま睡眠します。

 「これはアフリカゾウの例ですが、体を起こすまでに30秒ほど時間を要します。子供は横になって寝ることがありますが、そんなとき大人のゾウが起き上がるように促すことがあります」(岸本さん)。草食動物は寝ているときも、絶えず神経を張り巡らせているのです。

 キリンの睡眠の特徴は、睡眠時間の短さと独特な寝相です。

 睡眠時間は一日のトータルで1時間あるかないかという程度。寝方に特徴があり、腹を床に着けて座る姿勢で、長い首を折り曲げ、体を小さくたたんで寝ます。園内のような飼育下では、外敵がいないと分かっているため、キリンは座って寝ることが多くなります。

 「キリンは音にとても敏感な動物なので、人が近づくだけでもすぐ起きてしまいます。飼育を担当していて、熟睡するキリンの姿を見たことはほとんどない」(※三島さん以下同)そうです。

目をつぶり熟睡するライオン

園内のライオンは、草の上で眠るのが好き。夏は木陰の涼しい場所で、冬は日が当たり、風を防げるようなところに集まって眠っていることが多いという。

●肉食動物(ライオン)の睡眠の特徴

 肉食動物は、一般的に睡眠時間が長めですが、これも食性と関係しています。

 栄養価の高い肉を食べる肉食動物は、一度捕食してたっぷり食べてしまえば、食べ物を探し回らなくてもよくなります。特にライオンやトラなどの大型肉食獣は、野生下で外敵に襲われる危険も少ないため、睡眠にかける時間が長くなります。 ライオンの睡眠の特徴は、その睡眠時間の長さ(1日のトータルで15時間ほど)としっかり寝入ってしまうことです。

 「園内のライオンは、目をつぶってぐっすり寝ます。朝、飼育員がいることに気づかないこともあるくらいで、慌ててハッと目を覚ます個体もいて、そんな様子が何とも可愛らしい」そうです。

 ネコ科の大型肉食獣にもかかわらず群れを作って暮らすライオンは、群れを作るという習性が寝方にも関係するようで、「獣舎の広さが十分にあるのに、部屋の片隅にみんなでかたまって寝ていることが多い」そうです。

 冬の寒い季節はもちろん、夏の暖かい季節であっても複数の個体でかたまって寝ようとする傾向が強く、「隙間があるとその間を埋めるように割り込んでくることがある」そうです。

 ちなみに同じネコ科の大型肉食獣であるトラは、「夜の見回りに行っても、目を開けて起きている個体が多いです。元々夜行性のこともあってか、ちょっとした気配を感じるとすぐに目を覚ましてしまいます。トラはライオンに比べると繊細な部分がある動物」です。

腕枕をして寝るのが好きなヒグマ 

ヒグマは、園内では草や落ち葉の上に寝ていることが多いという。

●雑食動物2種の睡眠の特徴

 最後は雑食動物であるクマ科の動物種2種の睡眠の特徴です。

  ヒグマは、「歳をとっていくにつれ睡眠時間が長くなる」傾向があります。この傾向はアメリカグマも同じです。 特にヒグマは、「歳を取ってくると行動や寝姿が人間にそっくりになっていきます。仰向けで寝転がったり、他の個体の体に頭をのせ枕替わりにしたりなど、その様子は人間が中に入っているのではないかと思うほど」だそうです。

 またヒグマの若い個体は腕枕をして寝ることが多く、クマ科の動物は全般的に頭に枕をすることを好みます。

 木登りが得意なアメリカグマは、木の上でも平気で眠ることがあります。特に子供にその傾向が強く、「木や枝にすっかり上半身を預けて寝入ってしまう」ことも多く、その様子はまるで洗濯物を木の上に干している感じだそうです。

 最後に草食・肉食・雑食の動物の「睡眠あるある」について伺いました。

 まずは草食動物から。

 「アジアゾウもキリンもですが、眠るときにしっかりと目を閉じないことです。ウトウトしている状態で、目はいつも薄く開いて感じ」だそうです。

 肉食動物では、ライオンの赤ちゃんのあるある。

 「起きて活発に遊んでいるかと思うと、急にコロッと寝てしまうこと」です。なんだかそんな様子は人間の赤ちゃんと似ていますね。

 雑食動物では、クマ科の動物種全部に共通するあるある。

 それは「寝起きにおならをよくすること」です。「人間と同じで、『ブー』という音のするおならで、臭いはあまりしません。体を起こすのと同時におならをすることが多く、どの個体も結構な頻度で寝起きにおならをする」そうです。クマ科の動物のエサにはイモ類が混じっているので、それが原因なのでしょうか。

「アジアゾウもキリンも、基本的に寝ているときにはしっかりと目を閉じることは少ないのですが、子供の個体は目を閉じて眠ることが多いです」と岸本さん。

「歳を取ったヒグマの行動や寝姿は本当に人間にそっくり。人間が中に入っているんじゃないかと思うほどなんです」と三島さん。

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