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最終更新日:2022.02.15 公開日:2022.02.15

「ベネットワラビー」|第45回アニマル”しっかり”みるみる|くるくら

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物ふれあい課岸本さんに、「ベネットワラビー」を解説してもらいました。

文・上條 謙二

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別名は「アカクビワラビー」

「ワラビー」とは、「小さなカンガルー」を意味する「ウォラビ」、「ウアラビ」というオーストラリア先住民の言葉に由来しているという。

 有袋目カンガルー科の動物である「ワラビー」。ワラビーとは小型のカンガルーの総称で、オーストラリアの森林地帯や岩の多い地域、草地などの環境に順応してさまざまな種類のワラビーが生息しています。カンガルーの仲間は、体の大きなものから、カンガルー→ワラルー→ワラビーと大別して呼ばれています。体の大きなカンガルーは、跳躍力があり、スピードを出して走ることができるのに対し、ワラビーは俊敏な動きが特徴です。

「当園で飼育しているのは、『ベネットワラビー』という種類のワラビーです」(※岸本さん以下同)。ベネットワラビーは、オーストラリア南東部やタスマニアに生息しており、体長は65~90cm、体重はオスで15~18㎏、メスで11~13kg ほどあります。

 ベネットワラビーの身体的特徴は、首元から肩にかけて体毛が赤くなっているところです(背中全体は灰褐色の毛で覆われ、腹部は白っぽい)。そんな特徴から別名「アカクビワラビー」とも呼ばれています。

 カンガルー類の動物種の中でも毛の密度が一番高いことが特徴の一つで、寒冷な気候でも耐えられるようになっています。ただ体毛の密度が高いことで、ベネットワラビーは汗腺が全身に発達していません。汗腺による体温調節ができないので、夏など気温が高くなり体温が上昇すると、手首にある太い血管を口で舐めて濡らし、唾液の気化熱によって血流を利用して体を冷やします。

「園内では、水桶に手を突っ込んで、手首を水で冷やす個体もいる」そうです。体温調節には大きな耳も一役買っており、耳介を走る血管からも熱を発散し、体温上昇を抑える働きがあります。

 手には5本の指があり、エサを手で持って食べるなど器用にものを掴むことができます。もともとベネットワラビーは、森林地帯で生活しているので、木の葉を主食としており、葉を上手に手で引っ張ってとり、ちぎって食べるなど手指を器用に使います。

「丸まって綿あめのような形状の草を与えても、そのままの形で手に取って口まで運んで上手に食べる個体もいるほど」です。

 後ろ足のつくりは、カンガルーと同様にしっかりしています。その跳躍力は優れており、高さは2m近く、幅は3mほどあります。足の親指は退化し4本の指からなっており、人差し指と中指は癒合して薬指が一番発達しています。

尾を地面にたたきつけて危険を知らせる

ベネットワラビーは、首元の赤い毛が特徴的なところから別名「アカクビワラビー」とも呼ばれる。

 野生下のベネットワラビーは、オスは基本的に単独で暮らし、メスは子供も含め4~5頭ほどの集団を作り暮らします。

 オス同士は、メスの取り合いや縄張り争いをめぐって掴み合ったり、尾で体を支えながら足で思いっ切り蹴りつけるようにして戦います。メスの発情は1年を通じてあるので、オスの戦いに季節はありません。

 また夜明けや夕方の涼しい時間帯に活発に活動する傾向があります。

 ベネットワラビーは、有袋類の動物でカンガルー同様に特有の育児嚢で子供を育てます。出産後6か月ほどまで育児嚢で成長し、その後子供は外と出入りをしながら成長していきます。

 ベネットワラビーのコミュニケーション方法の一つは、尾を使って行います。小型のカンガルー類とは言うもののベネットワラビーの尾は全体重を支えられるほど太く大きく、筋肉は発達しています。危険が近づいているときには、「尾を地面に強くたたきつけて大きな音を鳴らして仲間に伝える」こともあります。

 また威嚇するときに鳴き声を出すこともあります。「そんなときは『ケホッ』という鳴き方をします。胸から強く息を吐きだすような声の出し方をする」そうです。

必殺技はドロップキック!?

ベネットワラビーのオスは、メスにアピールする意識や縄張り意識が強い。

 ベネットワラビーですが、どんな性格の動物なのでしょうか?

「特にオスの場合、メスにアピールする意識や縄張り意識が強い動物」です。

 性成熟するオスの場合には、発情しているメスの近くに他のオスが近寄るとケンカが始まります。オス同士、同じ展示場で展示できなくなるほどの激しさで、ときにはケガをするくらいにエスカレートすることもあります。

 その一方、臆病なところがある動物です。飼育員は注意して接しており、驚かせて走らせたり、飛び跳ねさせてケガをさせないように、「獣舎に入るときも、ゆっくり扉をノックして、声をかけてから入るように心がけている」そうです。

 最後に「ベネットワラビーあるある」について伺いました。

 それは「オス同士の戦いにドロップキックが使われること」です。戦い方はカンガルーとほぼ同じなのですが、ベネットワラビーは体が小さく身軽で、身のこなしが軽快です。園内には、体全体を宙に浮かせたドロップキックで攻撃する個体もおり、「キックを受けた方の個体が飛ばされるほどの強烈な蹴り」だそうです。

「ベネットワラビーが搬入したての頃、いきなり2mくらいジャンプして、身体能力の高さに驚かされました」と飼育担当の岸本さん。

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