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クルマ最終更新日:2023.06.19 公開日:2020.10.01

ソニーのEVへの期待感。試乗で垣間見えた自動車産業参入の本気度

ソニーが開発した電気自動車「VISION-S」は、単なるコンセプトモデルではなかった!? 試乗して分かったソニーの真の狙いとは。モータージャーナリストの会田肇氏が、開発責任者のインタビューを交えて、ソニーとクルマの未来について考察する。

文・会田 肇

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日本初公開となったソニーのEVコンセプト「VISION-S」

日本初公開となったソニーのEVコンセプト「VISION-S」

ソニーVISION-Sへの期待

低く伸びやかで完成されたプロポーション、スタイリングは一目見て「カッコイイ!」と実感した。それは今年1月のCES2020でソニーが披露したEVコンセプト「VISION-S」のことである。発表から約半年が経った7月下旬、その姿がついに日本でお披露目されたのだ。しかも少しだけだが試乗もできるという。今回はその時に感じた印象を開発責任者のインタビューを交えてお伝えしたい。

そもそもVISION-Sとは何か。ソニーが得意とするカーAVやセンシング技術を、より発展させることを目的に開発されたEVコンセプトだ。その完成されたスタイリングから発表当時、メディア各社は「ソニーが自動車産業に参入か?」と色めき立ったが、ソニーは「その考えはない」と回答。ただ、年内にも走行試験を行うとアナウンスされたことで、その日を待ちわびる人も多かったはず。そんな中でこの日を迎えたというわけだ。

「VISION-S」のリアビュー。ボディデザインはソニーのデザインチームが担当した

「VISION-S」のリアビュー。ボディデザインはソニーのデザインチームが担当した

 VISION-Sを目の前にして改めて感じたのは、その美しさ極まるスタイリングだ。まるでソニーが以前からクルマのデザインを手がけてきたかのような完成度だ。ボディサイズは全長4895×全幅1900×全高1450mm、ホイールベースは3000mmとメルセデスベンツ「Sクラス」並み。乗車定員は2+2の4名。車格としてはかなりハイクラスを意識した造りとも言える。

まず体験したのは乗り込むシーンから。ここで説明されたのがVISION-Sのデザインテーマだ。そのポイントは、ボディから車内に至るまですべてが「OVAL(楕円)」で統一されているということ。たとえば、スマートフォンでドアロックを解除すると、フロントの中央部から後方へと光が走っていき、それと連動してドアノブが開くのだ。このボディ全体を光のOVALとして取り囲む。これはソニーのデザイナーのこだわりだったという。

多彩なエンタテイメント機能が展開されるVISION-Sの車内(写真提供:ソニー)

多彩なエンタテイメント機能が展開されるVISION-Sの車内(写真提供:ソニー)

ディスプレイは直接触れて操作可能で、フリック操作で左右入れ替えも一瞬でできる

ディスプレイは直接触れて操作可能で、フリック操作で左右入れ替えも一瞬でできる

 車内に入ってもOVALデザインのコンセプトは続く。左右に広がるダッシュボードはパノラミックスクリーンと呼ばれる高精細ディスプレイで乗員を取り囲む。ディスプレイの各表示は必要に応じて左右へ移動してカスタマイズでき、目的地までのルート設定を助手席側でしたい時でも指先で左右へ画面をフリックするだけだ。オーディオについても車載用として初めて実装した「360 Reality Audio」が音場として乗員を包み込み、これもOVALとしてのコンセプトを表現しているという。

走りのパフォーマンスもかなり期待できそうだ。前後それぞれに200kWのモーターを1基ずつ搭載。合計で400kWとなり、ガソリンエンジンでいえば540ps前後に相当する。それを支えるかのように足元には赤塗装のブレンボ製ディスクブレーキをセットアップ。タイヤもフロント245/40R21、リヤ275/35R21とスポーツカーのようなルックスだ。フロアに搭載したバッテリーとも相まって実現した低重心設計は、セダンの領域を超える高いパフォーマンスを見せてくれることだろう。

バッテリーをフロアに搭載することでスポーツカー並みの低重心を実現した(写真提供:ソニー)

バッテリーをフロアに搭載することでスポーツカー並みの低重心を実現した(写真提供:ソニー)

 また、ソニーが競争領域としているセンサーも数多く搭載している。車内外の人や物体を検知・認識することで高度な運転支援を実現することを目的に、車載向けCMOSイメージセンサーを含む合計33個のセンサーを搭載。特にセンサーの一つであるLiDARは自動運転の実現に向けて今後の普及が期待されているもので、ソニーとしてもこのVISION-Sをきっかけに本格参入する計画だ。

敷地内とはいえ、走りはEVらしい力強くスムーズな発進を見せた

敷地内とはいえ、走りはEVらしい力強くスムーズな発進を見せた

試乗して期待感がさらに膨らんだ

いよいよ試乗だ。この日はナンバーが取得できていないため、走行はソニー本社の敷地内に限られた。路面はプロトタイプには少々きつい石畳。その上をVISION-SはEVらしくスムーズにスタートした。走行中は試作車らしく? ギシギシとした音が聞こえてきたものの、カーブでステアリングを切ってもしっかりとした足周りを感じ取れる。内装の造り込みは半端じゃなく上質で、もはや車内に座っているだけで居心地の良さを感じさせてくれるほどだ。

天井一杯に広がるパノラミックなサンルーフからは常に光が降り注いでいた

キャプション

 天井いっぱいに広がるガラスルーフは車内を明るく浮かび上がらせ、走る気持ちを駆り立てる。試乗は僅かな時間だったが、同乗したまま外へ走り出してしまいたい! そんな欲求に駆られそうになるほど心地良い空間をVISION-Sは伝えてきたのだ。ソニーはこれまで世の中にないものを数多く生み出して我々を魅了し続けて来た。それだけにクルマの世界でも何か新しいことをやってくれるのではないか。VISION-Sに試乗してそんな期待感がさらに膨らんだのは確かだ。

そして、ソニーはVISION-Sを実際に公道で走らせるために、日米欧の各地域の保安基準に適合した試作車両を用意することを決定。製造委託先であるマグナに公道試乗用の試作車両を追加発注したという。この事実はVISION-Sの開発が単なる思いつきではなく、ソニーとして真剣にクルマに関わり続けていくことの宣言とも受け取れる。今回の試乗を経て、そんな力強いソニーの思いを感じることができた。21世紀に相応しいクルマがソニーから生まれることをぜひ期待したい。

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