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最終更新日:2023.06.16 公開日:2020.05.25

東京で新規建設中の国道、2020年度はここまで進む!

国道の新設や改良、修繕などを担当する国土交通省の国道事務所は、毎年3月末から4月末にかけて、新年度の事業内容を発表している。ここでは、都内を管轄とする国道事務所が発表した2020年度事業概要から、現在新設中の国道に関するものをまとめてみた。

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国道20号・八王子南バイパスの開通済み区間の終点である八王子市館町(たてまち)の医療センター入口交差点の様子。建設中の橋脚が並ぶ。

 国道事務所は国土交通省の国道(一部高速道路の建設も含む)の建設や改良、修繕などを担当する部署だ。青森県から鹿児島県までの45都府県(※1)を8つの地区に分け、東北から九州までの地方整備局に複数の国道事務所もしくは河川も併せて管理する河川国道事務所が配置されている。

東京などの関東の1都6県に山梨と長野を加えたエリアは関東地方整備局の管轄で、11の国道事務所と3の河川国道事務所が置かれている。それらに加え、C3外環道建設専門の東京外かく環状国道事務所もある。

※1 北海道と沖縄の国道の建設や管理などについては、北海道は国土交通省北海道開発局が、沖縄は内閣府沖縄総合事務局が担当。

 1都府県につき最低ひとつの国道事務所が置かれるが、東京の場合はその道路網の規模から4事務所が置かれている。23区を主に担当しているのが東京国道事務所(画像1)で、多摩地区を担当しているのが相武国道事務所(画像2)。そして2020年度は、23区の湾岸地区1路線および城南地区1路線の計2路線を担当しているのが川崎国道事務所(画像3)で、23区城東地区の2路線を担当しているのが首都国道事務所(画像4)だ。

画像1。東京国道事務所が担当するのは主に23区。プレスリリース「令和2年度東京国道事務所の事業概要」より。

画像2。相武国道事務所は東京の多摩地区と神奈川県の北部や北西部などを担当。プレスリリース「令和2年度 相武国道事務所の事業概要」より。

画像3。川崎国道事務所の担当範囲。東京の湾岸地区や城南地区を担当するほか、神奈川県の東部や中部も担当。プレスリリース「令和2年度 川崎国道事務所の事業概要」より。

画像4。首都国道事務所は主に千葉県西部を担当するが、都内の城東地区も担当。プレスリリース「首都国道事務所の道路事業概要について(東京都版)」より。

 ここではそれら4つの国道事務所が4月に発表した事業概要の中から、現在新たに建設が進められている国道を紹介する。国道20号・甲州街道の新バイパスと、国道357号・東京湾岸道路の多摩川トンネルの2路線4区間だ。

【新設道路】
国道20号・甲州街道:
●日野バイパス(延伸)
●日野バイパス(延伸)II期
●八王子南バイパス
国道357号・東京湾岸道路:多摩川トンネル

→ 次ページ:
建設中の道路を詳細に紹介

国道20号・甲州街道の日野バイパスからさらに分岐する新バイパス

東京の都心から多摩地区を通って山梨へと向かう国道20号・甲州街道。かつて、八王子市・日野市を通る東西方向の幹線道路は、このほかには都道173号・北野街道ぐらいしかなく、交通容量が十分でないため、慢性的な渋滞が課題となっていた。そこで建設されたのが国道20号・日野バイパスである。日野バイパスは、国立市谷保(やほ)の国立インター入口交差点で甲州街道から分岐し、同街道の南側を通り、八王子市高倉町(たかくらまち)の高倉町西交差点で合流するというルートだ(この間、甲州街道は都道256号となる)。

しかし、この日野バイパスの完成後も交通需要は増しており、さらなる幹線道路が求められるようになった。また、八王子市内は東西方向の交通容量が不足しているため、幹線道路が求められていたのである。そこで建設されることになったのが、画像5にある日野バイパス(延伸)と八王子南バイパスである。日野バイパス(延伸)は2期に分けて建設が進められている。

画像5。日野バイパス(延伸)と八王子南バイパスの広域ルート図。両バイパスは八王子市北野町で接続している。相武国道事務所・公式サイトより。

【国道20号】日野バイパス(延伸)
バイパスから分岐するバイパス

担当:相武国道事務所
日野バイパス(延伸)
 事業化時期:2005年度
 総事業費:約310億円
 2020年度事業費用:19億円
 起点:日野市川辺堀之内(かわべほりのうち)
 終点:日野市西平山3丁目(にしひらやま)
 延長:3.8km
 事業進捗率:未発表(2017年3月末時点で66%)
 車線数:4車線
計画交通量:3万1200~4万1600台/日
完成予定時期:未発表
II期
事業化時期:
2017年度
 総事業費:約300億円
 2020年度事業費用:2億円
起点:
日野市西平山3丁目
 終点:八王子市北野町(きたのまち)
 延長:1.5km
 事業進捗率:未発表
 車線数:4車線
 計画交通量:2万4700~4万2800台/日
 完成予定時期:未発表

画像6。国道20号・日野バイパス(延伸)のルート拡大図。日野バイパス(延伸)は東側で、そのII期は西側。相武国道事務所・公式サイトより。

 日野バイパスは、日野バイパス現道の日野市川辺堀之内(かわべほりのうち)の坂下交差点近辺から南側へと分岐し、JR中央線と京王線の間を走る形で南西方向に向かい、日野市西平山3丁目(にしひらやま)で同バイパスII期にバトンタッチすることになる。延長は3.8kmだ(画像6)。そして引き継いだII期の区間は、八王子市北野町(きたのまち)までの延長1.5km。北野町では国道16号・八王子バイパスに加え、建設中の八王子南バイパスに接続することになる。

日野バイパス(延伸)が全線開通すれば、日野バイパス現道を下って来た交通が神奈川に向かいたい場合、八王子バイパスへのショートカットが可能となる。都内主要渋滞箇所である甲州街道と八王子バイパスとの大和田町四丁目交差点(おおわだまちよんちょうめ)を回避することができ、移動時間の短縮につながる。さらに八王子南バイパスが完成すれば、C4圏央道・高尾山ICまでの移動時間も短縮する見込みだ。

総事業費用は日野バイパス(延伸)が約310億円で、II期が約300億円。2020年度の事業費用は日野バイパス(延伸)が19億円で、II期が2億円だ。2020年度の事業内容は日野バイパス(延伸)が調査設計、用地買収、改良工事、環境整備の推進。II期が調査設計、用地買収の推進となっている。日野バイパス(延伸)の最新の進捗率は未公表だが、2017年3月末時点では66%だった。II期は未公表。日野バイパス(延伸)、II期ともに完成予定時期は発表されていない。

【国道20号】八王子南バイパス
八王子市内の東西方向の交通容量を増強

担当:相武国道事務所
事業化時期:1997年度
総事業費:約1562億円
2020年度事業費用:70億5000万円
起点:八王子市北野町(きたのまち)
終点:八王子市南浅川町(みなみあさかわまち)
延長:9.6km(2.6kmが4車線で開通、0.3kmは暫定2車線で開通)
事業進捗率:61%(2020年3月末時点)
車線数:4車線
計画交通量:2万4500~4万7600台/日
完成予定時期:未発表

画像7。相武国道事務所が工事を進める八王子南バイパスのルート図。東は八王子バイパスとの交差点から、西はC4圏央道・高尾山ICまで。相武国道事務所・公式サイトより。

 八王子南バイパスは、八王子市北野町から同市南浅川町(みなみあさかわまち)までを結び、延長は9.6kmだ。東では国道16号・八王子バイパスおよび日野バイパス(延伸)II期と接続し、西ではC4圏央道・高尾山ICおよび国道20号・甲州街道と接続する(画像7)。南浅川町から東へ約2.6km進んだ館町(たてまち)の医療センター入口交差点までは、4車線で開通済みだ。またわずか0.3kmほどではあるが、同市大船寺田地区(おおふなてらだ)では暫定2車線が開通している。現在は、暫定2車線区間も含めた残りの7.0kmの事業が進められているところだ。

八王子南バイパスは、八王子市域の混雑緩和と交通安全の確保を目的とするのと同時に、C4圏央道・高尾山ICまでのアクセス路としても建設されている。総事業費用は約1562億円で、日野バイパスの日野バイパス(延伸)と同II期の総事業費用を合計した額の2倍以上となる。2020年度の事業費用は70億5000万円だ。そして、2020年3月末時点での事業進捗率は61%となっている。用地取得率に関しては、1年以上前の2019年3月末時点での値となるが、95%であることが発表されている。2020年度の事業内容は調査設計、用地買収、改良工事、橋梁上下部工事、トンネル工事、環境整備だ。

国道357号・東京湾岸道路の東京と神奈川の両区間を接続する多摩川トンネル

担当:川崎国道事務所
事業化時期:1968年(昭和43)
総事業費:約5083億円(※2)
2020年度事業費用:15億3000万円(※2)
起点:大田区羽田空港
終点:神奈川県川崎市川崎区浮島町
延長:3.4km(東京都区間は2.0km)
事業進捗率:60%(※2)
車線数:2車線(片側1車線)
計画交通量:1万2400~9万6900台/日(※2)
完成予定時期:未発表

※2:東京区間全体の数値

画像8。国道357号・東京湾岸道路の多摩川トンネルの建設位置とその拡大図。2020年2月6日発表のプレスリリース「国道357号 東京湾岸道路『多摩川トンネル』の準備工事に着手します」より。

 国道357号・東京湾岸道路は、E51東関道+首都高B湾岸線に沿って走る国道であり、千葉~東京~神奈川の臨海部をつなぐ主要幹線道路だ。重要港湾施設や羽田空港などをつないでいることから、1都2県の国道の中でも指折りの交通需要となっている。また延長が79.8kmもあることから、国道事務所も西側から横浜、川崎、首都、千葉と4つの国道事務所が分担している。

東京都区間は、江東区の辰巳交差点を境にして西を川崎国道事務所、東を首都国道事務所が担当。そして2019年6月に東京港トンネルの東行き(内陸側)が完成したことで、東京都区間はほぼ全線が開通した。千葉県区間も開通済みで、あとは神奈川県区間が開通することで全線開通となる。その神奈川県区間は、延長35.1kmのうちの23.0kmが4車線もしくは暫定2車線として開通済みだ。未開通区間は3区間あり、そのうちのひとつが東京と神奈川の都県境にある。羽田空港の湾岸環八交差点から川崎市東扇島地区(ひがしおうぎしま)までの延長5.4kmの区間だ(画像8)。同区間の都内部分の延長は2.0kmである。

都県境を流れる多摩川河口部を、国道357号は「多摩川トンネル」でもって通過する計画だ(画像9)。トンネルの起点は湾岸環八交差点で、対岸の川崎浮島JCTが終点となる。川崎浮島JCTのある浮島町は、CA東京湾アクアラインの起点の人工島だ。

東京都区間の工事は、2020年2月からスタートしたばかり。現在は作業ヤードの整備など、多摩川トンネルの立坑工事にあたって必要となる改良工事を行うべく、その準備工事を実施中だ。2020年度は、この羽田地区の改良工事に加え、調査設計も進められる計画である。完成予定時期は発表されていないが、東京区間全体の進捗率は60%。ちなみに用地取得率は100%となっており、あとは工事を進めるだけだ。

なお2020年度の事業費用の15億3000万円は、川崎国道事務所が担当する国道357号の東京都区間すべての事業の合計額だ。多摩川トンネルの調査設計と羽田地区改良工事のほか、東京港トンネル(開通済み)の調査設計と環境整備工事、辰巳・東雲・有明地区の交差点立体化事業と合算したものである。

画像9。国道357号の多摩川トンネルの断面図。トンネル内の車線数は片側1車線ずつ。プレスリリース「国道357号 東京湾岸道路『多摩川トンネル』の準備工事に着手します」より。


今回紹介した2路線4区間が開通すれば、多摩地区と湾岸地区における交通の流れが変わることは間違いないだろう。現時点では開通予定時期が示されていないことは既述した通りだが、一日でも早く開通がアナウンスされることを期待したい。

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