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最終更新日:2023.06.19 公開日:2021.01.31

冬の車中泊はどれくらい寒い?防寒対策はどうする?【後編】

スキー場の駐車場で仮眠する時や、大雪で立ち往生してしまった時など、エンジンを切った車内温度はとても低くなる。後編では、そんな時の防寒対策について車中泊のプロに教えてもらった。

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車中泊の先生は、カーネル編集長・大橋保之さん

車中泊専門誌『カーネル』編集長・大橋保之さん。  写真提供:カーネル

 今回、冬の車中泊における防寒対策について教えてくれたのは、車中泊専門誌『カーネル』の編集長・大橋保之さん。『カーネル』は、一般車での車中泊テクニックや快眠ギア、キャンピングカー、バンライフなど、車中泊をメインテーマにしている雑誌である。

大橋さんは、同誌の編集長であるだけではなく、自身でも一年中、車中泊を行っている。いわば車中泊のプロである。そんな大橋さんに防寒対策アイテムや対策方法を聞いてみた。

防寒対策アイテムと使い方

それではさっそく冬の車中泊における防寒対策アイテムについて教えてもらおう。

大橋さん「冬の車中泊で重要なのは”クルマの防寒対策“と”体の保温“です。それを実行するために以下の4つのテクニックを『カーネル』では推奨しています。今回は、それを行うために必要なアイテムを紹介します」。

 ※車両用FFヒーターなどの専用防寒装備のない一般車で、アイドリングストップ(エンジン停止)して寝る場合を想定。
降雪時にはクルマのマフラーが雪に埋もれてしまい、滞留した排気ガスの影響で一酸化炭素中毒になる危険性もあるのでエンジンは切っておきたい。

防寒対策を施した車内の一例。ウィンドーシェードと手製のカーテンが二重になっている。 写真提供:カーネル

1.ウィンドーガラスからの冷気を遮る

1つ目のテクニックは、ウィンドーガラスから伝わる冷気を遮ること。クルマは四方を窓で囲まれているため、そこから冷気が伝わり、車内温度が下がってしまう。それをウィンドーシェードやカーテンなどを使って防ぐのだ。ウィンドーシェードは窓に直接設置するのでカーテンよりも隙間が少なくなり、効果も高い。もちろん、外からの視線を遮ってプライバシーを確保する効果もある。

【必要なアイテム】 
・ウィンドーシェード(窓の目隠し用内張り)
・ウィンドーカーテン(フリース生地などの厚手のもの)

 大橋さん「いずれかを使用しても効果ありますが、併用すれば、なお効果高し! シェードは”断熱効果”をうたっている市販品か、厚さ8mm以上の銀マットなどをDIYしたものがおすすめです」。


2.寝床の防寒、保温をする

2つ目のテクニックは、底冷えを防ぐためにシートを敷き、寝袋などでしっかりと体を保温すること。クルマは家などの建物と違い、断熱材を挟んだ層がないため、ボディや床下の冷気が伝わりやすい。床下側からの冷気も遮断しておきたい。

【必要なアイテム】
・アウトドアの冬用寝袋(コンフォート温度-7℃以下)
・厚手のマット(厚さ10cm以上もしくは保温材入り)
次点:羽毛布団(上下)+ 銀マット

 大橋さん「寝袋を選ぶ基準は、それぞれの製品に設定されているコンフォート温度(多くの人が快適に睡眠できる温度領域)です。余裕をみて-7℃くらいまで対応可能な寝袋を選ぶと安心です。マットは、特に荷室で就寝する場合に重要で、薄いものだと床からの冷気で底冷えします。しっかりとした厚みのあるものか、保温材が内蔵されている製品を選ぶといいです。車内に収納できる場所が有れば、家庭用の羽毛布団(上下)でも暖かいです。その場合は敷き布団の下に、やや厚手の銀マットなどの保温シートを敷きます」。


3.衣類で体を保温する

3つ目は、アウトドア用のダウンや、発熱&保温インナーなどの衣類で体を保温すること。寒さ対策としては、当たり前ともいえるが、クルマで出かける場合は、エアコンに期待して薄着をしがちだ。急な場合に備えて、車載用の防寒着を準備するのもいいだろう。

【必要なアイテム】
・アウトドア用のダウン(もしくは化繊の保温ウエア)上下
・発熱&保温インナーウエア

 大橋さん「ダウンなどの衣類で体の保温を強化することも重要。アウトドア用の保温ウエアは、薄手かつ高性能なものが多く、保温性も高いのでおすすめです。就寝時は、寝袋などを利用すれば暖かく過ごせますが、就寝前後、寒い車内で過ごす時間もあると考えると、保温用の衣類も準備しておいたほうがベターです」。


ポータブル電源を持ち込んで電気毛布を使えば、かなり暖かく過ごせる。 写真提供:カーネル

4.電気の力を活用した保温

4つ目は、ポータブル電源などを活用して電気の力で保温すること。少し裏ワザ的なアイテムだが、あらかじめ車中泊することが決まっている場合には用意しておくと、暖かく過ごすことができる。

【必要なアイテム】
・電気毛布(一般的な家庭用)
・ポータブル電源(電力量200Wh以上)
次点:屋外用の延長コード

 大橋さん「アウトドアにおいて、ポータブル電源は注目のアイテム。大小いろいろな製品が発売されています。一般的には電力量が200Wh以上あると、電気毛布を6~7時間使うことができるといわれています。もしくは、AC電源設備のあるオートキャンプ場やRVパークに泊まるなら、延長コード(屋外用)を使うことで電気毛布を一晩中使用できます」。

靴に装着する「簡易滑り止め」が便利

冬の車中泊では、寒さ以外にも気を付けておいた方がいいポイントがあるという。それは転倒事故だ。

大橋さんによると「冬の車中泊で気を付けたいポイントに、夜中や早朝にトイレへ行くときの転倒事故があります。寝起きで警戒心が薄いというのもあり、油断していると、クルマから足を出した瞬間に滑ることがあるからです」。

そんな万が一の転倒を防ぐため、靴に装着する「簡易滑り止め」も車載しておくといいそうだ。その他、以下に記したものも車載しておくと便利なのだとか。

【冬の車中泊便利グッズ】
・湯たんぽ:さらなる寒さ対策
・速乾性タオル:結露をすぐに拭き取れる
・密閉ボックス:雪などで濡れたものを入れておける
・簡易トイレ:寒さや雪でトイレに行けない時に利用

行動計画を立て、悪天候時には避難することも重要!

©mario beauregard – stock.adobe.com

 このように、ウィンドーシェードや寝袋、防寒着などを合わせて使えば、冬の車中泊でも暖かく過ごせるそうだ。しかし、大橋さんは実体験を元にこうも語る。

「車中泊に慣れている私ですが、行けばなんとかなる…とは限らない! ということを身をもって体験したことがあります」。

その日、大橋さんは車中泊(前泊)+スキーの旅行を計画。天気予報が悪天候を知らせていたにも関わらず、日程の調整が利かずに強行で出発したそう。道中、降雪がどんどん激しくなり、渋滞に巻き込まれたところで、あきらめて引き返すことに。すると、引き返すことを決断したら、気が緩んだのか、急激に睡魔に襲われたのだとか。

そして、「どうせあとは帰るだけだから」と近くの駐車場で仮眠。少し体を横にしていただけで、あっという間に、積雪でクルマが覆われてしまう寸前になっていたそう。その後は、なんとか近くの旅館まで行くことができたそうだが、命からがら雪から逃れたというような体験だったとのこと。

大橋さんは振り返る「今の天気予報は、非常に精度が高いです! 『〇年に一度の大寒波』なんて言葉を聞いたら、そもそも計画の延期や場所変更を考えた方がいいでしょう。旅の途中であっても、身の危険を感じるほどの悪天候に遭遇した場合は、決して無理をせず、早めに建物に避難をしてください」。

スキー場の駐車場で仮眠する時や、大雪で立ち往生してしまった時など、エンジンを切った車内温度はとても低くなる。ウィンドーシェードや寝袋、防寒着などを車載して、普段から防寒の準備をしておきたい。そして、たとえ準備が万端だとしても、天気予報などで悪天候が予想されている場合は、計画を延期して移動を控えるなど、身を守る行動を最優先にしたい。

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