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最終更新日:2020.04.05 公開日:2020.04.05

2019年、歩行者の交通事故死者の6割以上は、自身にも法令違反があった。

2019年に発生した交通事故の死者3215人のうち、約4割が歩行者である。さらに歩行中死者の約6割には、歩行者側にも横断違反や信号無視などの法令違反があった。交通事故による全死者数3215人の4分の1は、自身も法令違反をしていた歩行者ということになる。

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©naka – stock.adobe.com

 警察庁が発表した資料によると、2019年の全国の交通事故死者数は3215人。2018年と比較すると317人減少し、2016年から4年連続で4000人を下回った。しかし、政府が今年度までの目標とする「交通事故死者数2500人以下」を達成するには、あと700人以上減少させることが必要である。

交通事故死者数の約4割は歩行者。

交通事故死者の状態別の推移 出典:警察庁資料

 交通事故死者減少のための課題はどこにあるのだろうか。まず、交通事故死者数の推移を状態別に見てみよう。死者数が最も多いのは歩行中で1176人(36.6%)。次いで自動車乗車中が1083人(33.7%)、二輪車乗車中が510人(15.9%)となっている。

【2019年の状態別死者数】
・歩行中:1176人(36.6%)
・自動車乗車中:1083人(33.7%)
・二輪車乗車中:510人(15.9%)
・自転車乗車中:433(13.5%)

 歩行中の死者数と自動車乗車中の死者数は近い値だが、ここ10年間において歩行中の死者が下回ったことはない。車同士の事故による死者も少なくないが、それよりも自動車との事故で亡くなる歩行者の方が数は多いのである。

交通事故死者の状態別致死率の推移 出展:警察庁の資料より作成

 次に、状態別の致死率を見てみると、歩行者の致死率は例年2.5%前後で推移しており、他の状態と比べると明らかに高いことがわかる。交通事故全体の致死率が例年0.5~0.6%程度なので、歩行中の致死率は全体の約5倍もある。一方、自動車乗車中の死者はシートベルトやエアバッグ、先進安全装備などの普及によって低下していて、2002年以降は0.5%を下回っている。

歩行中死者の約7割が高齢者。そのうち約6割には、歩行者側にも法令違反があった。

 ドライバーは、交通弱者である歩行者を守るために十分な注意をしなくてはいけない。それは大前提であるが、一方で、交通事故を減らすには、ドライバーとともに歩行者も交通ルールを守る必要がある。そこで、交通死亡事故における歩行者側の法令違反について調べてみた。

歩行中死者の法令違反状況の推移 出典:警察庁資料

 歩行中死者を高齢者(65歳以上)とそれ以外に分類し、それぞれについて歩行者側の法令違反の有無を見てみると、高齢者の歩行中死者803人のうち483人(60%)に法令違反があった。高齢者以外はもっと多く、338人のうち220人(65%)が法令違反をしていた。

歩行中死者の法令違反別比較 出典:警察庁資料

 次に、歩行中死者を法令違反別に見てみよう。高齢者の歩行中死者で最も多いのは横断違反で257人(32%)。高齢者以外の年代の53人(16%)と比べると圧倒的に多いことがわかる。交通事故総合分析センター(ITARDA)によると、歩行者側に法令違反があった場合の事故原因の多くは、車両の直前・直後の横断、横断歩道以外の横断、信号無視などであるという。

歩行中の交通事故の対策は?

 歩行者は交通弱者であり、守られる存在である。ただ、その歩行者が法令違反を犯すと、自ら事故のきっかけを作ることになりかねない。歩行者の交通違反を減らすことも、交通事故死者数減少のための大きな課題といえるだろう。

 歩行者の中には、知らないうちに法令違反をしてしまっている人も少なくないと思われる。例えば以下のような横断はしていないだろうか。

【道路横断の法令違反例】
・横断歩道が近くにあるのに、横断歩道以外の場所を横断している。

・道路を斜めに横断している。
※交差点などで道路標識等により、斜めに道路を横断できる場所を除く
・進行中や停車中の車両の直前または直後を横断している。
・歩行者の横断が禁止されている道路を横断している。

 いかがだろうか。このような横断方法は大変危険である。また、夕暮れ時や夜間などは、歩行者は見えにくくなるので、さらに注意が必要。夜間に出かける際は、明るい色の服を着用し、反射材やライトを活用してほしい。

 ドライバーと歩行者の両者が、より交通安全を意識して交通ルールを守らなければ、交通事故を減らすことはできない。歩行者にとっては、自身の生命に直接関わってくることでもあり、交通ルールの順守を徹底したいものである。

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