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最終更新日:2019.11.09 公開日:2019.11.09

12~2月の長期天気予報を日本気象協会に聞いてみた

クルマは、ウィンタースポーツや雪見温泉など、冬ならではのレジャーを楽しむのに便利な移動手段だ。しかし雪道に慣れていないドライバーにとって、降雪量は気になるところ。そこで、今冬(12~2月)の気温や降雪量、備えるべき点など、天候に関して日本気象協会に聞いてみた。

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 今冬の天気について解説してくれたのは、日本気象協会所属の気象予報士である岸為良(きし・さだよし)さん。企業・自治体への気象情報の提供や、道路・交通関係の気象コンサルティングなどを行うベテラン気象予報士だ。今回はドライバー視点も含めた話をしてもらった。

今冬は寒い? それとも暖かい?

 まずは基本的な質問から。今冬は冬らしく寒いのか、それとも暖冬なのかを聞いてみた。

 「今冬は、全国的に平均気温が平年並みか高くなるでしょう。その理由としては、上空の偏西風(ジェット気流)が日本付近で平年よりも北側に蛇行したコースとなっており、大陸からの寒気の南下が弱まるためです。よって、日本付近では全国的に寒気の影響を受けにくく、気温は高めで推移すると考えられます」

 普段の生活ではまったく感じられない偏西風の影響だが、天候に大きく関わっているのだ。

今冬の海洋と大気の特徴。偏西風が大きく蛇行し、それが結果として大陸からの寒気を防ぐ盾の役割を果たすようだ。気象庁仙台気象台が9月25日に発表した資料「寒候期予報の解説」より。

今冬は雪が多い? それとも少ない?

 続いては、気になる降雪量について。

 「気温が平年並みか暖冬であることと同じ理由から、降雪量は全国的に平年並みか少ないという予想です。寒気の南下が弱くて冬型の気圧配置が続かないため、日本海側でも降雪量は少なくなる見込みです。ただし一時的に強い冬型気圧配置になることはあり得ますので、日本海側で大雪が降る可能性がないわけではありません」

日本気象協会「tenki.jp」より。2017年12月26日15時の天気図で、強い冬型の気圧配置。

日本気象協会「tenki.jp」の2017年12月26日15時の実況天気図。この日は強い冬型の気圧配置で、等圧線の間隔が日本列島付近で非常に密となっている。

 道路の降雪対策がとられていない地域で大雪が降ると、道路交通は麻痺してしまう。首都圏など、太平洋側の地域の降雪量はどうだろうか?

 「首都圏を含む太平洋側の地域でも冬型の気圧配置が続かず、低気圧が周期的に通過する見込みです。低気圧が関東南岸を通過した際には、首都圏で雪が降る恐れがあります。この南岸低気圧による太平洋側の降雪は、上空の寒気よりも地表に近い気温に依存するので、暖冬だったとしてもタイミングによっては大雪になる可能性があります。日本の南岸を低気圧が東進する予報が出たときは、東北地方や関東地方などの太平洋側で、降雪の注意・警戒が必要となるでしょう」

日本気象協会「tenki.jp」による2018年1月22日21日の実況天気図。関東地方の南方、太平洋上に996hPaの低気圧が南岸低気圧。

日本気象協会「tenki.jp」による2018年1月22日21日の実況天気図。関東地方の南方、太平洋上にある996hPaの低気圧が南岸低気圧。この状況になると、東北地方や関東地方の太平洋側でも大雪になる可能性がある。実際、この日は東京で23cmの降雪量が記録された。

今冬に向けて備えておくべきこと

 以上の点を踏まえて、今冬に備えて何をしておくべきだろうか。

 「結論として今冬は暖冬少雪の予想ですが、近年の傾向として注目しておいてほしいのは、雪が降るときは短時間に大量の雪が局所的に降ることが多くなっていることが挙げられます。そのため、暖冬だからといって、スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの事前準備が必要ないわけではありません。いざというときに備えて例年通りに準備しておきましょう」

 ゲリラ豪雨ならぬ”ゲリラ豪雪”とでもいうべき大量の雪が、短時間・局所的に降るのが近年の傾向のようだ。”ゲリラ豪雪”を注意するには、どうしたらいいのだろうか。

 「最新の天気予報をテレビやインターネット、新聞などでチェックした際に、『上空の強い寒気』、『強い冬型気圧配置』、『暴風雪』、『視程障害』、『南岸低気圧』といったキーワードを聞いたときは、大雪や吹雪になる可能性が高いため、不要不急な運転は控える方がいいでしょう」

 『視程障害』とはクルマを運転できないほど視界(見通し)が悪化した状態。まさに、命の危険性があるほどの猛吹雪に巻き込まれた状態のことである。

視程障害が起きるほどの猛吹雪が発生しやすい地域は?

 クルマに乗っていれば安心ということはなく、あまりにも強烈な猛吹雪の場合、クルマを運転すること自体ができなくなる。どのような地域で視程障害が起きるほどの猛吹雪が起きやすいのか、または巻き込まれた際の注意点とは。

 「冬型の気圧配置が強まるようなときは北西の風が強く吹き、日本海側を中心に北日本では風雪が強まります。特に、周囲が平坦で開けたような土地を通る道路では、『地吹雪』による吹きだまりや視程障害に巻き込まれる恐れがあります。激しい吹雪の中では、周囲が白一色となって視界が奪われたり、道路上に大きな吹きだまりができたりして、クルマの運転そのものが困難になることがあるので、無理な外出は控えましょう。万が一、猛吹雪の中でクルマが動かなくなった場合には、一酸化炭素中毒を避けるよう注意してください。また、地吹雪の発生は局地的で時間変動が大きいので、安全な場所に避難して地吹雪が収まるのを待ちましょう」

 猛吹雪で車内に閉じ込められたとき、積もった雪でマフラーが塞がれると、一酸化炭素中毒で死につながる危険性がある。一酸化炭素は無色無臭で、空気中の濃度が0.02%(200ppm)を超えると頭痛などを招き、さらに濃度が上がると吐き気やめまいなどの中毒症状が進む。そして最終的には死に至ってしまうのである。

 また、暖を取らないでいても低体温症などのリスクもあるだろう。このように、大雪の予報が出ている中でのクルマでの外出は、動けなくなったら死につながる危険性があるということを十二分に理解していただきたい。

日本気象協会 気象予報士 岸為良さん。

【プロフィール】
奈良県出身。学生時代に気象予報士の資格を取得し、現在は気象情報を必要とする企業・自治体への情報提供を担当しており、道路・交通関係の気象コンサルティングも行う。趣味はサイクリングで、旅先で出会った風景を写真に収めるのが楽しみだそうだ。

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