トヨタ・ハイエースやコースターなと、1000万円超のキャンピングカー
7月20日・21日に開催された「東京キャンピングカーショー2019」では、高額なキャンピングカーも多数が出展された。ここでは、出展車両のうちで、オプション設定も含めた展示車両の価格を参照にして1000万円オーバーの高額かつ大型のキャンピングカーを集めてみた。
日本国内のキャンピングカーは、一般社団法人 日本RV協会が定めた8種類のカテゴリーに分類できる。その中で、最高峰のキャンピングカーであるフルコン、それに準じたセミフルコン、小型バスをベースとしたバスコンなどの大型キャンピングカーは大変高額だ。それらはベース車両がまず高額なこともあり、キャンピングカーもも高額になる。それに加えて装備も充実していることから、車両価格もトップクラスとなるのである。ここではランキング形式で、車両価格の安価な順に紹介する。第3位~第1位は外見に加えて車内も紹介した。価格はすべて税別だ。
第10位:1058万7010円「ACSプルミエM5.7」(RVビッグフット)
第10位にランクインしたのは、RVビッグフット(埼玉県春日部市)が出展したキャブコン「ACSプルミエM5.7」だ。今回出展された「ハイエース」ベースのキャンピングカーの中で最高額の1台。250万円近いオプションの追加や標準装備の機能強化が行われ、数少ない1000万円オーバーの「ハイエース」ベースキャンピングカーとなった(1000万円オーバーの「ハイエース」ベースキャンピングカーは数台のみの出展だった)。「ACSプルミエM5.7」は、同社従来モデルの「ACSプルミエM5.6」の家具を無垢調材で製作したバージョンだ。ただしボディが10cm延長され、内部レイアウトも変更された。リアに常設ベッド(1850×1300mm)が用意されたことで就寝定員も増え、大人なら3人、大人2人+子ども2人といった家族でも利用しやすいキャンピングカーとなったのである。
第9位:1124万7000円・独ホビー社製「オプティマ プレミアム T65HFL」(トーザイアテオ)
ドイツの大手キャンピングカービルダー・ホビー社の正規輸入代理店であるトーザイアテオ(埼玉県鶴ヶ島市)。日本には輸入されていないフィアットの大型バン「デュカト」をベースにした、モーターホーム「オプティマ プレミアム 」シリーズのキャブコン「T65HFL」が、1124万7000円(税別)で第9位となった。「オプティマ プレミアム 」シリーズは10種類のモデルがあり、「T65HFL」は全長が約7mもあるが、その中では最も全長が短い。キャンピングカーとモーターホームの明確な区分はないが、車中泊前提で各種設備を揃えており、なおかつ居住スペースに余裕のある大型キャンピングカー=モーターホームととらえて問題ない。「T65HFL」は、キャンピングカーとしてはトラックのキャビンを残してシャシーにキャンパーシェル(居住スペース)を架装したキャブコンに分類されている。
第8位:1168万6000円・アドリア社製「マトリックス シュプリーム 670 DL」(デルタリンク)
1168万6000円の僅差で8位となったのは、東欧のスロベニアに本拠を置く大手キャンピングカービルダーのアドリア社製「マトリックス シュプリーム 670 DL」。正規輸入代理店であるデルタリンク(岡山県倉敷市)が出展した。「マトリックス シュプリーム」は”クロスオーバーモーターホーム”と銘打たれたシリーズ。多彩なスタイルのモデルを特徴とする。基本モデルは、上画像の全長約7.5mの「670 DL」と約7.3mの「670 SL」の2種類だ。「670 DL」は乗車定員は5名で、就寝定員は4名に加え子どもが1名までなら寝られる。アドリア社製のキャンピングカーのボディは「アドリアコンプレックス(複合)ボディ」と呼ばれ、空力も考慮した流麗なデザインが特徴だ。「マトリックス シュプリーム」シリーズもフィアット「デュカト」がベース車両である。
第7位:1180万円・独デスレフ社製「パルス ロープロファイル T7051 EB」(東和モータース販売)
北ヨーロッパでの販売台数第1位を誇る独デスレフ社。同社製モーターホーム「パルス」シリーズの「ロープロファイル」系最上位モデルである「T7051 EB」が、1180万円(税別)で第7位にランクイン。正規輸入代理店の東和モータース販売(東京都杉並区)が出展した。「パルス」は、光り輝く照明と新鋭的なインテリアをテーマに開発されたシリーズ。「ロープロファイル」系は外見のスタイリッシュさを実現するため、ベース車のフィアット「デュカト」のヘッドを残した上でキャンパーシェルを架装している(もうひとつの「Aクラス」系は、ヘッドを残さず、ボディ全体を統合的にデザインしたフルコンスタイル)。また「パルス」シリーズのみに採用された内装としては、キャビネットの扉が従来の1枚扉から、くの字に折れ曲がりながら開閉する新開発の扉が採用され、開閉後にスペースを取らない設計となっている。
第6位:1277万1518円「ランドホーム コースター(標準ベース)」(RVランド)
小型バスのボディをそのまま使用したキャンピングカーがバスコンだ。国内各社の小型バスがベースとして選ばれているが、中でも近年はトヨタ「コースター」が選ばれることが多く、RVランド(茨城県常総市)が出展したフラッグシップモデル「ランドホーム コースター(標準ベース)」もその1台。小型バスをベースとする場合、ボディをカットしてすべて独自のキャンパーシェルを架装するセミフルコンとする方法もあるが、同社がそうしなかった理由は、「コースター」が本来持っている走行安定性、安全性、空力性能、耐久性をそのまま活かすためだという。また走行安定性を損なわないよう、サブバッテリーや給水タンクといった重量のある装備を車体前方寄りに配置。荷物を後部に搭載しても重量配分が悪化しないよう配慮されている。外装は断熱性とプライバシー保護のため、同社独自の「一体成型FRP窓埋め」技術を採用。小型バスの大きな窓をふさぎ、断熱性と遮音性とプライバシーの向上を実現している。新たに設けられた窓も断熱性を考慮したアクリル二重窓だ。
第5位:1304万円「ボーダーバンクス エボリューション」(ナッツRV)
国内ではフルコン用のベアシャシーはどの自動車メーカーも開発していないため、国産キャンピングカーの最上位は、小型バスのボディをカットしたシャシーに独自のキャンパーシェルを搭載するセミフルコンとされている。ナッツRV(福岡県)が出展した「ボーダーバンクス エボリューション」シリーズはそうした数少ない国産セミフルコンの1台で、ベース車両はトヨタ「コースター」だ。欧米のキャンピングカーのレベルに追いつくため、スタッフは欧州のキャンピングカー先進国ドイツを中心にして10年以上海外に足を運んで研究。その成果として2007年に誕生したのが初代「ボーダー」だ。日本の法規に合わせ、そして日本人が使いやすいよう設計がなされ、「いつかは乗りたいキャンピングカー」の第1位にも選ばれた。その後、2018年に「コースター」のフルモデルチェンジを受けて現在の「ボーダーバンクス エボリューション」が誕生。複数のタイプがあり、上画像の「タイプT」は、間接照明を利用したツインベッドルームや、対面ダイネットを備えた1台。ロングソファーが特徴的で家庭的な車内の「タイプL」も展示されていた。
第4位:1361万3580円「バレンシア520 リアエントランス」(マックレー)
今回170台のキャンピングカーが出展され、キャブコンは約45台。その中で唯一、マックレー(京都市北区)は三菱ふそうの小型トラック「キャンター」ベースにしたキャブコン「バレンシア520 リアエントランス」を出展。1361万3580円(税別)で第4位となった。
同社が「キャンター」をベース車として選んだのは、衝突被害軽減ブレーキや車両安定制御装置などの安全装備が充実していることに加え、メルセデス・ベンツの最新環境技術BlueTecテクノロジーなどを搭載していることが理由だという。また、リアの車軸強度があり、軸重量許容限度に余裕があることも選定理由としている。
同車は長期の旅行を想定した設計となっており、そのひとつが発電機だ。さらに、「V-SPEC sysytem」と呼ばれる発電機、サブバッテリー、エアコンなどを効率よく制御するシステムも搭載。走行時はエンジンのパワーで家庭用エアコンを使用でき、エンジン停止時には自動的にリチウムイオンバッテリーに切り替わるほか、発電機や外部電源などの切り替えも自動的に行われる。
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3位から1位までは車内の画像も掲載!
第3位:1388万9240円「ACSエテルノオクタービアM 窓埋めパネル仕様」(RVビッグフット)
第10位のキャブコン「ACSプルミエM5.7」に続き、第3位にもRVビッグフットのキャンピングカーがランクイン。日野の小型バス「リエッセII」をベースにしたバスコンだ。「ACSエテルノオクタービアM 窓埋めパネル仕様」の”窓埋めパネル仕様”とは、文字通り窓を埋めてあることを意味する。小型バスをベースとする場合、断熱性とプライバシーのふたつの観点から、車体後部まで続く複数の窓と大きなリアウインドーをどう処理するかが課題だ。それらを同社独自のアルミパネル(断熱防音トリム仕上げ)で埋めることでプライバシーを確保すると同時に、断熱効果と遮音効果も高めているのである。新たに設けられた窓はシャッターなども装備されたアクリル製の二重窓だ。またバスコンならではの広いルーフを活用し、155Wソーラーパネルが3枚敷き詰められている。さらに換気を考慮してベントは2か所に設置。車内装備の特徴は、まず家具が無垢調材が用いられていること。そしてリアには1800×1500mmの常設大型ベッドがあり、その下は大型収納庫となっている。
第2位:1512万円「V670」(バンテック)
国内大手ビルダーの1社であるバンテック(所沢市)が開発中の新型キャブコン「V670」が、1512万円で第2位となった。これまで、「カムロード」を中心に国産トラックをベース車両として数々のキャンピングカーを開発してきた同社だが、今回選んだのはフィアット「デュカト」。そのキャンピングカー向け「アルコシャシー」をベースに独自開発しているのである。「デュカト」ベースのキャンピングカーというと、国内で複数のビルダーが取り扱っているが、ほぼすべてが輸入車。右ハンドル仕様が輸入されているが、道路事情が異なるため、実は運転席側にエントランスが設けられているものがほとんどだ。「V670」は右ハンドルだけでなく、エントランスを左側に設けており、乗り込むところから日本仕様として設計されている。さらに、日本の道路事情を考慮した作りは、全幅にも表れている。多くの「デュカト」ベースの輸入車に対し、数cmから10cmほど狭めてあるのだ。車内の装備に関しては今後詳細を詰めていくということで、今回はオプション装備のみが紹介されていた。
第1位:1577万4000円・米ウィネベーゴ社製「フューズ WF423F」(ニートRV)
ニートRV(千葉市若葉区)は、米国の大手キャンピングカービルダー・ウィネベーゴ社の正規代理店。毎回アメリカンサイズの巨大なキャンピングカーやキャンピングトレーラーを出展している。今回は、フォード・ヨーロッパが製造している「トランジット」をベースとした、全長約7.3mの大型モーターホーム「フューズ WF423F」を出展。オプション込みの車両価格1577万4000円(税別)で、第1位を獲得した。「フューズ WF423F」の特徴のひとつは、停車中にリビングのダイネットスペース部分を50cmほどスライドアウトさせられること。そのリビングには、ギャレー/シンク、冷蔵庫、カウンターなどが備えられている。TVモニターは運転席真上のバンク部分と、車両後部のベッドルームの計2台。ベッドは常設で、縦1840×横1270mmのダブルサイズ。そのほか、シャワールーム兼トイレも完備し、まさに自走できる自宅ともいうべき豪華装備の1台となっている。
今回は、高額キャンピングカーをベスト10形式で紹介したが、第10位の時点で1000万円オーバー、第1位に至っては1500万円台後半という高額車だった。ここまで高額となると、なかなか買えないもの。実は現在、日本全国で数多くのビルダーがレンタル事業を行っており、また体験試乗会を行っているビルダーもある。そうした機会を利用してまずは体験してみたり、購入を考えている人は運転しやすさとか使い勝手を確かめてみることもできる。