クルマのある暮らしをもっと豊かに、もっと楽しく

Cars

最終更新日:2023.06.16 公開日:2019.08.01

オートジャンボリー2019 プリウス&アクアのカットモデル

今回の「クルマ解体新書」は、7月20日・21日に埼玉自動車大学校で開催されたクルマとバイクの祭典「オートジャンボリー2019」からお届けだ。同イベントで展示された、同校の学生たちが毎年製作している“ハーフカットモデル”を取り上げる。第1弾は、トヨタの4代目「プリウス」とコンパクト・ハイブリッドカー「アクア」だ。

オートジャンボリー2019では、4号棟1階で画像の4代目「プリウス」を初めとする、ハーフカットモデル6車種がズラリと並べられた。もう1車種、日産「ノート e-POWER」のハーフカットモデルだけは、1号棟1階でエンジンハーフカットモデルや旧車などと共に展示されていた。

 埼玉自動車大学校のカットモデルは”ハーフカットモデル”と呼ばれ、文字通り外装を半分以上切り取り、中のメカニズムをとても見やすくしてあるのが特徴だ。しかも、単に各種機器の配置が見られるというレベルではなく、エンジンやモーター、バッテリー、制御機構といった各種機器そのものも外装を一部カットされているものも多く、その内部構造まで見られることが大きな特徴となっている。

しかもスイッチを押すと、ピストンやモーターなどが実際に稼働したり、高電圧配線のライトが点灯して電気の流れがわかる仕組みも備える。クルマの構造に詳しくなくても、ハイブリッドカーの仕組みを学べるようになっているのだ。

これらハーフカットモデルは2009年の在校生が、同校の学園祭である「埼自大祭」において、3代目「プリウス」のハーフカットモデルを出展したのが始まりだ。そして埼自大祭で披露したハーフカットモデルは、年が明けてすぐの東京オートサロンにも出展している。

同校のハーフカットモデルは実にクォリティが高く、次世代自動車産業の支援を目的とする公益財団法人 埼玉県産業振興公社の次世代自動車支援センター埼玉から依頼されるようになっている。同公社では、自動車製造に関わる中小企業の研究用資料として利用できると考え、これまで何車種もハーフカットモデルの製作を埼玉自動車大学校に依頼しているのだ。

4代目「プリウス」のハーフカットモデル。どんな技術が詰め込まれているのか?

2019年7月現在の最新ハーフカットモデルが、4代目「プリウス」だ。2018年の埼自大祭で初披露され、今年の東京オートサロンに出展された。部門別の販売台数では、もう何年もセダン部門の1位となっている「プリウス」。一人勝ちの人気車種を実現した技術とはどのようなものなのか?

4代目「プリウス」のハーフカットモデルを助手席側から。手前にある装置の4つのボタンを押すと、ピストンが上下したりモーターが動いたり、電気の流れがわかるようにライトが点灯したりする。

ハーフカットモデルを前方から。(1)イグナイター(点火装置)。(2)インジェクター(燃料噴射装置)。(3)EGRモーター(廃棄再循環バルブ用モーター)。(4)パワーコントロールユニット。(5)電動ウォーターポンプ。(6)ラジエター(奥)と(7)コンデンサ(手前)。(8)電動エアコン・コンプレッサー。(9)排気量1797cc・直列4気筒アトキンソンサイクルエンジン「2ZR-FXE」。(10)発電用ジェネレーター。(11)パーキングロックアクチュエーター。

上と同じフロント部分を別の角度から。番号と機構名称は同一だ。

フロント部分を別角度から。(1)駆動用モーター。(2)高電圧配線(オレンジ色のケーブル)。フロントの足回りは、サスペンションがスタビライザー付きストラット式コイルスプリング。ブレーキはベンチレーテッドディスクで、作動方式は油圧・回生ブレーキ協調式を採用している。

バッテリー。バッテリーは重量物のため、できるだけ車体中央(重心の近く)かつ車体下方である後部シート下に設置されることが多い。それにより安定感も増す。

後方から。リアの足回りは、サスペンションはスタビライザー付きダブルウィッシュボーン式コイルスプリングで、ブレーキはディスクだ。

比較できるように、併せて展示されていた3代目「プリウス」(2009年製作)のカットモデルも掲載してみた。(1)昇圧コンバーター(入力電圧よりも高い出力電圧を得られる装置)。(2)インバーター(直流→交流または交流から別の周波数の交流を発生させる電源回路)。(3)エンジン(この角度からだと昇圧コンバーターの陰に隠れてほとんど見えない)。(4)電動エアコンコンプレッサー。(5)モーター。(6)ジェネレーター(発電機)。サスペンションは4代目と同じでスタビライザー付きストラット式コイルスプリング。リアはトーションビーム式コイルスプリングだった。ブレーキは4代目と同じ方式。

→ 次ページ:
続いてはコンパクトカー「アクア」!

ハイブリッドカー「アクア」のハーフカットモデル。コンパクトなボディーに搭載された技術とは?

2013年に次世代自動車支援センター埼玉からの依頼を受けて製作。埼自大祭で初披露され、東京オートサロン2014にも出展されたトヨタ「アクア」のハーフカットモデルだ。「アクア」は、2011年12月26日に発売されたコンパクト・ハイブリッドカーだ。これまでに幾度かマイナーチェンジは受けているものの、フルモデルチェンジすることなく初代のまま発売され続けている人気車種である。

2019年7月現在発売中の「アクア」は、排気量1496ccの直列4気筒エンジン「1NZ-FXE」と「1LM」モーターを組み合わせたハイブリッドシステムにより、JC08モードで34.4km/L(商用向けの最も車重の軽いグレード「L」は38.0km/L)という優れた燃費性能を特徴としている。

「アクア」ハーフカットモデルの助手席側。このハーフカットモデルも、ピストンなどが上下動することに加え、バッテリーとモーターなどをつなぐ高電圧ケーブルに電飾が施されており、どこを伝わって電気が行き来するかを確認しやすくなっている(画像は「HVバッテリー充電」ボタンを押しており、青く光っている)。

「アクア」のフロント部分。(1)ワイパーモーター。(2)EGR(廃棄再循環用)バルブ。(3)イグニションコイル。(4)インバーター冷却用ラジエターリザーブタンク。(5)昇圧コンバーター。(6)インバーター。(7)電動エアコンコンプレッサー。(8)オイルフィルター。(9)ジェネレーター。(10)モーター。

フロント部分を助手席側から。(1)インバーター冷却用ラジエターリザーブタンク。(2)昇圧コンバーター。(3)インバーター。(4)モーター。(5)オイルポンプ。(6)吸音不織布(ドア内側)。(7)吸音材。(8)フロアカーペット(不織布)。(9)(後席)フロアカーペット(不織布)。フロントサスペンションはスタビライザー付きストラット式コイルスプリングで、フロントブレーキはベンチレーテッドディスク。

(1)(後席)フロアカーペット(不織布)。(2)ジャンクションブロック(手前のパーツの陰にある)。(3)ニッケル水素電池用セパレーター(電池モジュール内)。(4)トランクサイド。リアサスペンションは、トーションビーム式コイルスプリングで、リアブレーキはリーディングトレーリング式ドラム。

上の画像を別の角度から。(1)ニッケル水素電池用セパレーター(電池モジュール内)。2019年現在、車載においてもリチウムイオン電池の普及が進むが、「アクア」に関してはマイナーチェンジを経てもニッケル水素電池のまま。(2)ジャンクションブロック。


まずは、オートジャンボリー2019で見た埼玉自動車大学校のハーフカットモデルのトヨタ編として、2018年製作の4代目「プリウス」と2013年製作の「アクア」を紹介した。ハーフカットモデルはボディのカットに留まらず、内部の多数の機器までカットし、それらの内部構造すら見られるようにしており、ここまで徹底したカットモデルはそうそうないだろう。ぜひ、機会を見つけてご自身の目でも見てもらいたい。

オートジャンボリー2019ではこのほかに日産とホンダも2車種ず展示されており、次回は日産「ノート e-POWER」と初代「リーフ」を取り上げる。そして最後はホンダ「レジェンド」と「フィット ハイブリッド」を紹介する予定だ。

この記事をシェア

  

Campaign

応募はこちら!(1月5日まで)
応募はこちら!(1月5日まで)