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最終更新日:2019.05.29 公開日:2019.05.29

「VCターボ」が圧縮比を連続可変させる仕組みを動画でまるっと!【人とくるまのテクノロジー展2019】日産編(2)

5月22日から24日まで開催の、エンジニアのための自動車技術専門展「人とくるまのテクノロジー展」。日産ブースでは、昨年初出展した可変圧縮比エンジン「VCターボ」を再び出展したが、今年は可動カットモデルを展示。「VCターボ」がどのような仕組みで圧縮比を可変するのか動画で紹介する。

「VCターボ」の可動カットモデル。エンジン型式は「KR20DDET型」。排気量1970(圧縮比14時)ccから1997cc(圧縮比8時)。最高出力200kW、最大トルク390N・m、どちらも回転数は未公表。圧縮比を連続可変させるためのコアとなるマルチリンク機構が可動する様子を外から見られるようになっていた。

 量産型のエンジンとしては、世界初となる可変圧縮比エンジン「VCターボ」(Variable Compression:可変圧縮)。日産が日立オートモーティブシステムズ社と組んで開発し、現在は北米市場で販売されているミドルセダン「アルティマ」2019年式や、インフィニティー・ブランドの中型クロスオーバーSUV「QX50」2019年式などに搭載されている。

 今回展示された可動カットモデルは、2Lクラスのエンジン「KR20DDET型」。同クラスではトップの燃費性能を有しながら、3.5L・V6エンジン以上の動力性能を実現している。

「VCターボ」は複数の圧縮比のいいところ取りをしたエンジン

 可変圧縮比エンジンとは、文字通り圧縮比を連続的に可変させられるエンジンで、「KR20DDET型」は8~14の間で可変させられる。圧縮比は低いほどパワーやトルクを出すことができ、高いほど低燃費にしやすい。要は「VCターボ」は高出力型や低燃費型など、複数のエンジンのいいところ取りをしたエンジンなのである。

圧縮比を連続可変させる仕組みとは?

「VCターボ」の圧縮比を実現したマルチリンク機構の構成図。左が従来のエンジンで、右が「VCターボ」。番号は、「VCターボ」のパーツのみに振った。「人とくるまのテクノロジー展2018」で日産ブースに展示されたパネル『内燃機関の革新「VCターボ」エンジン』より。

 「VCターボ」は、ピストンの上下死点の高さを変えることで圧縮比を可変させている。上下死点を高くすれば排気量が少なくなり、同時に圧縮比が高くなる。逆に上下死点を低くすれば排気量が増え、同時に圧縮比が低くなる。それを実現している仕組みがマルチリンク機構だ。

  ピストンの上下死点を変化させる流れは、まず上の図中の(1)のアクチュエーター・モーターが可動することから始まる。すると、(2)A-リンク(アクチュエーター・リンク)→(3)コントロール・シャフト→(4)C-リンク(コントロール・リンク)→一体化した(5)クランクシャフトおよび(6)L-リンク(ロウワー・リンク)→(7)U-リンク(アッパー・リンク)→(8)ピストンと動きが伝わり、上下死点が変化するのだ。

上のマルチリンク機構の構成図に対応させた、可動カットモデル。(1)アクチュエーター・モーターと(3)コントロール・シャフトにある緑と赤のラインは、圧縮比が最高か最低かを表したもの。緑が高圧縮時で、赤が低圧縮時。

低圧縮時(左)と高圧縮時のピストンの上死点およびL-リンクの高さの違い。ピストンの高さは少しわかりにくいかも知れないが、L-リンクの方が高圧縮時に角度が立っているのがわかる。その分、ピストンが上側に押し上げられており、結果的に上下死点が高くなっている。

マルチリンク機構の稼働の様子を動画でチェック!

 それでは、実際にマルチリンク機構が動作する様子を動画でご覧いただこう。

「VCターボ」のカットモデルの動作の様子。11秒頃から、角度を変えて真横側からになる。再生時間18秒。

国内で「VCターボ」搭載車種の発売予定は?

 冒頭で述べたように北米では搭載車種がすでに発売されているが、国内では発売されていない。今後の国内販売車種への搭載予定をブース説明員に聞いてみたところ、回答を得られなかった。

 日産は、日本国内でシリーズ型ハイブリッドエンジン「e-Power」搭載車が好調だ。しかし、「e-Power」搭載車は北米では販売していない。逆に「VCターボ」搭載車は北米のみで販売されている。このように、日産は市場によってパワートレインを使い分けていることから、もしかしたら「VCターボ」搭載車は北米メインで使う予定なのだろうか。

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