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最終更新日:2023.07.03 公開日:2023.07.30

えっ! 世界初のカーナビってホンダが開発してたの!? 道路地図の歴史をたどるゼンリンの企画展がオモシロイ。

道路地図の歴史をたどる企画展『クルマの地図 大集合!!~68年の軌跡~』が、北九州のゼンリンミュージアムで開催中だ。懐かしの道路地図から、カーナビ黄金期の人気モデルまでが一堂に集結!

文=会田 肇

知られざる「クルマの地図」の歴史

企画展『クルマの地図 大集合!!~68年の軌跡~』のポスター

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かつてクルマに乗ると車内に必ず1冊は置いてあった道路地図。今じゃほとんど見かけなくなった光景だが、カーナビゲーションが普及する前まではそれが日常だった。そんな時代を振り返る企画展『クルマの地図 大集合!!~68年の軌跡~』が、北九州市小倉区にあるゼンリンミュージアムにおいて5月20日より9月30日まで開催されている。

この企画展では、日本初の道路地図の誕生から、世界初のカーナビゲーションの実機を紹介するとともに、今でも販売されている最新版の道路地図や、カーナビの普及に貢献した当時の人気モデルなどを展示。その知られざる「クルマの地図」の歴史を貴重な資料とともに紹介している。ゼンリンミュージアムでは通常、世界中から収集された地図を使い、その歴史を観覧できる常設展が開かれているが、今回の企画展はその中の特別展として開催された。

会場は大きく道路地図と、カーナビゲーションに2つのセクションに分けられ、それぞれの歴史をたどる形で展示が展開されている。

日本には最近まで道路地図がなかった!?

1955年当時、道路地図として使われていた20万分の1地形図・地勢図

まず入口から入って真っ先に目にするのが、今から68年前の1955年(昭和30年)に発行された20万分の1地形図・地勢図だ。実はこの当時、日本には道路地図というものが存在しなかった。それは日本では移動や物流の手段のほとんどを鉄道に頼っていたからだ。そのため、自動車で目的地まで移動する時はこの20万分の1地形図・地勢図を使うしかなかったのだ。

道路地図が初めて世に現れたのは、それから3年後の1958年のことになる。1958年と言えば、東京タワーの開業や、政府の国民車構想の下で“てんとう虫”こと「スバル360」が誕生した年。時代は高度経済成長期に入り、この頃から本格的なモータリーゼ-ションがスタートする。一般ドライバーが増え始め、それまで業務用として使われていた道路地図がいよいよ一般向けに発行され始めたのだ。

この道路地図で興味深いのは、道路を「舗装道」と「砂利道」で区別して表現していることだ。実はこの当時、日本の道路は未舗装の道路がほとんどで、国道などの幹線道路でさえ舗装率は約8%でしかなかった。砂利道を走れば速度も落ちるし、燃費も悪くなる。できればここを避けて通りたいという思いが、ここに現れていたと言えるだろう。

そして、1964年(昭和39年)の東京オリンピック開催を迎えるその前年には、日本初の高速道路となる名神高速道路が一部区間で開通。そこから日本はいよいよ高速道路を使った本格的なハイウェイ時代に入っていく。この頃になるとドライブを家族で楽しむのが一般化し、数多くの地図会社が様々な地図を手掛けるようになる。

それだけに道路地図を発行にあたっては多様化するニーズに合わせ、様々な種類の道路地図を用意するようになる。大きな1枚の地図を小さなサイズ折りたたんで使えるようにした道路地図が登場したのもこの頃だ。さらに1990年代になるとカーナビゲーションが登場しているのにも関わらず、大ヒットを記録した昭文社の道路地図「スーパーマップル」が誕生。会場ではこれらの地図を間近で見ることができる。

世界初のカーナビはホンダが作った!

1981年に世界で初めてのカーナビゲーションとして登場した「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」

一方のカーナビゲーションの展示では、1981年(昭和58年)に登場し、後にIEEEで“世界初の地図型カーナビゲーションシステム”として認められた「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」から、HDDを搭載した大容量時代のカーナビに至る、いわばカーナビが最も輝いていた時代の歴史を、実機を見ながら振り返ることができる。

特に「ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータ」はまだGPS衛星による測位がなかった時代に、ガス式レートセンサーで車両の動きを検知して現在地を測位することに成功したことが最大の功績。地図を透過式フィルムとして使い、そこで経験した使いにくさが後に“光ディスクで地図データを収録”する特許取得にもつながってもいる。しかも、ホンダはこの特許を無償公開した。これがあったからこそ、カーナビの今があると言っても過言ではないのだ。

懐かしの道路地図や、カーナビ黄金期の名機がズラリ!

道路地図の歴史をたどる企画展『クルマの地図 大集合!!~68年の軌跡~』

展示会場では、地図データをCD-ROM化したことで誕生したカーナビの数々を見ることができる。中でも三菱電機が東京モーターショーでコンセプトとして公開したGPSナビゲーションのカタログは、同社が後にユーノス・コスモに世界で初めてGPSで現在地を測位できる「CCS(カーコミュニケーションシステム)」の誕生につながる貴重な資料として興味深い。その横には、その時に地図データを収録したゼンリン製CD-ROMも合わせて見ることができる。

その他、市販カーナビ初のGPSカーナビとして1990年に発売された、パイオニアのサテライトクルージングシステム「カロッツェリア・AVIC-1」の実機や、カーナビの普及に大きく貢献した1993年登場のソニー・デジタルマップナビシステム「NVX-F10」、初のポータブルカーナビとして登場した三洋「ゴリラ」初号機の展示もある。

道路地図を見ながら道を間違えて夫婦で喧嘩した経験をお持ちの方は、その時代の振り返りとして、また、スマホでしか道路地図を見たことがない若い世代にとって、この企画展はその礎となった道路地図の歴史を知るのに良い機会となることだろう。

企画展『クルマの地図 大集合!!~68年の軌跡~』の開催期間は2023年5月20日(土)~9月3日(日)まで、リバーウォーク北九州14階にあるゼンリンミュージアム(北九州市小倉区)で開催されている。開催時間は10時~17時で休館日は毎週月曜日(※祝日が重なった場合は翌平日に変更)。入場料は常設展示も含め、一般1000円。

会期中は有料入館者全員に、昭和45年に日地出版が発行した道路地図の表紙をモチーフにしたオリジナルデザインの「チケットホルダー」が配られる。

『クルマの地図 大集合!!~68年の軌跡~』

会期:2023年9月3日(日)まで

会場:福岡県北九州市小倉北区室町1-1-1 リバーウォーク北九州14F「ゼンリンミュージアム 多目的展示室」

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