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最終更新日:2018.12.21 公開日:2018.12.21

「2000GT」を超えるべく開発されたトヨタ「70スープラ」のGTカーとしての魅力

2代目セリカ「XX」の後継モデルながら、新たな名が与えられて誕生した初代「スープラ」。 長らくトヨタのスポーツモデルのフラッグシップとして人気を博し、モータースポーツでも活躍した。 通称「70スープラ」と呼ばれた初代に迫る。

トヨタ「スープラ GT TWIN TURBO(エレクトロニクス仕様)」。別のグレード名として「2000 TWINCAM24 TWIN TURBO」もあることから、「スープラ 2000GT」と呼ばれる場合も。撮影は「トヨタ博物館 クラシックカー・フェスティバル in 神宮外苑」で行ったもので、オーナーの中村雅和さんはご家族と共に愛媛から参加した。

 1970年代に入って、日産「フェアレディZ」(※1)が北米市場で”Z(ズィー)カー”として大成功を収めたことを受け、トヨタはその市場に向けた新型車の開発に入る。そして1978年に発売されたのが、2代目「セリカ リフトバック」(※2)をベースにした高級スペシャリティーカー「セリカXX」である。ロングノーズ化を行い、エンジンを「クラウン」用にし、英国製レザーシートをオプション設定するなど、グランツーリスモ(グランドツーリングカー)を目指して開発された車種だった。

 「セリカXX」は1981年に2代目となり、そして1986年2月にフルモデルチェンジを実施した際に、「セリカ」ベースの設計ではなくなったことから、「セリカ」から独立することとなった。「セリカXX」の北米での車名を国内でも使用することにし、今回紹介する初代「スープラ」(通称「70スープラ」)が誕生したのである。「スープラ」とは、ラテン語で「超えて」、「上に」、「至上」といった意味がある。

※1 初代「フェアレディZ」のうち、北米で大ヒットして日本でも販売されるに至った「240Z」については、『今もって人気の初代S30系ラリーでも大活躍した「フェアレディ240Z」!』に詳しい
※2 「セリカXX」を含めた初期の「セリカ」およびそのラリーカーについては、別記事『「セリカ」てんこ盛り! 「リフトバック」に「XX」、 WRC参戦ラリーカーも!!』に詳しい

1983年夏に追加された2代目の最上位グレード「セリカXX 2800GT」。排気量2759cc・直列6気筒DOHCエンジン「5M-GEU」を搭載し、最高出力は170馬力を誇った。2代目「セリカXX」の車両型式はA61で、「70スープラ」はA70。同じ”A+2桁数字”で表されており、「スープラ」が「セリカXX」の系譜であることがわかる(Aで始まる車両型式は、2代目「セリカ」まで遡る)。「お台場旧車天国2017」にて撮影。

「ドラスティック・パフォーマンス・デザイン」によるグラマラスさ

「70スープラ」は、ワインディングロードでの俊敏な走りを実現するため、ショートホイールベース&ワイドトレッドを採用した。ホイールベースは2代目「セリカXX」から20mm短くなって2595mmに、逆に全幅は5mm広くなって1690mmとなった。

 「70スープラ」に採用されたデザインテーマは、”ドラスティック・パフォーマンス・デザイン”。1980年代後半当時の最新GTカーとして空力性能を徹底的に追求し、そのポテンシャルを感じさせるフォルムを求めたデザインである。

 そのデザイン的な特徴としては、まずボディのフロントとリアを大きく絞り込み、ホイールフレアを廃したストリーム・サーフェスのフォルムを採用していることが挙げられる。さらに、ダブルウィッシュボーン・サスペンションとリトラクタブル方式のヘッドランプを採用したことで実現したスラントノーズも特徴だった。

「70スープラ」を正面から。フロントは、ダブルウィッシュボーンとリトラクタブル式ヘッドランプの採用により、低いボンネットのスラントノーズを実現。そして直線を極力排するデザインとするため、コーナーが大きく絞り込まれた。Cd値(空気抵抗係数)は0.32。

「70スープラ」を横から。ワイドトレッドを強調させるため、ホイールフレアとボディを一体化させるブリスター造形とした。またこの角度だと2シーターに見えるが、後席は3人座席で5人乗車が可能。フロントフェンダーからドア前にかけて記されているのは、「24VALVE TWIN turbo」の文字。

「70スープラ」を後方から。リアウインドーの面積の広さがわかる。このリアウインドーはバックドアとなっている。フロント同様にコーナー部分はサイドに回り込む大きなRを持つ曲面で構成されている。リアスポイラーはオプション設定だ。

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スープラの特徴に迫る!

「2000GT」を目標とした「スープラ」

全長は4620mm、全高は1310mm、ホイールベースは2595mm。ショートホイールベース&ワイドトレッドを実現するため、全長は「セリカXX」よりも40mm短くなり、全高も5mm低くなった。

 この「GT TWIN TURBO」は上からふたつめのグレードだが、最上位にあったのが「3.0GT TURBO」。それは別名「3000GT」ともいわれた(230馬力の排気量2954cc・直列6気筒DOHCエンジン「7M-GTEU」を搭載)。その名は、1960年代にトヨタがヤマハと組んで世に送り出した”幻の名車”ことトヨタ「2000GT」(※3)を超えるという意気込みが込められた名称である。

 そのひとつが、「2000GT」以来の本格的なダブルウィッシュボーン方式の新設計のサスペンションを前後共に採用したこと。さらに、そのポテンシャルを確実に引き出すべく、コンピューターシミュレーションによる解析を繰り返し行い、さらに欧州での幾度にも及ぶ実走行試験の結果をフィードバックさせ、入念にチューニングを重ねていったという。

※3 トヨタ「2000GT」については、以下の3本の記事で紹介。
・僕は、車と生きてきた『トヨタ・2000GT』(著・下野康史)
トヨタとヤマハが共同開発した幻の名車「2000GT」! その中のさらにレアな1台の海外輸出用試験車両「2000GT MF12型(67年)」
フォト&動画・同乗試乗レポ#4 日・伊、曲線美の競演!「ディーノ」と「2000GT」!!

「70スープラ」のサイドにおけるデザイン的な特徴のひとつが、太いセンターピラー。サイドプロテクションモールは、リアフェンダーから後方でもぐるりと回り込んでいる。フロントフェンダーから前方部分にもあるので1周するデザインとなっている。

大型リアウインドーはこの角度から見るとラウンドしているのがわかる。マッドガード一体式の大型ソフトリアバンパーや、視認性を重視した二重レンズ薄型リアコンビネーションランプなども「70スープラ」の特徴だ。

24バルブ・ツインターボ「1G-GTEU」を搭載

 「GT TWIN TURBO」に搭載された排気量1988ccの直列6気筒DOHCエンジン「1G-GTEU」(別名「レーザーα1Gツインカム24・ツインターボ」)は、ツインカム・エンジンとして評価の高い「1G-G」をベースに、3気筒ずつ装着したツインターボとインタークーラーを装着して新開発された。

 「1G-GTEU」は1気筒あたり左右対称に吸排気ポートを2個ずつ備え、クロスフローレイアウトとすることでスムーズに混合気が流れる設計が採用された。さらに、1気筒当たりのインテークマニホールドを長短2本のポートにし、吸気制御機構「T-VIS」(Toyota Variable Induction System)と組み合わせることで低回転から高回転まで吸気効率を高めることに成功している。

 ターボについてはエキゾーストマニホールドを2分割し、それぞれに小型ターボを装着するツインターボとした。これにより気筒間の排気干渉を減らせるために背圧(排気ガスの圧力)が低くなり、高負荷・高回転域での出力向上を実現。また、小型タービンによりホイール慣性が小さくなったことから、ターボラグを小さくすることにも成功したのである。

「スープラ」は2代で終了したかに思われたが…

 「70スープラ」は刑事もののTVドラマの金字塔『太陽にほえろ!』において、活躍したことも同番組のファンには知られている。番組の中期から後期にかけてはトヨタがスポンサードしてたこともあり、七曲署捜査一係の覆面パトカーの1台として活躍した(最後はロールオーバーして大破)。

 そして「70スープラ」は1993年5月にモデルチェンジして2代目、通称「80スープラ」(※4)にバトンタッチ。その2代目も2002年7月を持って生産終了となる。しかし、長い時を経て新型「スープラ」が復活。2019年前半よりまずは欧州からスタートし、順次、世界各国での販売を開始する予定としている(別記事『新型「スープラ」の概要が発表に。まずは欧州で予約受注開始。』に詳報)。

 国内での販売時期などは未発表だが、2019年1月13日から15日まで開催される「オートサロン2019」に、「GR スープラ スーパーGTコンセプト」が出展される。同時に、これまで国内のレースで活躍してきた「スープラ」のレーシングカーも展示される予定だ。

※4 2代目「80スープラ」のル・マン24時間レース仕様を、別記事『「80スープラ」ル・マン仕様も! トヨタのル・マン24時間レース参戦を振り返る90年代編 コックピット内も特別公開!!』にて紹介

今回撮影した「GT TWIN TURBO」に搭載された、排気量1988cc・直列6気筒DOHCエンジン「1G-GTEU」。最高出力は185馬力、最大トルクは24.5kg-mを叩き出した。また最上位グレード「3.0GT TURBO」に搭載された「7M-GTEU」(別名「レーザーα7Mツインカム24ターボ」)は、「2000GT」に搭載された「3M」エンジンに始まる、19年に及ぶ同社のツインカム技術の集大成として開発されたという。

【スープラ GT TWIN TORBO・スペック】
全長×全幅×全高:4620×1690×1310mm
ホイールベース:2595mm
トレッド(前/後):1460/1455mm
最低地上高:155mm
車重:1715~1735kg

【エンジン】
型式:1G-GTEU
種類:直列6気筒DOHC
排気量:1988cc
最高出力:185ps/6200rpm
最大トルク:24.5kg-m/3200rpm

【足回り】
サスペンション:前後共にダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後共にベンチレーテッドディスク
タイヤ:前後共に205/60R15 89H 6JJ×15アルミホイール

2018年12月20日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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