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最終更新日:2018.07.06 公開日:2018.07.06

ガソリンベーパー問題の最前線を特集。(4/4)

なんちゃってエジソン」で、体当たりの実験や地道な調査をこなしてきたあのライター横内が帰ってきた! 

今度は、かっこいいジャーナリストを目指して、社会問題や世の中の気になる新たな動きに、取材で切り込んでいきます。


「エコステージ」を3機導入している東和興産(株)のガソリンスタンド

ガソリンベーパーの何がそんなに問題なのか? そして、具体的な対策とは? 取材によりすべてをつまびらかにしたいと思います! 最終章の4部では、ガソリンベーパーを回収する給油機を、実際に採用しているガソリンスタンドを取材しました。

補助金の活用で普通タイプと変わらぬコストで、ガソリンベーパー回収給油機を導入。

 実際に、エコステージ内蔵給油機を導入しているガソリンスタンドの現場を取材しました。場所は東京都荒川区南千住にある、東和興産(株)のガソリンスタンド。3機ある給油機すべてが、(株)タツノ製のエコステージ内蔵タイプです。

 「ガソリンのにおいがしないスタンド」と言われても、にわかには信じられなかったのですが、実際に行ってみると確かにまったく臭いがしませんでした。東和興産は、首都圏6か所にガソリンスタンドを持ち、現在順次このエコステージへと入れ替えを進めているとのこと。同社の代表取締役社長である、林彰さんにお聞きしました。

取材に応じてくれた、東和興産(株) 代表取締役社長の林彰さん。後ろに見えるのが今回導入したエコステージ内蔵給油機(ロングホース型)

 「当社では、環境に配慮した企業を目指し、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001を取得しています。なので、環境やお客様、現場のスタッフの健康にとって良いものは、どんどん採用していきます。ちょうど4年前、給油機の入れ替えのタイミングで、エコステージ内蔵給油機を導入し始めました。昨今では国の補助金の仕組みも整ってきたので、より導入しやすくなっていますね。補助金の活用により普通タイプの給油機とさほど変わらない金額で導入できるようになりました」(林さん)

ガソリンの臭いがしないことで、ユーザー、スタッフ、皆が心地いい。

 エコステージ内蔵給油機が導入されている東和興産のスタンドで働いて2年目の、マネージャー吉田隼さんの話です。ガソリンスタンドでの勤務歴は、12年というベテランスタッフです。

現場スタッフのマネージャー吉田隼さん

 「これまで、ガソリンスタンドで働いてきて、ガソリンの臭いがすることは当たり前過ぎて疑問に感じたことはありませんでした。でも、このスタンドでは臭いがしない。これまで自分が、いかにガソリンが混ざった空気に慣らされていたかを実感しましたね。こういう職場がどんどん増えれば、『ガソリンの臭いが苦手』だという人も問題なく職に就くことができるようになると思います。また、お客様も、嫌な臭いがしない気持ちの良いひと時を過ごしていただけますね」(吉田さん)

 林社長は「環境に配慮したクリーンなガソリンスタンド」であることも、お客様にアピールできるポイントになると考えているそうです。

 こうした東和興産のような環境に配慮する企業に対して、国では補助金以外でも新たな認定制度を適用していくことを決定しました(2018年3月2日に環境省より発表)。それが「大気環境配慮型SS 認定制度」です。

 同認定制度は、環境省や資源エネルギー庁でガソリンベーパーを回収する性能があると確認された給油機を設置しているガソリンスタンドが対象になります。ガソリンベーパーの回収率に応じてS、A、B、Cの4段階で認定する仕組み。基準となる回収率については、今後策定される見込みで、2018年夏頃に申請受け付けを開始します。認定を受けたガソリンスタンドには認定証とロゴマーク(下図参照)が交付され、環境省や資源エネルギー庁のホームページで名称や所在地も公表されます。

「大気環境配慮型SS 認定制度」の4段階のロゴマーク。ガソリンベーパー回収率によりS~Cランクに分かれる。愛称は「e→AS (イーアス)」e=eco(環境配慮)、いい(良い)、A=Air(大気)、S=Service station(サービスステーション)を意味し、「イーアス」=「いい明日」「いいearth」へという想いが込められている

「大気環境配慮型SS 認定制度」を導入しているガソリンスタンドを積極的に活用しよう。

 環境問題に積極的に取り組むガソリンスタンドを差別化することで、ドライバーに対して新たな選択基準を提案しています。この認定制度を受けているガソリンスタンドで給油することで、ドライバーはVOCの排出削減に寄与することができるのです。想像してみてください。暑い夏、ガソリンスタンドでエンジンを停止してスタッフに給油を依頼する。窓を開け放っていても、あのガソリン臭はないのです。

 セルフスタンドなら、自分で給油ノズルを握ります。その給油中、あの臭いがしないんです。そういうガソリンスタンドが、この制度によって探しやすくなるのではないでしょうか。

 今、ガソリンスタンドが大きく変わろうとしている、その節目に私たちはいるのかもしれません。数年後、「ガソリンスタンドって臭いよね」と若い人に話しても意味が伝わらない時代になる…… そうなる時代の節目にいると言ったら、言い過ぎでしょうか?

2018年7月6日(ライター 横内信弘)

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