【JNCAP2016】衝突安全性能・最新ランキング
衝突安全性能評価の「乗員保護性能評価試験」では、クルマを一定条件の下に実際に衝突させて安全性を確認する。画像は、運転席側の一部(オーバーラップ率40%)を時速64kmでバリアに衝突させる、「オフセット前面衝突試験」のもの。衝突事故は真正面からとは限らない。
★★最新の2017年度後期の評価結果が2018年5月31日に発表され、衝突安全は全15車種になりました。記事はこちらになります。また、2011~17年に同一条件で評価試験を受けた全96車種のランキングはこちらです。どちらも新しいタブが開きます。ぜひ併せてご覧下さい!★★
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国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が毎年発表している「自動車アセスメント」、通称「JNCAP(ジェイ・エヌキャップ)」。
JNCAPの説明や、自動ブレーキなどの「予防安全性能評価」(簡単にいうと、できるだけぶつからないようにするための装置の評価)の結果については、こちらを参照していただきたい。今回は「衝突安全性能評価」(こちらは、ぶつかってしまったときに、できるだけ乗員の被害を減らすための装置の評価)の結果を掲載する。
事故を起こしたときの安全性能を測る3ポイント
衝突安全性能評価では、大別して「乗員保護性能」(100点満点)、「歩行者保護性能」(100点満点)、「シートベルトの着用警報装置評価」(8点満点)の3項目があり、それぞれ試験が行われて点数化され、足し合わせて最高208点満点の総合得点で評価される。
乗員と歩行者の保護性能では、それぞれ複数の試験が行われる。乗員は、「フルラップ前面衝突」、「オフセット前面衝突」、「側面衝突」、「後面衝突頭部保護性能」の4種類。歩行者は、「頭部保護性能」と「脚部保護性能」の2種類だ。
左上がフルラップ前面衝突試験の、右上が側面衝突試験の様子。左下は後面衝突頭部保護性能試験のイメージ。画像提供はNASVA。右下の画像は、オフセット前面衝突試験で実際に使用されたスバル「インプレッサ」。
歩行者保護性能評価試験の様子。左は頭部保護性能試験で、歩行者の頭部を模したインパクターをボンネットなどにぶつけて衝撃を計測。画像はスバル「インプレッサ」で、国産車初搭載の「歩行者エアバッグ」が展開し、頭部への衝撃を大幅に緩和するのが特徴。右が脚部保護性能試験で、成人男性の脚部を模したインパクターをバンパーに衝突させて計測する。画像提供はNASVA。
なお、平成28年度の歩行者保護性能試験はこれまでに比べて基準が厳しくなっているため、前年度までの結果と比較できるように補正されていることを含みおいて、次ページからの結果をご覧いただきたい。
→ 次ページ:
平成28年度衝突安全性能評価ランキング第1位は!?
平成28年度衝突安全性能評価ランキングベスト3!
総合得点は本来NASVAが発表していものは208点満点だが、編集部で100点満点に換算にしたものもカッコ内に入れて併記している。
また、総合評価は最大5つ星で表され、最高評価の5つを得た場合は「ファイブスター賞」が与えられる(5つ星は、総合得点で170.0点以上、歩行者保護性能試験で高評価を得るなどの条件を満たす必要がある)。
そのほか、側面衝突試験でサイドカーテンエアバッグ(SCA)の評価を行った場合、HVやEVなどは衝突後の感電保護性能評価試験に適合した場合、予防安全性能評価を受検した場合には、それぞれを表すマークが与えられることから、記事中ではそれぞれ【SCA】、【感電保護】、【予防安全】と表記した。
それでは、衝突安全性能評価の総合得点の高い順に紹介する。まずはベスト3だ。4~11位は次ページ以降で紹介する。
1位:インプレッサ/XV(スバル)
総合得点:199.7点(96.0点)
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩行者保護:96.07 乗員保護:95.02 シートベルト着用:8.00
マーク:【SCA】【予防安全】
そのほか:衝突安全性能評価大賞および同特別賞
試験で使用したグレード:インプレッサ 2.0i-L EyeSight
スバル「インプレッサ」。国産車で初搭載となる「歩行者保護エアバッグ」が頭部保護性能試験で高得点を出すのに大きく寄与し、総合得点199.7点となった。なお、これまでの記録の189.7点(トヨタ「クラウン アスリート/ロイヤル」)を上回ったことから「衝突安全性能評価大賞」を獲得。また、特筆すべき安全装置を初めて備える車種に与えられる「衝突安全性能評価特別賞」は、歩行者保護エアバッグが評価されて同車に贈られ、三冠ともいうべき独占状態となった。
2位:プリウス/プリウスPHV※1(トヨタ)
総合得点183.6:点(88.3点)
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩:80.58 乗:92.08 シ:4.00
マーク:【SCA】【感電保護】【予防安全】
グレード:プリウス S ※1:ヘッドレスト構造を変更したモデル
トヨタ「プリウス PHV」。プリウスは、乗員保護のためのヘッドレスト構造が変更されたことから、変更前と後でそれぞれ1車種として試験を実施し、評価を行っている。その改良により、3位の変更前のプリウスと、2位となった変更後のプリウス/プリウスPHVでは、乗員保護性能評価で2.43点アップし、さらに★がひとつ増えてファイブスターを獲得した。
3位:プリウス※2(トヨタ)
総合得点:181.2点(87.1点)
総合評価:★★★★
歩:80.58 乗:89.65 シ:4.00
マーク:【SCA】【感電保護】【予防安全】
グレード:S ※2ヘッドレスト構造変更前のモデル。
ご覧の通り平成28年度衝突安全性能評価の第1位は、199.7点という高得点でインプレッサ/XVが2位以下に大差をつけて獲得した。その原動力となったのが、国産車で初搭載となる「歩行者保護エアバッグ」だ。
現代のクルマのボンネットは凹むことで衝撃を吸収する柔構造となっている。しかし、どうしても衝撃を吸収するような柔らかさを持たせられないのが、Aピラーやワイパーのあるフロントウィンドウ下部の辺り。接触事故を起こして歩行者がボンネットに乗り上げた際、そうした硬い部分に頭をぶつけることが特に危険である。そこで、柔らかくできないのならその上にエアバッグを展開し、直接ぶつけないで済むようにということで開発されたのが、歩行者保護エアバッグというわけだ。
歩行者保護エアバッグのデモの様子や、どういう仕組みで働くのかについては、「【動画あり】国産車初「歩行者エアバッグ」の仕組みに迫る!」をぜひご覧いただきたい。
歩行者保護エアバッグ。これが199.7点という高得点を出せた大きな理由のひとつだ。どうしても柔らかくできない部分を覆うように展開する。
衝突安全性能評価ランキング4~7位
続いては、総合得点順で4~7位を掲載。なお、トヨタ「パッソ」/ダイハツ「ブーン」は、2社が共同開発したクルマであり、両者の間でよく見られるダイハツが開発した軽自動車をトヨタがOEM供給を受けるというスタイルではない。また同車はサイドカーテンエアバッグ(SCA)の設定車と非設定車で、それぞれ別の1台として評価が行われた。同車のSCA付となしでは、総合得点で10.7点もの差がある。
4位:パッソ(トヨタ)/ブーン(ダイハツ)SCA付
総合得点:179.2点(100点満点換算で86.2点)
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩行者保護:71.78 乗員保護:89.56 シートベルト:6.00
マーク:【SCA】【予防安全】
グレード:パッソ X “Lパッケージ・S”(SCA付)
5位:ベルファイア/アルファード(トヨタ)
総合得点:178.4点
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩:73.99 乗:80.82 シ:4.00
マーク:【SCA】【予防安全】
グレード:ヴェルファイア Z “G EDITION”
6位:フリード/フリード+(ホンダ)
総合得点:177.2点(85.2点)
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩:72.73 乗:90.12 シ:4.00
マーク:【SCA】【感電保護】【予防安全】
グレード:フリード HYBRID G・Honda SENSING
7位:セレナ(日産)
総合得点:175.8点(84.5点)
総合評価:★★★★★(ファイブスター)
歩:75.06 乗:90.70 シ:0.80
マーク:【SCA】【予防安全】
グレード:ハイウェイスター ※OEM供給車のスズキ「ランディ」も同等
衝突安全性能評価ランキング8~11位
8位:パッソ/ブーン(トヨタ/ダイハツ)
総合得点:168.5点(81.0点)
総合評価:★★★★
歩:71.78 乗:78.78 シ:6.00
マーク:【予防安全】
グレード:パッソ X “Lパッケージ・S”
9位:キャスト スタイル/同 アクティバ/同 スポーツ (ダイハツ)・軽
総合得点:166.0点(79.8点)
総合評価:★★★★
歩:75.81 乗:75.67 シ:4.00
マーク:【予防安全】
グレード:キャスト スタイル G SAII
※OEM供給車のトヨタ「ピクシス ジョイ」シリーズ「ファッション」/「クロスオーバー」/「スポーツ」も同等
10位:イグニス(スズキ)
総合得点:164.6点(79.1点)
総合評価:★★★★
歩:76.97 乗:75.19 シ:4.00
マーク:【予防安全】
グレード:HYBRID MX
11位:ウェイク(ダイハツ)
総合得点:159.2点(76.5点)
総合評価:★★★★
歩:69.07 乗:72.48 シ:6.00
マーク:【予防安全】
グレード:Gターボ SA II
★★最新の2017年度前期の評価結果が2017年10月26日に発表されました。5車種をランキング形式にして「JNCAP衝突安全2017年前期発表! 5車種が総じて安全性の高い結果に。」で紹介しています。また、その5車種を追加した全69車種による2017年前期のトップ10を「JNCAP衝突安全最新総合ランキング全69車種中のトップ10!」で紹介しています(どちらも新しいタブが開きます)。ぜひ併せてご覧下さい!★★
2017年6月5日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)
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