東京ドーム6個分の敷地! フォルクスワーゲンのテーマーパークは、 大人も子供も楽しめる車の聖地だ
フォルクスワーゲン「アウトシュタット」にある近未来的なクルマの格納庫「カー・タワー」。© Volkswagen / Foto: Lars Landmann
経済産業省が発表した統計によると、遊園地やテーマパークの6月の売上高は、前年同月比2.9%増の664億円となり、5か月連続で増加の傾向にある。
7月には東京都新宿区にゲームやアニメのバーチャルリアリティ(VR)の世界を体験できるテーマパーク「VR ZONE SHINJUKU」がオープンする。また、東京ディズニーランド/東京ディズニーシーは、2020年までに「美女と野獣エリア(仮称)」など、5つの新エリアやアトラクションを新設するなど話題に事欠かない賑わいである。
東京ドーム6個が入るクルマのテーマパーク
ところでドイツには、年間220万人もの入場者を記録する人気のテーマパーク「Autostadt(アウトシュタット)=自動車の町」があるのをご存知だろうか?
これは、フォルクスワーゲン社の本社にあるテーマパークで、総敷地面積28ヘクタール(東京ドーム6個分!)の中に、ミュージアム、パビリオン、試乗運転場、ホテル、レストラン、シアターなどを備え、運河では遊覧船クルーズもできてしまうのだ。ドイツ最大のクルマのテーマパーク、アウトシュタットの楽しみ方を紹介してみたい。
アウトシュタットのオープンは2000年。1日のビジター数は6000人を超える、ドイツ最大の車テーマパークである。© Voklswagen / Foto: Klaus Bossemeyer
1世紀半にわたる自動車の歴史が眼前に!自動車ミュージアム「ツァイトハウス」
歴史的名車がそろった「ツァイトハウス」は世界で1番来館者が多い自動車博物館だ。© Voklswagen / Foto: Nils Hendrik Müller
アウトシュタットに到着したら、まず訪れてみたいのはフォルクスワーゲン社の歴史を体験できる自動車ミュージアム「Zeithaus ツァイトハウス」である。
ツァイトハウスはクラッシックカーから最新モデルまで、約1世紀半にわたる自動車の歴史を追った自動車博物館である。特にエポックメイキング車として時代を飾ったクラッシックカーのコレクションは見ごたえがある。ほとんどのクラッシックカーは動態保存されており、現役として世界中のクラッシックカー・レースに借り出されるというから驚きだ。
関連性のあるクルマをあつめた展示コーナーから。同時代の高級車であるベントレー8リットル、ブガッティ タイプ41 ロワイヤル、ロールスロイス「シルバーゴースト」。© Voklswagen / Foto: Nils Hendrik Müller
ビートルにはじまったフォルクスワーゲンの歴代車はもちろんのこと、60を超える全世界のメーカーの代表的なクルマの技術、デザイン、製造方法、コンセプトが詳細に紹介されている。常設展の他に、特別展、ワークショップも開催されている。子供も参加できるクルマの仕組みをわかりやすく説明したワークショップは大人気で、目をキラキラさせて聞き入ったり、クルマの絵を書いている子供たちで溢れている。
ミュージアムショップでは、名車のミニカー、写真集、クルマ、フォルクスワーゲン・グッズ、書籍など、ここでしか手に入らない製品があるので要チェックだ。
エポックメイキング的なデザイン車を展示した「デザイン・アイコン」のコーナー。© Voklswagen / Foto: Nils Hendrik Müller
「カー・タワー」には800台の新車が
アウトシュタットで受け渡しされる新車を格納するために作られた「カー・タワー」。© Voklswagen / Foto: Lars Landmann
「Autotürme アウトツゥルメ(カー・タワー)」は48mの高さのガラス張りのタワーである。アウトシュタットにはこの近未来的なタワーが2つある。映画「ミッションインポシブル」の撮影シーンのモデルとなったアウトシュタット名物であるこのタワーは、納車を待つ新車約800台を保管できる格納庫であり、クルマがタワー内のコンテナに乗って運ばれる全自動操縦機の壮観な仕組みを見学できる。
また、クルマと同じようにガラス張りのコンテナに乗って展望台に上がるアトラクションがあり、最上階の展望台からは広大なアウトシュタットの全景を一望できる。
カー・タワーの動画
新車が納車される日の幸せ
ドイツでは購入した車を各メーカーの本社に行って、直接受け渡してもらい新車に乗って帰ってくるというシステムがある。
このカー・タワーには国内外のフォルクスワーゲンの生産工場で製造された新車が運ばれてくる。つまりカー・タワーは新車がオーナーに引き渡されるまでの、一時的な格納庫であるという訳だ。
アウトシュタットは、1日に約500台もの新車の受け渡しが行われる世界最大のデリバリーセンターであり、新車を受け取りにくる顧客は、前日にテーマパークでおもいっきり遊び、敷地内にある5つ星ホテル「リッツ・カールトン」で優雅な夜を過ごし、翌日新車と対面するのである。
一般に、新車の購入というのは人生において何度もあることではない。その瞬間が特別な思い出になるようにサポートしたいというフォルクスワーゲンのホスピタリティが、実はアウトシュタットが誕生した理由なのである。
デリバリーセンターでは、今か今かとマイカーを待っているファミリーや、キーを渡されて満面の笑顔でマイカーに乗り込み、運転しながら帰っていく幸せなオーナーの姿を見ることができる。
デリバリーセンターでマイカーを待っている夫婦。引き渡しの様子を見ているだけで幸せのおすそ分けをもらったようだ。© Voklswagen / Foto: Nele Martensen
アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレー…7つのパビリオン
フォルクスワーゲンのグループにある「アウディ」「ランボルギーニ」「ポルシェ」「ベントレー」「セアト」「シュコダ」「フォルクスワーゲン」が、それぞれ趣向を凝らしブランドをプレゼンする7つのパビリオンも見逃せない。
自動車生産量が世界第2位を誇るフォルクスワーゲンの多様さと幅広い活動を体感できる。有名建築家の手によって設計されたパビリオンの建築は、各ブランドのフィロソフィーを表す素材や形体によってデザインされたモダン建築群となっており、さながら建築パビリオンのようである。
ポルシェの有機的なフォルムとシルバーメタルを取り入れたポルシェ・パビリオン。© Voklswagen / Foto: Nils Hendrik Müller
ポルシェ・パビリオンに展示された、2016年ル・マン優勝を果たしたポルシェ919ハイブリッド。© Voklswagen
試乗運転も人気アトラクション
敷地の一角には試乗運転できるコースやトレーニング場があり、体験型アトラクションとして人気を博している。「オフロード試乗運転」、「安全運転トレーニング」、「EV(電機自動車)の試乗運転」、「先進安全技術を搭載した車の試乗運転」、燃費のいい運転の仕方を教える「エコ運転トレーニング」といった多様な試運転が可能な場所は世界でも珍しいという。
子供用にもきちんと専用のカートが準備されている。若者のクルマ離れが激しい日本でも、ぜひ参考にしたい部分である。
広大な敷地にでこぼこ道や泥沼などの仕掛けを施したオフロード試運転コース。© Voklswagen
オフロード試運転を体験するビジター。フォルクスワーゲン社のスタッフが同乗しアドバイスをしてくれる。© Voklswagen
ちびっこに大人気のミニカーレース。ミニカーはもちろんビートルだ。© Voklswagen
工場見学と美味しいディナーはいかが?
フォルクスワーゲンの心臓部である工場見学は、公式HPから申し込むことで可能である。英語のツアーもあり、申し込み時に希望言語を記入できる。ハイテク化された生産工程のシステムや、誇りをもってクルマを組み立てる従業員の姿、広大な敷地など、フォルクスワーゲンの本社に来たらクルマが生まれる現場を目に収めるのはマストではないだろうか。
煙突の立ったレンガの建物が生産工場。手前の半円柱の建物がリッツ・カールトンである。© Voklswagen
敷地内に宿泊するなら高級ホテル、リッツ・カールトンがおススメだ。このホテルは、フォルクスワーゲン社が各国のゲストを迎えるためにも使われている。
デザイナーのアンドレ・プットマンによるパステル調のデザインルーム、アフタヌーン・ティーが愉しめるティーラウンジ、アメリカンスタイルのバー、軽食を供するデリ、プールやサウナがついたスパなど充実した施設と、ゲストをリラックスさせてくれるさりげないおもてなしの精神で迎えてくれる。ミシュランの3つ星シェフによるグルメレストラン「アクア」は有名で、食事を楽しむためだけに来るゲストも多いという。
プットマンのデザインによるスイートルーム。やさしい色彩のオーガニックな家具を使ったデザインルームで極上の夜を過ごしたい。© Voklswagen
カレーソーセージはクルマより売れ筋
アウトシュタットはテーマパークとは思えないくらいレストランも充実している。ステーキ・レストラン、イートインコーナーがついたパン屋、イタリアンレストラン、フレンチレストラン、パスタ専用レストラン、ベジタリアンにも対応したフレッシュな素材を使ったヘルシーなメニューが充実のフードコート、アイスクリーム・カフェなど、高級レストランからラフなスタイルまで多様なレストランとカフェが軒を連ね、全部網羅してみたくなる。
是非、試していただきたいのが、カスタマーセンター内のセルフサービス・レストラン「Tachometer タコメーター」で食べられるドイツ名物「カレーソーセージ」である。焼きソーセージにカレー粉をまぶし、ケチャップをたっぴりとトッピングしたドイツ人のソールフード(?)で、付け合せのフライドポテトと一緒にいただく。このソーセージ、アウトシュタット内にある精肉店が作ったオリジナルで、2015年には720万本を売り上げたという人気商品なのである。排気ガス不正問題で苦戦しているフォルクスワーゲン社の新車販売台数を上回ってしまっているそうだ。
パン専門店「ダス・ブロート」では、全粒粉やライ麦で焼いた味わい深いドイツの黒パンを試したい。© Voklswagen
クルマ好きはもちろんのこと、建築、グルメ、ホテルなど子供も大人も楽しめるアウトシュタットへは、首都ベルリンからドイツの新幹線ICEで約1時間走った「ヴォルフスブルク駅」に隣接していて、アクセスも優れている。
自動車ファンが胸をときめかせる場所といえば、やはりクルマが生まれる場所、メーカー本社ではないだろうか。フォルクスワーゲンのみならずドイツでは、自動車メーカー本社は、ミュージアム、工場見学、新車の引き取り、レストランなどのサービスを備えた、カスタマーとメーカーが触れ合うオープンな場所であり、家族や友達と気軽に遊びにいくテーマパークとしての役割も果たしている。
協力: Autostadt Media Center
2017年6月26日(JAFメディアワークス IT Media部 荒井 剛)