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ライフスタイル最終更新日:2023.06.19 公開日:2018.12.28

京都のお雑煮はポタージュ? 京都の白味噌に迫る。

古都・京都では白味噌の雑煮で新春を祝う。京都人気とグルメブームの相乗効果もあって、最近では多くの人に知られている京都の白味噌。地元では雑煮だけでなく、一年中多彩な味わい方で親しまれている京都の特産品「白味噌」の魅力を紹介しよう。

古都・京都では白味噌の雑煮で新春を祝う。京都人気とグルメブームの相乗効果もあって、最近では多くの人に知られているが、全国的に見れば京都の白味噌は、それほど一般的な食材ではないといえるだろう。地元では雑煮だけでなく、一年中多彩な味わい方で親しまれている京都の特産品・白味噌の魅力を紹介しよう。

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その名の通り、白味噌は色白なのが特徴。京都の食を支える調味料だ。

白味噌雑煮は味噌汁というよりポタージュと心得よ!?

京都の白味噌雑煮は、丸餅入りのシンプル仕立て。丸餅以外の具は雑煮大根、里芋が定番。京人参を加えることもあるが、京料理のみやびなイメージとは裏腹に彩りは乏しい。日本各地の雑煮に比べても、見た目は「なに、これ、地味!!」の世界だ。そして、ひとくち食べてその甘さに「なに、これ、甘い!!」と驚かれることも多い。ベースの白味噌がそもそも甘いのだから、当然といえば当然なのだが。

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京都の白味噌雑煮の一例。昆布だしが基本だが、かつおをトッピングすることも。上の写真は大根を拍子切りにしているが、「具はすべて丸くする」といったしきたりもある。

 一般の味噌の塩分は10~12%程度のものが多いが、西京味噌とも呼ばれる京都の白味噌の塩分はおよそ5~7%。その中でも「極上」や「特製」といった言葉を冠した製品では、麹の量を多くし、塩分量4%以下という極甘口のものもある。 京都の白味噌雑煮には、その甘い味噌をたっぷり使うのがならわしだ。

ちなみに、京都出身の筆者が祖母や母親から受け継いできた、雑煮における白味噌の使用量は、同じ関西である神戸出身の夫でさえ「異常な量だ」と長年言い続けているほどだ。そのため、今回の記事を書くにあたって、京都とその近郊の白味噌で有名な醸造元3つに電話して「おたくの白味噌でお雑煮を作りたいのですが、味噌はどのくらいの量を使えばよいでしょう?」と尋ねてみた。その結果は以下のとおり。


醸造元A あっさり仕上げたい時には普通の味噌と同じ程度でもいいですが、お雑煮は濃いめにした方がおいしいです。京風はかなり濃いめです。

醸造元B 通常品は他の味噌と同じか心持ち濃く。上級品は塩分控えめなのでたっぷり使ってください。

醸造元C お雑煮には最上クラスの味噌をまったりとろりとなるまで加えてください。目安はだし汁500ccに対して最低でも200g以上です。


ついでに京都の友だちにも尋ねたところ「お雑煮だけは上等の白味噌をてんこもりつこてる」そうだ。ほら、これが正しいのだ!

筆者宅では雑煮に毎年、醸造元Cの味噌(塩分3.4%)を使っているが、今回使用量を改めて確認しながら作ったところ、だし汁500ccに対して白味噌を230g程度加えていた。さらに丸餅も溶け加減にするので、うちの雑煮は「とろとろ」よりも「どろどろ」に近かったりする。

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左は一般的な味噌の使用量で作った白味噌汁。右は醸造元Cの推奨する量で作ったお雑煮用のもの。色だけ見てもほとんど別物だ。

 上質の白味噌を手に入れたら、白味噌雑煮は味噌汁ではなくポタージュだと考え、目いっぱい濃く作って京都の味を楽しんでほしい。

もし、現地で一流の白味噌雑煮を味わってみたいなら、ミシュラン三つ星の料理店『なかむら』(京都市中京区)に訪れてみるのもよいだろう。この店のスペシャリテのひとつ「白味噌の雑煮」は、正月だけでなく一年中味わうことができる。出汁を使わず水だけで練り上げるという一子相伝の作り方で仕立てられた白味噌が使われており、洗練きわまる一品だ。ただし、雑煮だけを注文するわけにはいかず、昼でも予算2万円程度からという高級店であることも付け加えておきたい。手軽な予算で、通年単品注文できるプロ仕様の白味噌椀を味わいたいなら『志る幸』(京都市下京区)もおすすめだ。

白味噌がなければ京料理は作れない。

京料理に白味噌がよく使われているというと「味噌汁以外のどこに?」と思われるかもしれない。だが「木の芽和え」「賀茂茄子田楽」「魚の西京漬け」といったおなじみの京料理、あるいは、淡水魚をよく食べる京都ならではの「鯉こく」「ふなの子まぶし」などにも白味噌は必須の調味料なのだ。

ところで、白味噌そのものだけでなく、白味噌に柚子を合わせた「柚子味噌」というものもあり、京都ではいにしえからの名産となっている。『八百三』という柚子味噌の専門店はなんと1708年創業。柚子味噌は味噌汁用ではなく、温かいご飯や豆腐、ふろふき大根などに添えて味わう。ジャム代わりに使う人もいるが、実は筆者もそのひとりだ。このように、京都では白味噌の豊かな味わいが、さまざまなスタイルでたしなまれている。

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自家製の柚子味噌。白味噌に柚子の果皮や果汁、みりんなどを加えて作ったもの。

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白味噌は、あの和菓子にもたっぷり使われている!

白味噌はお菓子の材料としても大活躍!

もうひとつ、京都では白味噌は菓子の材料として必要不可欠であるということも、この機会にぜひ知っていただきたい。まずは新年に行われる初釜の茶事で用いられる「花びら餅」。正月の菓子として和菓子店などでも販売されるが、延ばした餅の中に白味噌餡が包まれている。端午の節句の柏餅も、京都ではつぶ餡・こし餡のほかに、白味噌餡のものがあり「柏餅は白味噌餡でなければ!」という人も少なくない。この他、今宮神社の名物「あぶり餅」(きな粉をまぶした小粒の餅を竹串に刺し、炭火であぶった後に白味噌のタレを添えたもの)、和製パウンドケーキのような「味噌松風」など、京都の銘菓には白味噌の風味を生かしたものが実に多い。

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形もユニークな花びら餅。甘く煮たゴボウが包まれているのも大きな特徴だ。京都でも1月にしか食べることができない和菓子。

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京都で柏餅を買おうとして、「餡?お味噌?」と聞かれて驚いたという人も。右は今宮神社のあぶり餅。こちらも歴史に彩られた京都のおやつだ。

本当においしい白味噌を選びたいならここがポイント!

ところで、白味噌であればどれも同じかといえばそうではない。風味豊かな白味噌を味わってみたいなら、購入前に成分表示を確認して欲しい。できれば、原材料が米(米麹)、大豆、塩だけのもの。水あめや糖類、色調整のための漂白剤や着色料を使わず、塩分控えめで米麹の甘さが生きているものを選ぶのがおすすめだ。そのような白味噌なら、甘みが強くても食べ飽きずたっぷり使えるし、西京漬けにしても塩辛くならず、素材の味をひきだしてくれる。さらに、一般的には高価だが「最高級の白味噌を」というのであれば、米や大豆、塩の産地まで吟味してみるのも良いだろう。塩分が少ない分、ほかの味噌に比べて日持ちしないが、白味噌は冷凍保存が可能。使い切れないと思ったら小分けして冷凍してしまおう。

今まであまり白味噌に縁がなかった人も、こっくり甘みのある味噌がおいしく感じられる冬の季節にこそ、白味噌ライフを始めてみてはいかがだろうか。白味噌雑煮や京料理に腕をふるうもよし、普通の味噌の代わりに白味噌をちょっと多めに使う「濃厚白味噌鍋」なら、簡単に作れて、体も温まるのでおすすめだ。

2018年12月19日(雨輝・松本葉子)

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