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ライフスタイル最終更新日:2024.04.22 公開日:2024.04.24

なぜ「車にかけるお金」は2位から18位に転落したのか?──教えて、博報堂生活総研さん! 30年間の観測データで分かった、若者のクルマと恋愛事情。<前編>

この30年間で若者たちの暮らしや価値観はどう変化したのか? 博報堂生活総合研究所の「生活定点」を元に、モータージャーナリストの渡辺敏史が若者のクルマと恋愛事情について探る。今回はその前編をお届けしよう。

文=渡辺敏史

写真=守谷賢一郎

取材協力=博報堂生活総研

いまの若者にとって、クルマは「推し活」のひとつ?

博報堂生活総研の近藤裕香さん(中央)、植村桃子さん(右)。クルマの話題に明るい渡辺敏史(左)がくわしく話を聞く。

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若者の〇〇離れという話が出て久しい感もあるが、Z世代などと括られる20代の若者は、果たしてクルマについてどのような意識をもっているのだろうか。それを印象ではなくファクトベースで分析できるヒントを得られるのではないかと、今回は博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」のデータを元に話を伺った。

近藤 まず、「生活定点(https://seikatsusoken.jp/teiten/)」のまとめているデータを基に話をしたいと思います。これは1992年から30年間、2年に1回の頻度で行っている時系列調査で、同じ内容項目を問い続けることで意識や価値観の変化を可視化しようというものです。但し、調査の対象が東名阪といった都市部でして、地方の事情とは異なる部分もあることは考慮すべきポイントになります。

──なるほど。ちなみに1992年というのはバブル後とされるタイミングですね。

近藤 そうです。でも、実際には弾けたといわれるほどの実感はまだ薄かった頃ではないでしょうか。

──そうですね。個人的にはその時代を横目に見てきましたが、世の中的にはまだ浮かれ気分が残っていたような覚えがあります。バブル後の創業とされるジュリアナ東京の人気がピークだった時期ですよね。

近藤 株価や地価的にみると1990年から下降基調になったわけですが、崩壊の象徴的な事象とされる銀行の破綻や証券会社の廃業が起こったのが1997年ですから、その間は退潮の気配をなんとなく感じていたというのが一般的なマインドだったのではないでしょうか。

──その1992年というのは、クルマは若者にとっては憧れの対象でありモテるためのツールであり……と、まぁ何はなくともそれを持つことが人生目標たり得ていた時代ではないかと思うんですが。

近藤 それについて、我々の調査では「今、何にお金をかけていますか」という項目があります。生活者にお金をかけている対象について、様々な選択肢から当てはまるものを選んでいただくことで、できるだけ統一的・継続的に経過観察しようというものです。と、ここに興味深い傾向が現れてますね。1992年、この問いに対する20代の答えの2位がクルマなんです。ちなみに1位は交際、3位は外食ですね。

博報堂生活総研の「生活定点」とは、1992年から30年間、2年に1回の頻度で同じ内容項目を問い続ける時系列調査。(画像:博報堂生活総研)

「お金をかけているもの」ランキング。30年前の20代はクルマにお金をかけていたが……。(画像:博報堂生活総研「生活定点」のデータをもとに作成)

──見事に想像通りのアンサーです。

近藤 これが、2002年では11位、2012年では17位と下降していきます。そして2022年は18位です。

──あちゃー……。つまりデータ的には現在の20代でもクルマにお金をかける人は減り続けているわけですね。今年の調査で下げ止まるか否かの踏ん張りどころというわけですか。でも、僕のようにクルマ側に近い者の実感でいえば、今の20代の方々の中には、すごくクルマにアツい方も増えている印象があります。ゴリゴリのローン組んででも欲しいクルマがある、或いは買ったなんて会話は、10年前よりも頻繁に交わすようになりましたし。

近藤 2002年以降は「趣味」という答えが1位をキープしてまして、その割合も年々伸びているんです。クルマも実用というより趣味の一環として捉えられているのかもしれませんね。全体的にみると、いわゆる「推し」の多様化や深化みたいなところがあるのではないかと分析できます。

──なるほど。程度の差はあれども、どの趣味もお金はかかりますもんね。

若者に不人気なのはドライブだけじゃない? スノボ、ゴルフも下降中

WEB会議での参加となった博報堂生活総研の近藤さん(左)。日本の若者の趣味嗜好や行動はこの30年間で大きく様変わりした、と話す。

近藤 これに関連するデータとしてみていただきたいのが、20代に聞いた「よくする趣味・スポーツ」のランキングなんです。これ、先の結果とほぼ連動しているのですが、1992年は自動車・ドライブが1位なのに対して、2022年はやはり18位なんですね。

「よくする趣味・スポーツ」ランキング。30年前の20代は自動車・ドライブだったが……。(画像:博報堂生活総研「生活定点」のデータをもとに作成)

──1992年の20代は、5割以上が趣味を問われればクルマ! と答えていたんですね。今やそちらの方が不自然な感があります。

近藤 じゃあスポーツ系が伸びているのかといえば、スキー・スノボやゴルフも同様に下降しています。

──その辺りはクルマとの親和性が高いスポーツではありますが、テニスや水泳といったギアがライトなスポーツも下降してますね。代わって上がっているのは何なんですか?

近藤 2022年の1位は動画視聴です。20代の回答率は62.6%ですね。続いて映画鑑賞、漫画アニメ、音楽鑑賞、モバイルゲームと続きます。

──これ、コロナ禍での生活様式が影響しているところもあるんですかね?

近藤 おっしゃる通りで、ちょっと端的に振れたところもあるかもしれませんが、傾向として趣味がインドア側に寄っていることは顕著に現れていますね。ちなみにインドア派かアウトドア派かといえば、20代は半数以上がインドア派だというデータもあります。2000年代まではアウトドア派の方が多かったんですが、この10年でみても様相が随分変わりました。

──この10年に起こった変化といえば、スマホの普及ですか。

近藤 そうです。ネットの発達や浸透、スマホの普及によって、人々の行動が大きく変化しました。極端な話、移動しなくても家にいながらにして世界の人々とコンタクトがとれる、世界の情報にアクセスできる、そういう環境が整ったんですね。

──確かに、この環境のおかげでコロナ禍もなんとか切り抜けられた感はありますし、働き方やコミュニケーションの手段も変わったのは間違いないんでしょうね。でも、一方で体験することの価値が見直されたという側面もあるんじゃないですかね? 交際なんて最後は対面でしか成立しませんし。

近藤 そこについては、私も衝撃を受けたんですけど、こんなデータがあるんです……。

後編へ続く

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