琵琶湖に第3の橋ができる!? 琵琶湖大橋・近江大橋に続く架橋計画はあり得るか。【いま気になる道路計画】
琵琶湖の南湖には「琵琶湖大橋」と「近江大橋」がある。しかし、北湖には横断できる橋がひとつも存在しない。もし北湖に橋ができたら? 琵琶湖大橋・近江大橋に続く第3の架橋計画はあり得るか、既存の橋と比較しながら可能性を探ってみる。
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なぜ琵琶湖の北湖には橋がない?

米原側から長浜市街を眺める。写真の右側は長浜市街、左側は琵琶湖。(c) Masaru Masuda - stock.adobe.com
滋賀県の琵琶湖には、東西をつなぐ橋として「琵琶湖大橋(大津~守山)」と「近江大橋(大津~草津)」が架かっている。いずれも琵琶湖の南端部にあたる「南湖」の横断道路で、県庁所在地の大津市と対岸にある都市とのアクセス向上に貢献している。
南湖には橋が2つもあるというのに、なぜ北湖には橋がひとつもないのだろうか。近江今津と竹生島(無人島)を経由して長浜・彦根を結ぶ定期船の航路はあるものの、観光向けで車両の乗船も不可。そのため、北湖を車両で横断することはできない。近江今津から長浜や彦根に向かうには、琵琶湖の北側を国道161号から国道303号を経由して国道8号へと大回りすることになる。

琵琶湖大橋と近江大橋はいずれも琵琶湖の南部を横断する道路である。画像はKURU KURA編集部が作成。
もし、琵琶湖の北湖に琵琶湖大橋や近江大橋のような長大橋をつくり、車両で横断できるようになれば便利になるのに……。琵琶湖周辺の居住者ならば、一度は思ったことがあるのではないだろうか。荒唐無稽な考えのようにも思えるが、実際、国内には「津軽海峡大橋」「東京湾口道路」「錦江湾横断道路」のような夢のある海峡横断道路構想がいくつも存在している。
果たして、琵琶湖の北湖を横断する道路(仮に北湖大橋とする)には、構想に足り得る実現可能性があるのだろうか。現存する琵琶湖大橋や近江大橋と比較しながら可能性を探っていこう。

北湖大橋の想定ルート。画像はKURU KURA編集部が作成。
南湖と北湖の延長を比較
北湖大橋は定期船の航路になぞらえて近江今津~長浜間としよう。Googleマップによると、近江今津駅付近の県道333号から県道331号の姉川大橋付近までの延長は約16kmとなっている。南湖の琵琶湖大橋は延長1.4km。近江大橋は延長1.29km。比較すれば、北湖に長大橋を架けるのがどれだけ困難かがわかる。
南湖の琵琶湖大橋は延長1.4km。近江大橋は延長1.29km。この他、明石海峡大橋は延長約3.9km、関門橋は延長1.68km。北湖大橋の推定延長16kmのハードルは高いように感じられる。しかし、東京湾アクアラインの延長は橋梁部と海底トンネル部を合わせて15.1kmと、近江今津~長浜間の16kmに肉薄しており、構想としてはあり得る数字といえるかもしれない。
南湖と北湖の水深を比較
次に南湖と北湖の水深を比較してみよう。水深が深いほど架橋の技術的な難易度は高く工費も嵩むことになる。南湖の水深は平均約4m。これに対し、北湖の水深は平均約43m。北湖の水深は南湖の水深のおよそ10倍となる。
参考として、アクアラインの最深部は海面下60mである。水深だけみれば北湖大橋をつくる技術はすでにありそうだが、莫大な工費を要することは容易に想像できる。
南部と北部の交通需要を比較
さらに、南湖と北湖の交通需要を比較してみたい。滋賀県道路公社によると、琵琶湖大橋の通行台数は3万3582台/日、近江大橋の通行台数は3万2559台/日(いずれも平成24年度の平均値)となっている。
琵琶湖大橋と近江大橋は、滋賀県の県庁所在地である大津市を経由し、西側は京都・大阪・神戸、東側は四日市や名古屋の大都市をつないでおり、経済面や産業面で果たす役割も大きいといえるだろう。
北湖大橋は東側の長浜、米原、彦根に人口は集中しているものの、大都市とのダイレクトアクセスルートにはならず、南湖の2橋と比較して通行台数を見込めない可能性もあるかもしれない。

北湖大橋と琵琶湖大橋・近江大橋を比較すると、南湖と北湖では環境が違う点などが浮き彫りとなる。画像はKURU KURA編集部が作成。
以上のことから、北湖大橋は技術面での難易度が相当高く、この時点で実現可能性が極めて低いことがわかった。したがって、高度な技術と莫大な工費を注ぎ込んで建設したとしても、大きな交通量を期待できないことから、コストとベネフィットは見合わないといえる。琵琶湖の北側の道路を整備してアクセス性を高めていくのがベターだろう。
ちなみに、戦後の黎明期には、今回と同様の話題があがったともいわれている。もっとも、当時の土木技術では琵琶湖大橋を建設するので精一杯であったので、プロジェクトを立ち上げたとしても技術的な観点から計画はとん挫していたただろう。
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