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最終更新日:2024.05.11 公開日:2024.05.10

夢の『島原天草長島架橋』で長崎・熊本・鹿児島をつなぐ! ふたつの長大橋は何故できない?

長崎・熊本・鹿児島の県境をまたぐ道路網はなく、車両は渡船するしかない。もし、島原と天草を隔てる「早崎瀬戸(海峡)」と天草と長島を隔てる「長島海峡」に長大橋を架ける『島原天草長島架橋』の構想が実現すれば、九州西岸部のアクセスも向上するはず。何故、ふたつの長大橋はできない?

文=KURU KURA編集部

資料=島原・天草・長島架橋建設促進協議会

長崎・熊本・鹿児島の県境はクルマで移動できない!

令和3年7月1日時点の九州の道路の整備状況。着実に整備は進められている。(画像:国土交通省九州地方整備局の資料を元に作成)

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九州の道路整備は半世紀で着実に進められてきた。北九州道を皮切りに九州道、関門橋、宮崎道、長崎道、大分道……と、供用されていき、九州本土西側は九州道と南九州道の高規格道路網で結ぼうとしているところだ。

しかし、現時点で、長崎、熊本、鹿児島の県境をまたぐ道路網はない。そのため、長崎-熊本-鹿児島間の車両の往来は、島原の口之津と天草の鬼池を結ぶ「島鉄フェリー」や、天草の牛深と鹿児島の長島を結ぶ「三和フェリー」で渡船しなければならず、目と鼻の先のはずなのに、移動は半日を要しており、九州においては、九州道や南九州道の整備で恩恵は受けられていない。

もし……島原-天草間の早崎瀬戸海峡と、天草―長島間の長島海峡を長大橋でつないだら、渡船に頼らず、九州西岸部を縦断できるのに。この「もし」を具現化した構想は、かねてから存在している。それが「島原天草長島架橋」だ。

島原天草長島架橋で九州の西岸部をつなぐ!

島原天草長島架橋の想定する路線図。早崎瀬戸(海峡)と長島海峡に長大橋を架けて縦軸の道路網を築く。

「島原天草長島架橋」の構想は、島原-天草間の早崎瀬戸海峡と天草―長島間の長島海峡を長大橋でつなぎ、長崎県南島原市深江町から鹿児島県阿久根市まで、約110kmの高規格道路をつくるというもの。島原天草長島架橋の整備により、長崎市-鹿児島市の所要時間は、約7時間5分から約3時間35分と、約3時間30分も短縮し、渡船に依存していた九州西岸部の人流・物流に大きく寄与するとみられる。

海峡横断道路としては、どれほどの事業規模となるだろうか。早崎瀬戸(海峡)の海峡幅は約4.5km、長島海峡の海峡幅は約2.0km。明石海峡大橋で本州と四国をつなげた明石海峡の海峡幅は約4.0km。島原-天草間は明石海峡大橋を上回る大事業になると予想される。

大規模な道路事業だが、これまでの日本の土木技術をもってすれば、決して、実現できない構想ではないだろう。それなのになぜ、「島原天草長島架橋」は事業化しないのだろう?

何故できない? 島原天草長島架橋

島原の口之津港から早崎瀬戸(海峡)を望む。長大京はこのあたりにできるか。(画像:(c) KEN ​Yamamoto - stock.adobe.comを元に作成)

長崎、熊本、鹿児島の三県は、島原・天草・長島架橋建設促進協議会を立ち上げるなど、島原天草長島架橋の実現に向け、積極的に取り組んでおり、現在も、海峡横断プロジェクトの早期凍結解除を要望しているものの、事業の進展はみられていない。

長大橋を2本、そのうち1本は、明石海峡大橋を上回る事業規模となるものとなれば、巨額の建設費が必要となることは想像するに難くない。このコストに対してベネフィットはどうだろうか。つまり、開通後、採算が取れるか。どの道路事業にも立ちはだかる課題であるが、コストに対してベネフィットを見込めていないことが考えられる。

そのうえ、島原や天草の付近は、豊かな自然環境を維持している地域である。特に天草は「イルカの聖地」ともいわれる、イルカの生息地として知られている。豊かな漁場であった、明石海峡に長大橋を架けるにあたっては、環境保全も大きな課題となっていたが、島原天草長島架橋でも、十分な調査と配慮が必要となることは間違いない。その点も、事業化の課題となっているのかもしれない。

コストとベネフィット、それから、環境の課題は立ちはだかるものの、道路事業の実現に向けての活動は積極的である。地元の機運を高めれば、事業化に至る日も、もしかしたらくるかもしれない。

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