四国と関西をつなぐ「紀淡海峡大橋」はいつできる? 新たな本四連絡橋で関西圏に環状道路網の誕生なるか。
紀州と淡路島を隔てる紀淡海峡に「紀淡海峡大橋」をつくれば、関西圏を環状の道路網でつなぐことができる。関西の交通を大きく変える、4本目の本四連絡橋が誕生する日はくるのか?
大阪の南部と四国を最短で結ぶ道路網はない
本州と四国を結ぶ明石海峡大橋、大鳴門橋、瀬戸大橋をはじめとした本州四国連絡道(以下、本四連絡橋)で、本州側の兵庫県、岡山県、広島県と、四国側の徳島県、香川県、愛媛県のアクセスは飛躍的に向上した。
しかし、紀淡海峡を渡る連絡橋はなく、大阪の南部と四国を最短で結ぶ道路網はないため、大阪の中心地ならいざ知らず、関西国際空港などのある南側から四国を目指す場合、阪神高速湾岸線や阪和道で北上し、本四連絡橋で南下しなければならない。地図上では近いように見えるかもしれないが、想像以上に距離もあれば時間もかかる。
和歌山港と徳島港を結ぶ「南海フェリー」など、フェリーで渡船するという選択肢もある。しかし、所要時間だけいえば、本四連絡橋を利用したほうが早く着く。
当然、本四連絡橋のできた今でも、大阪と四国をつなぐ「海峡横断道路」を望む声は根強い。場所は大阪・和歌山と淡路島の間を隔てる紀淡海峡(海峡幅約11km)。ここに、長大橋をつくる「紀淡連絡道路」の構想である。
第4の本四連絡橋をつくる「紀淡連絡道路」構想
紀淡連絡道路の構想は海峡幅約11kmの紀淡海峡を横断し、和歌山市と洲本市(淡路島)をつなげる「紀淡海峡大橋」を建設するもので、延長は約40kmにのぼるとされる。
紀淡海峡大橋は友ヶ島の「地ノ島」と「沖ノ島」の二島を経由する長大橋となる。関西側は阪和道と京奈和道、淡路島側は神戸淡路鳴門道につながる。瀬戸大橋(瀬戸中央自動車道)は全長37.3km、瀬戸内しまなみ海道(西瀬戸自動車道)は全長59.4km。同規模の大事業となるだろう。
紀淡連絡道路が実現すれば、交通と物流の集中する大阪湾の臨海部の混雑緩和や、関西国際空港、大阪国際空港、神戸空港と関西の都市とのアクセス向上につながるとされている。特に、関西国際空港は、旅客利用も国際貨物の取り扱いも盛んだ。ここから四国までの距離と時間が大幅に短縮されることで、観光促進や国際貨物の輸送力増大にもつながるとみられる。
紀淡連絡道路は、1991年(平成3年)に建設省(現国土交通省)の調査もはじまり、1992年(平成4年)には、周辺市町村で構成する「紀淡海峡連絡ルート実現期成同盟会(後、紀淡連絡道路実現期成同盟会に変更)」を設立、1993年(平成5年)には「第11次道路整備5箇年計画」で大阪湾環状道路の事業の具体化が明示されるなど、平成のはじめは、間違いなく紀淡連絡道路の構想に勢いがあった。
しかし、2008年(平成20年)には、「国土形成計画(全国計画)」にて長期的視点で取り組むと記述され、事実上の凍結をむかえることになる。なぜ、紀淡連絡道路は事業化できなかったのだろうか。
紀淡連絡道路の実現を阻んだものは?
紀淡連絡道路の事業化を阻むのは、どの道路の事業にもいえることだが、「コスト(費用)」と「ベネフィット(便益)」であろう。これだけの長大橋をつくるのであれば、本州四国連絡橋の各路線と同程度、あるいはそれ以上のコストを要する、国をあげた道路事業となるだろう。
特に、紀淡海峡は明石海峡と比較して、水深も深く、波も高いため、非常に厳しい環境下での建設を余儀なくされるはずだ。高度な技術を注ぎ込めば、それだけコストもかさむことになる。
果たして、このコストに対して、開通後、それを上回るだけのベネフィットを見込めるのだろうか。現時点の調査では「採算は取れない」から、事実上の凍結となったのだろう。
しかし、紀淡連絡道路は関西の中心である大阪と四国のアクセスを向上させるため、経済効果の期待度もやはり高い。今後の進展を期待したい。
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