交通量調査員が廃止に!今秋からはカメラとAIが交通量を観測
国土交通省が5年に1度行っている「全国道路・街路交通情勢調査」。その調査員らの人手による調査が、この秋から廃止された。人手に代わって交通量の観測を担うのは、常時観測カメラとその映像を解析するAI等である。
CCTVカメラとAIを活用した常時観測化を目指す
歩道に座って道路を眺めながら手元でカウンターをカチカチと計測している人を、見かけたことはないだろうか。なかには、アルバイトで調査に参加した人もいるかもしれない。これは、都市計画や道路計画、商圏調査などのために歩行者通行量や車両交通量の計測を行う調査員だ。国が5年に1度行う「全国道路・街路交通情勢調査」でも、道路の利用のされ方の実態を把握するために、調査員が交通量などをカウントしていた。
この交通情勢調査の調査員が、なんと今秋の調査から廃止されるのだという。国交省が9月に公表した「ICTを活用した新道路交通調査体系検討会」の資料によると、今回の調査から従来の人手による調査を廃止し、CCTVカメラ映像のAI解析を導入するという。ちなみに、本来なら昨年が5年に一度の調査年であったが、新型コロナ感染拡大の影響を踏まえて今年度に延期となっていた。
では、CCTVカメラ映像のAI解析とは、どのような方法なのだろうか。まず、CCTVカメラとは、道路等に設置されている監視カメラのこと。同検討会の資料によると、国交省直轄道路のうち約5200区間において、トラカン(※)やCCTVカメラが既設されており、そのうち約2300区間でトラカン及びCCTVの常時観測が行われている。それらを利用して、交通量調査ができないかというのが、国交省の計画である。
このうち、新しい調査方式となる、CCTVカメラ映像のAI解析による簡易交通量調査については、2020年3月に試行され、以下のような結果であった。
※トラフィックカウンターの略称。道路面に埋設し、通過する車両数を自動的に計測するための観測機器のこと。
試行は、CCTVカメラ映像をもとに、AI解析と目視確認の2つの方法で交通量をカウントし、AI解析した映像が目視確認した結果に対して、差異が10%と5%以内であったカメラの割合が調べられた。
その結果、昼間の自動車交通量の全車種においては、9割以上のカメラで10%以内の観測精度が確保できた。5%以内でも約7割以上のカメラが達成。一方で、夜間や車種別になると観測精度は大きく下がり、二輪車や自転車、歩行者の観測精度はさらに低下した。このことから、自動車で車種を問わず、かつ昼間の交通量の判別であれば、AI解析でも判別可能であることが分かった。また、精度の低い時間帯や車種別交通量も、トラカンデータ等を活用することで補正が可能であった。
国交省道路局企画課の担当者は、前述の結果等をもとに、今秋から調査員を廃止したという。これまでの人手を使った調査では、都市部と地方とで、調査人員に差が出てしまったケースもあったそうだ。しかし、CCTVカメラ等を活用した観測により、人員に左右されないデータ収集が可能となる。
さらに、今後さらにAI解析精度を向上し、常時観測体系を整えたいという。常時観測体系が整えば、現在の5年に一度のデータに頼るしかない状態から大きな進歩となる。交通マネジメントの高度化に役立つことはもちろん、工事や災害時等、緊急時に対応するための迂回誘導、渋滞予測などのリアルタイムの交通マネジメントにも役立てることが可能になる。
同省道路局企画課によると、既に国が管轄する調査対象約7600区間で、9月から順次、この調査方法による調査が開始されているという。また、今後は全国自治体にも協力を呼びかけていく予定だという。