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最終更新日:2023.01.06 公開日:2023.01.06

スポーツカーは永遠だ! フェラーリ最新のオープンモデル「296GTS」に試乗

見た目はクーペ。だけどオープン。フェラーリの新型「296GTS」は、スポーツカー好きを虜にする魔性の魅力を持った1台だ。小川フミオがイタリアで試乗した。

文=小川フミオ 写真=フェラーリ N.V.

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最新の空力技術とクラシカルな審美性

近年のスパイダーモデルと一線を画したとフェラーリ自身が言うデザインテーマを採用したボディ。リアクォーターパネル、バンパー上の排気口、半円状のコンビネーションランプなど魅力的なリアのスタイル。

 イタリアのスーパースポーツカーメーカー、フェラーリが「296GTS」なる新型車を出した。2022年4月に発表されて、私が乗れたのは10月。セダンはSUVに市場を奪われたけれど、スポーツカーは永遠だ。それを確信させてくれる、よく出来たクルマである。

 車名のとおり、2.9リッターの6気筒エンジンを後車軸前に搭載したミドシップの後輪駆動。さらにプラグインハイブリッドで、かつオープン。満充電ならモーターだけで25km走れるなど、書くべき特徴の多いクルマなのだ。

 なによりスタイリングが魅力的。ピニンファリーナがフェラーリのためにデザインしたボディをもって、1963年に登場したミドシップ「250LM」からインスピレーションを受けた、というように、最新の空力技術とクラシカルな審美性がうまくバランスされている──。イタリアで実車を観た際、私にはそう思えた。

 真骨頂はスポーツカーなので走りにある。新開発の2992ccV型6気筒はパワフル。ターボチャージャーで過給されたうえに、電気モーターと組み合わされて、610kW@8000rpmの最高出力と740Nm@6250rpmの最大トルクを発揮する。加速時には電気モーターがトルクを上乗せ。静止から時速100kmまで加速するのに僅か2.9秒というスゴイ数値が発表されている。最高速は時速330kmだそうだ。

オープンエアも楽しめる最高のスタイリング

ハードトップをあげるとクーペといっても通用するスタイル

 加えて魅力的なのが、オープン走行が出来るボディ。スタイリング上の理由であえてハードトップを採用する。ファブリック製の幌のほうが軽いし、かさばらないのではと現場で、旧知のフェラーリのデザイナーに私が確認したところ、「ハードトップでないと、閉めたときにクーペ並みのスタイルが維持できないですから」と答えが返ってきた。それがフェラーリの審美眼なのだ。

 ハードトップは走行中でも14秒で電動で開閉が可能。それにしても、エンジンルームと乗員がいるキャビンとの間のそんなに広くない空間に、よくぞまあ綺麗に収まるもんだと感心させられる。

タイヤ/ホイールは前後とも20インチ

 なにがなんでもハードトップにしなくてはならなかったため、実際の前後長はそんなに長くない。コンパクトに設計されている。そのぶんウインドシールドは長く、ドライバーの頭上に届く。

 おかげで風の巻き込みはとても少ない。サイドウインドウを下げてしまっても(サイドウインドウを上げて走ってもいいのは”カブリオレ”だけというのが私の持論)ほとんど気にならない。頭の背後に「エアロブリッジ」なるものがあったり、空力もそうとう考え抜かれているのだろう。

 インテリアは、居心地がだいぶよい。シートはクッションが厚くないが、座り心地に優れる。私は、地中海のリゾート、フォルテ・デイ・マルミから、アペニン山脈を越えてボローニャ近くのマラネッロまで走った際、5時間のドライブで座りっぱなしだったが、快適でいられた。

新型フェラーリの最大の特長とは

 演出としては、パワープラントが停止中は計器盤が黒一色になることがひとつ。もうひとつは、目覚めさせると、黄色のなかに大きなエンジン回転計が現れる。電気モーターのみで走行しているときは、この大きな回転計が「ゼロ」を指している。

 フェラーリに乗りながら無音というのも、なんだかすごいことだが、上記のように、120km/hで走っているのに回転計が動いていないのも、同時に”こういう時代なんだなあ”と感慨深い思いにとらわれた。

 選択可能なドライブモードで、デフォルト設定のハイブリッドモードを選んだ場合、駆動用バッテリーが規定値を下回ると、エンジンが目覚める。サウンドは素晴らしい。中音と低音がほどよくブレンドされていて、乾いたようなリズムの波を感じさせる。実は「ホットチューブ」とフェラーリが呼ぶエグゾースト音を加工して聴かせてくれる仕組みによるものだ。

 最高出力は8000rpmで、最大トルクだって6250rpmで発生する。レースカーか?というぐらい高回転型のエンジンは、アクセルペダルを踏めば踏むほど、もりもりと力を出してくる。独特のバイブレーションと、足と体で感じる加速感は、内燃機関(エンジン)ならではのもの。ここが、フェラーリの最大の特長と、私は感心させられた。

ホールド性ばつぐんのシートなど、スポーツカーの機能性を満たしつつ贅沢に仕上げられたキャビン

 アウトストラーダに次いで私が走ったのは、アペニン山脈の峠道。いわゆる中速コーナー(比較的おおきめのカーブ)が連続していて、296GTSのためにフェラーリが推奨する理由がよくわかる。

 なぜ楽しいかというと、ブレーキの効きとフィールがとても良いのと、アクセルペダルをぱっと踏み込んだときの加速に優れているからだ。カーブの手前で適度に減速して、カーブの途中から出口に向かってすぱっとという感じで加速。

 ステアリングホイールはごくわずかに操舵するだけで、296GTSはささっとノーズの向きを変えていく。操舵、制動、加速、そしてカーブを曲がっていくときの車体の傾きの制御のうまさ。この反応の素晴らしさよ。最高のスポーツカーだと感じられた。

Ferrari 296GTS
全長×全幅×全高 4565x1958x1191mm
ホイールベース 2600mm
2992cc V型6気筒ターボ+電気モーター(プラグインハイブリッド) 後輪駆動
出力 610kW@8000rpm
トルク 740Nm@6250rpm
変速機 8段F1DCT(ツインクラッチ)
重量配分 フロント40.5%、リア59.5%
最高速度 330kph
加速性能 0-100km/h 2.9秒
     0-200km/h 7.6秒
フィオラノラップタイム 1’21″80

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