WRC最年長優勝者に!47歳ローブ80勝目。開幕戦ラリー・モンテカルロ
2022年の開幕戦ラリー・モンテカルロは、WRC史上マイルストーンとなる1戦だった。まずトップカテゴリーが、WRカーからハイブリッド車の「ラリー1」に変更されたこと。そして、元チャンピオンであるセバスチャン・ローブが最年長記録を更新して優勝を遂げた。その歴史的な1戦を、モータースポーツライターの入江大輔が伝える。
元王者VS現王者。2人のセバスチャンが優勝争い
1月20日から23日にかけて、2021年シーズンの世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロが開催され、Mスポーツ フォードからフォード プーマ ラリー1で参戦したセバスチャン・ローブが勝利を飾った。2位にはトヨタのセバスチャン・オジエ、3位にはMスポーツ フォードのクレイグ・ブリーン。トヨタの勝田貴元はコースオフを喫しながらもラリーを走り切り、8位入賞を手にしている。
ハイブリッド11台によるWRC
今回のモンテカルロは、1997年のWRカー導入以来となる、マシンレギュレーション大変革初戦となった。WRC史上初となるハイブリッドラリーカー「ラリー1(Rally 1)」が、トヨタから4台、Mスポーツ フォードから4台、ヒュンダイから3台と、合計11台が勢ぞろいしている。
ラリー1規定車両は1.6リッターターボに、各チーム共通となるドイツのコンパクト ダイナミクス社製ハイブリッドパワートレインが組み合わせられた新型パワーユニットを搭載。各チーム共に市販車ベースではなく自由度の高いパイプフレームをチョイスし、それぞれトヨタGRヤリス、ヒュンダイi20 N、フォード プーマのエクステリアをまとったニューマシンを投入することになった。
47歳331日のローブが優勝
ラリー1の初実戦となったのは、ドライターマック、スノー、アイスとコンディションが刻一刻と変わり、WRC随一の難しさを誇るモンテカルロ。ラリーがスタートすると、最大500馬力発揮し、従来のWRカーとは全く異なるドライバビリティを持つラリー1のコントロールに多くのドライバーが苦しめられることになる。その中で、僅差の優勝争いを繰り広げたのが、新旧チャンピオンのセバスチャン・ローブとセバスチャン・オジエだった。
序盤から僅差のバトルを繰り広げていたふたりだったが、徐々にペースを上げたオジエが、21.1秒というリードを持って最終日を迎える。ところが、SS16でオジエが左フロントタイヤにパンクを喫して、大幅にタイムロス。これでローブがオジエをかわすと、そのままトップフィニッシュを果たした。ローブは2018年のカタルーニャ以来となる、自身80勝目を記録。さらに、47歳331日での勝利は、ビヨルン・ワルデガルドが持っていた46歳155日というWRC最年長優勝記録を更新している。
モンテカルロの直前までサウジアラビアの砂漠でダカール・ラリーを戦い、2位表彰台を獲得。そこからモンテカルロへと直行し、雪と氷のラリーを戦ったローブは、「最高にうれしいよ! こんな結果になるなんて想像もしていなかった。優勝争いをできただけでなく、最後に勝つことができたからね。あらためて、素晴らしいマシンを用意してくれたチームには、心から感謝している」と、フィニッシュ後に喜びを語った。
フル参戦2年目の勝田貴元は痛恨のコースオフ
4台目のGRヤリス ラリー1をドライブした勝田は、少しずつニューマシンに慣れながらペースを上げ、土曜日のデイ3の段階で5番手に浮上。しかし、降雪・凍結区間のあったSS13で痛恨のコースオフ。さらに側溝にはまりスタックしてしまう。周囲の観客の助けを借りてなんとか復帰を果たしたものの、これで13番手までポジションを落としてしまった。それでも最終日は2度の3番手タイムを刻むなど、ペースを取り戻し、最終的に8位を得た。
「ブレーキング時のちょっとしたミスで、ラリー全体が台なしになってしまい、とてもガッカリしています。ただ、それを除けば、良い内容のラリーでした。新しいクルマについて多くを学び、どのようにドライブするのがベストか、ハイブリッドのパワーをどのように使ったら良いのかを理解できるようになりました」と、勝田は収穫を語っている。
ラリー1に苦労するチャンピオン候補たち
ラリー1という完全なニューマシンで戦われた今回のラリー、上位2名はスポット参戦のドライバーとなり、選手権を争うドライバーの最上位は、3位に入ったMスポーツ フォードのブリーンとなった。一方、チャンピオン候補と目されていたトヨタのエルフィン・エンバスは21位、ヒュンダイのティエリー・ヌービルは6位、オット・タナックはリタイアで、それぞれがトラブルやアクシデントに見舞われた。
<WRC第1戦ラリー・モンテカルロ リザルト>
優勝 セバスチャン・ローブ/イザベラ・ガルミッシュ (フォード) 3時間00分32秒8
2位 セバスチャン・オジエ/ベンジャミン・ヴェイラス (トヨタ) +10 秒5
3位 クレイグ・ブリーン/ポール・ネーグル (フォード) +1分39秒8
4 位 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ) +2分16秒2
5 位 ガス・グリーンスミス/ジョナス・アンダーソン (フォード) +6分33秒4
6 位 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒュンダイ) +7分42秒6
7 位 アンドレアス・ミケルセン/トシュテン・エリクソン (シュコダ※) +11分33秒8
8 位 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ) +12分24秒7
9 位 エリック・カイス/ペトル・テシンスキー (フォード※) +12分29秒2
10 位 ニコライ・グリアンジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シュコダ※) +13分41秒3
・車名の後に※があるのはラリー2
<2022年WRCカレンダー>
第2戦ラリー・スウェーデン 2月24日(木)~27日(日)
第3戦クロアチア・ラリー 4月21日(木)~24日(日)
第4戦ラリー・ポルトガル 5月19日(木)~22日(日)
第5戦ラリー・イタリア サルディニア 6月2日(木)~5日(日)
第6戦サファリ・ラリー・ケニア 6月23日(木)~26日(日)
第7戦ラリー・エストニア 7月14日(木)~17日(日)
第8戦ラリー・フィンランド 8月4日(木)~7日(日)
第9戦 未定 8月18日(木)~21日(日)
第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ 9月8日(木)~11日(日)
第11戦ラリー・ニュージーランド 9月29日(木)~10月2日(日)
第12戦ラリー・スペイン 10月20日(木)~23日(日)
第13戦ラリー・ジャパン 11月10日(木)~13日(日)
・カレンダーは1月24日時点のもの
各チームのハイブリッドラリーカーの詳細な写真は
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