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最終更新日:2023.06.16 公開日:2020.05.28

渋滞ポイントも難なく通過。東京の国道の立体化、2020年度はここまで進む!

国道事務所は、全国各地の国道の建設や修繕などを行う国土交通省の下部組織だ。ここでは、東京、相武、川崎、首都の4つの国道事務所が発表した2020年度の事業概要をもとに、立体化事業が進む東京の国道について紹介する。

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拡幅と立体化事業が進められている国道6号・水戸街道の葛飾区新宿地区(にいじゅくちく)。建物のセットバックが行われている。

 国土交通省では、青森から鹿児島までの45都府県を8つの地域に分割してそれぞれに地方整備局を置き(※1)、河川、国立公園、港湾、ダムなどの国有施設を管理している。地方整備局に置かれている部署のうち、国道の管理を行っているのが国道事務所で、国道に加えて河川の管理も併せて行っているのが河川国道事務所だ。

※1 北海道の国道は国土交通省北海道開発局が、沖縄の国道は内閣府沖縄総合事務局が担当。

 国道事務所もしくは河川国道事務所は、各都府県につき最低ひとつは配置されている。ただし、その都府県の道路網の規模が大きい場合は、ふたつ以上の事務所が分割して管理しているケースもある。たとえば、東京の場合は路線数が多いことから、主な23区エリアの国道を東京、多摩地区を相武、湾岸地区や城南地区を川崎、城東地区を首都と、4つの国道事務所が分担している。ここではその4つの国道事務所が4月に発表した2020年度の事業概要から、東京都内で立体化事業が進められている国道について紹介する。取り上げた路線は、以下の3路線だ。

【交差点・道路の立体化】
国道6号・水戸街道:新宿拡幅
国道14号・京葉道路:亀戸小松川立体
国道357号・東京湾岸道路:辰巳(たつみ)・東雲(しののめ)・有明立体

なお、国道15号・第一京浜の蒲田立体および国道16号・保土ヶ谷バイパスの町田立体は、2020年度も事業中だが、高架自体はすでに開通済みのため、ここでは割愛した。2020年度、蒲田立体では側道の調査設計および電線共同溝工事(無電柱化工事)が(画像1)、町田立体では一般部において調査設計と町田地区の舗装工事が推進される(画像2)。

画像1。赤の点線が、国道15号・第一京浜の蒲田立体を含めた蒲田駅周辺整備事業の区間。プレスリリース「令和2年度 川崎国道事務所の事業概要」より。

画像2。国道16号・保土ヶ谷バイパス(II期)町田立体の事業区間。2020年度は一般部において調査設計と町田地区の舗装工事が推進される。プレスリリース「令和2年度 川崎国道事務所の事業概要」より。

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まずは国道6号・水戸街道の新宿拡幅から

国道6号・水戸街道の下町区間を拡幅&立体化

担当:首都国道事務所
事業化時期:1983年度(金町地区は1970年度)
総事業費:約337億円
2020年度事業費用:7億6800万円
起点:葛飾区新宿2丁目(にいじゅく)
終点:葛飾区金町2丁目(かなまち)
延長:0.9km(完成済みの金町地区1.2kmを含めると2.1km)
事業進捗率:未発表(2017年3月末時点で68%)
車線数:6車線(立体化区間は高架4車線+側道2車線)
計画交通量:4万900~6万9500台/日
完成予定時期:未発表

画像3。首都国道事務所が担当する、国道6号・水戸街道の新宿拡幅事業。6車線への拡幅と、立体化が行われる。

 国道6号は、江戸時代からの五街道には含まれていないものの、日本橋を起点とする伝統ある街道のひとつだ。東京から千葉県の柏市などを経由して茨城県水戸市へと至り、さらに福島を越えて宮城県仙台まで向かう。また都内における国道6号の路線名は、日本橋から台東区までが江戸通り(日本橋近辺はほかの国道との重複区間)、隅田川を渡って墨田区から葛飾区までは水戸街道の名で呼ばれている(水戸街道の名で呼ばれるのは、茨城県土浦市荒川沖まで)。

都内から千葉県へと向かうルートのひとつであることから、葛飾区内で特に交通需要が増すのが、都道318号環状七号線との青砥八丁目交差点から千葉方面だ。通行する車両数が増えるのに加え、青砥八丁目交差点から千葉との都県境である江戸川までは、間にJR新金線(貨物線)、京成金町線の踏切もあり、渋滞の発生しやすい区間となっていた。そこで20世紀にスタートしたのが、車線数を増設すると同時に、立体化によって踏切や主要交差点をオーバーパスするという事業計画だ。

事業区間は、中川を渡った新宿2丁目から江戸川の手前の金町6丁目までの延長2.1km(画像3)。金町2丁目交差点を境にして、東側の金町区間と西側の新宿区間に分けられており、金町区間から工事は進められた。そして1995年に立体化が完成し、高架4車線+側道4車線の8車線化が実現。京成金町線との踏切などをオーバーパスできるようになり、特に下り車線は交通の流れが改善したのである。

しかし新宿地区は、現在も4車線のままであり、その間は上下線どちらもボトルネックとなってしまっている。そこで6車線化し、さらに新宿1~2丁目の中川大橋東詰交差点(※2)をオーバーパスする構造にしようというのが、新宿拡幅事業だ。立体区間の正確な延長は発表されていないが、新宿拡幅事業の延長0.9kmのうち、3分の2程度を占めている。

※2 中川大橋東詰交差点:補助276号との交差点

 またJR新金線については、国道6号がオーバーパスするのではなく、逆にJR新金線が高架となる計画だ。ただし、その実現時期は未定だという。そのため、新宿拡幅については現在、6車線化を優先して作業が進められており、高架に関しては詳細な部分が未決定のようだ。2015年からは、用地が取得できた区間から工事が行われている。

新宿拡幅の総事業費用は約337億円で、2020年度は7億6800万円が投入される。2020年の事業内容は調査設計、用地買収、改良工事だ。事業区間の国道6号に面する建物の多くが建て直しなども含めてセットバックを実施しており、用地の確保が進む。ただし、用地の取得が難しい地区もあり、時間を要しているようだ。開通時期は未発表である。

国道14号・京葉道路の江戸川区・小松川地区を拡幅&立体化

担当:首都国道事務所
事業化時期:1985年度
総事業費:約417億円
2020年度事業費用:7億1000万円
起点:江戸川区松島1丁目
終点:江戸川区大杉1丁目
延長:1.2km(高架部0.9km)
事業進捗率:未発表(2015年3月末時点で33%)
車線数:6車線(高架部4車線+側道2車線)
計画交通量:4万400~6万9300台/日
完成予定時期:未発表

画像4。国道14号亀戸小松川立体事業のルート図。右が首都国道事務所が事業中の小松川地区。首都国道事務所・公式サイト内「国道14号(亀戸小松川立体)」より。

 国道14号・京葉道路はその名が示す通り、東京と千葉を結ぶ東西方向の幹線道路のひとつだ。国道6号・江戸通りおよび都道302号・靖国通りと接続する中央区の浅草橋交差点を起点とし、千葉市まで続く。都内区間は、東京と千葉の都県境である江戸川に架かる篠崎IC(しのざき)までだ(同IC以東の千葉県区間は有料道路となる)。

京葉道路は特に都道318号・環状七号線(環七通り)から内側の交通需要が多く、渋滞も頻発している。国道14号亀戸小松川立体は、そうした渋滞の緩和と、地域の交通安全の向上、沿道環境の改善を図ることを目的に、現道の拡幅と連続立体化を行う事業だ。区間は、旧中川の西に位置する江東区亀戸9丁目から、環七通りから1ブロック西側に位置する江戸川区大杉1丁目までの延長2.5kmである(画像4)。

区間は、並んで流れる荒川と中川に架かる小松川橋を境にして、東西に大きく分かれている。西側は江東区亀戸9丁目から江戸川区小松川4丁目までの約1.3kmで、こちらは東京国道事務所の担当だ。現道拡幅事業は2010年度に完了して6車線となった。ただし、亀戸9丁目交差点(※3)をオーバーパスするための延長0.4kmの立体化事業は現時点で未着手。2020年度の事業概要にも含まれておらず、今後、状況を見て立体化事業を行うという。

※3 都道477号との交差点。

 一方、小松川橋を渡った東側区間である江戸川区松島1丁目から同大杉1丁目までの約1.2kmは、首都国道事務所の担当だ。この区間は一部を除いて4車線のため、ボトルネックとなってしまっている。そのため、6車線化と立体化によって交通容量を大きく増強することができ、渋滞を緩和を実現できるものと期待されている。区間をI期とII期に分け、現在は西側のI期を重点的に事業が進められている。

立体化は、延長1.2kmのうちの0.9kmで実施され、その間は高架4車線+側道2車線となる。計画では、都内主要渋滞箇所である東小松川交差点(※4)と、そこから東へ500m進んだ中央二丁目交差点(※5)をオーバーパスする構造だ。

※4 東小松川交差点:ここでもうひとつの国道14号である千葉街道が北に分岐。そしてここから南に向かって行くのが都道308号・船堀街道だ。同交差点は都内主要渋滞箇所のひとつとされており、2016年に関東地方整備局から発表された再評価結果によれば、損失時間は297万8000人時間/年・km。
※5 中央二丁目交差点:区道・同潤会通りとの交差点。

 2020年度は7億1000万円の事業費用を投入し、調査設計、用地買収、改良工事を進めると同時に、中川と東小松川交差点の間に位置する小松川境川親水公園上に架かる境川橋の架替工事が進められる予定だ。境川橋の架替工事は用地取得が遅れたため、当初は2020年度に工事完了の予定だったが、2022年度に伸びている。

国道357号・東京湾岸道路の辰巳・東雲・有明地区の交差点を立体化して交通容量を増強

担当:川崎国道事務所
事業化時期:1968年度(東京湾岸道路の事業化年)
総事業費:約5083億円(※6)
2020年度事業費用:15億3000万円(※6)
対象交差点:辰巳、有明二丁目、東雲
延長:
事業進捗率:未発表(2019年3月末時点で60% ※7)
車線数:未発表(4~8車線以内)
計画交通量:1万2400~9万6900台/日(※8)
完成予定時期:未発表

※6 国道357号の東京区間のうち、川崎国道事務所が受け持つ区間の、多摩川トンネル、東京港トンネルも含めた川崎国道事務所の事業費用。
※7 東京区間全体の進捗比率
※8 東京区間全体における計画交通量

画像5。国道357号の東京区間のルートと渋滞および事故状況。関東地方整備局による令和元年度第4回・事業評価監視委員会開催結果の資料「一般国道 357号 東京湾岸道路(東京区間)」より。

 国道357号・東京湾岸道路は、千葉市を起点として横須賀市までをつなぐべく現在も建設が進められている、総延長約79.8kmの予定の幹線道路だ。重要港湾施設や羽田空港などを結んでいることから、交通需要がとても多いことが特徴である。総延長があることから、西から横浜、川崎、首都、千葉と4つの国道事務所が分担する。

交通需要の多さに対応するため、自動車専用部を設けて最大8車線としている区間もあり、首都圏でも屈指の交通容量を誇るのが国道357号だ。しかし自動車専用部が未整備の区間もあり、そうした区間では旅行速度の低下が課題となっている。東京港トンネルから東側の区間(江東区~江戸川区)で自動車専用部が未整備なのは、東から辰巳、東雲、有明の3地区だ(画像5)。同地区の交差点をオーバーパス構造にすることで、旅行速度を上昇させようとしているのが、辰巳・東雲・有明立体事業である。川崎国道事務所の担当で、2020年2月から事業に着手となった。

国土交通省関東地方整備局が2020年1月17日に発表した、2019年度第4回・事業評価監視委員会開催結果の資料「一般国道 357号 東京湾岸道路(東京区間)」によると、各交差点の立体区間の延長は、以下の通り(画像6)。3か所とも江東区内の交差点である。なお有明立体は、西側にある有明西運河に架かる有明橋も含めて延長0.7kmとしており、同橋の架け替えが行われることも考えられる。

辰巳立体:0.6km(辰巳2~3丁目、都道319号・三ツ目通りとの辰巳交差点)
東雲立体:0.9km(東雲2丁目、都道304号・晴海通りとの東雲交差点)
有明立体:0.7km(有明2~3丁目、都道484号・豊洲有明線に接続する補助315号線との有明二丁目交差点)

画像6。国道357号・東京湾岸道路の辰巳・東雲・有明立体それぞれの延長と同区間の構造。関東地方整備局の2019年度第4回事業評価監視委員会の資料「一般国道357号東京湾岸道路・東京都区間」より。

 この3つの交差点のオーバーパスが実現すると、東京都内の東京港トンネルの東側区間では赤信号による旅行速度の低下は発生しない。一方、西側区間で信号のある交差点は、終点の湾岸環八交差点以外では以下の2か所だ。これら2か所の交差点は、今のところ立体化する具体的な計画はないようである。

京浜大橋北交差点:大田区東海2~3丁目(交差する路線名は不明)
名称不明の交差点:大田区京浜島1~2丁目(交差する路線名は不明)

なお、辰巳・東雲・有明立体事業の2020年度は調査設計の推進のほか、辰巳および有明地区の橋梁下部工事が開始される予定だ。東雲地区の橋梁下部工事は、2020年度は計画されていない。また事業費用15億3000万円は、国道357号の多摩川トンネルの調査設計と羽田地区改良工事、東京港トンネルの調査設計と環境整備工事(※9)と合算したものである。

※9 東京港トンネル:すでに開通済みだが、2020年度も引き続き整備が行われる。


道路の立体化は、歩車分離や車車分離による安全性の向上と、旅行速度の回復(交通容量の増強)を実現する。1日でも早い完成を願おう。

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