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最終更新日:2020.06.12 公開日:2020.06.12

「フタコブラクダ」|第5回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当の吉村さんに、「フタコブラクダ」を解説してもらいました。

JAFメディアワークス IT Media部 上條 謙二

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2つのコブは、非常用のエネルギー貯蔵タンク!?

栄養をコブにため込むことができるフタコブラクダ。多く溜め込んでいるときはコブに張りがあって、栄養がなくなるとたれてくる。

 背中に特有のコブを持つラクダ科の哺乳動物であるラクダには、「ヒトコブラクダ」と「フタコブラクダ」の2種類がいます。現在、富士サファリパークには後者のフタコブラクダがオスとメスを合わせて8頭飼育されているそうです。今回はこのフタコブラクダについて話を聞きました。

 フタコブラクダという動物の特徴は、どんなところにあるのでしょうか?

「砂漠地帯や乾燥した荒地や草原などの厳しい自然環境で暮らしていけるような、体のつくりになっているところです」とフタコブラクダの飼育を担当する吉村さん。背中のコブや分厚い毛皮には、過酷な環境を生き抜くために勝ち得た仕組みが備わっているのだそうです。

「例えば背中にある2つのコブですが、中身は脂肪がにかわ状に固まって溜まったものです。コブの中には水だけが入っていると思われがちですが、実は良質な脂肪(もちろん水分も)が蓄えられており、いざとなればそれをエネルギーとして使いながら長い距離を歩き続けることができます」(吉村さん※以下同)。砂漠や草原で水や食べ物を長い間口にできなくてもへこたれないのはそんな仕組みがあるからです。この背中のコブは一種の貯蔵タンクなので、養分を使ってしまうと張りがなくなってたるんでしまうのだそうです。

 そこで園内のフタコブラクダはどのくらいの頻度で水を飲むのかを尋ねてみると、「1日園内の展示場に出していても水を飲まないことがあります。水が飲めない環境下では、エサである草からも水分がとれることもあって10日以上水を飲まなくても大丈夫です。ただ水を飲むときは一度に100L近く飲むことがあります」とのこと。水の飲みだめが利く体質なんですね。

 それに加えてフタコブラクダが水を長い間飲まなくても平気なのは、水を消費しないための仕組みが体にしっかり備わっているからで、それは尿の様子からもうかがえるのだそうです。

「大きな体なのに尿は一日1Lほどしか出ません。排泄量が少ない上に、回数も少ないんです。排尿の勢いも弱く、ちょろちょろとこぼれるという感じ。当然、出る量が少ないので尿から排出される成分は濃くなって、臭いが強いです」。

 またフタコブラクダは汗によって余計な水分が失われないよう、体温が40℃くらいになるまで汗をかかないそうです。かなり徹底した節水ぶりですね。

まつ毛、耳の穴の毛、鼻の穴の開閉で「防塵対策」

フタコブラクダの体毛は冬に長くなり、夏の換毛期を過ぎると短く褐色に変わる。

 フタコブラクダは、過酷な環境を生き抜くために体を覆う分厚い毛皮もうまく利用しています。フタコブラクダが暮らす砂漠地帯や乾燥した荒地や草原は、冬期の気温がマイナス30度くらいまで低くなる一方、夏には40℃以上の高温になることもある環境です。

「太くて長い毛が密に生えるので保温性は高く、寒さには強いです。雪が積もっていても平気。雨も大丈夫で全く気にしません。また夏になると『換毛』の季節を迎えます。長く伸びた冬毛がズルッとかたまって剥がれ落ちる感じです。夏毛に変わったフタコブラクダは見た目も涼しくスマートになります」。寒さや暑さに対しては、毛皮を使ってうまくコントロールしているというわけです。

 そのほかにもフタコブラクダの体には、砂漠地帯や乾燥した荒地などの環境に適応したつくりが見られます。

「大きな目を砂やほこりなどから守るため、長さが5㎝くらいある太いまつ毛が二重に生えています。耳の穴の中には毛が生えていたり、鼻の穴は人間の瞼のように自在に開閉できる仕組みになっており、砂やほこりが入ることを上手に防いでいます。また足の底は幅広く、2本の指はほとんどつながっています。その理由は、足の指が開いているよりつながって平らな足裏の方が重い荷物や自重で地面に沈みこみにくく、砂漠や荒地で歩くのに適しているからと考えられています(諸説あり)」。

 そんなフタコブラクダですが、歩き方がちょっと独特なことをご存じですか?

「左右同じ側の前後の足をほぼ同時に出す『側対歩』と呼ばれる歩き方です。人間でいうところのいわゆる『ナンバ歩き』のような感じ。体の大きい、足の長い草食動物に共通の歩き方だそうで、長い足がからまないためには向いているのだそうです」。

 もしフタコブラクダを近くで見るチャンスに恵まれたら、歩き方をしっかり観察してみてください。

ツバ吐きは、気に入らない相手への挨拶代わり!?

フタコブラクダのツバ吐きは、身を守るための一種の武器。少量でもかなりの悪臭がある。

「フタコブラクダは換毛期には体が特にかゆいらしくブラッシングをするととても喜ぶんです」と飼育担当の吉村さん。

 ところでフタコブラクダってどんな性格の動物なのでしょうか?

 吉村さん曰く、性格的には温厚な動物とのこと。「調教すれば割とよく懐きます。世話や移動をさせる手間も、他の草食動物に比較してもかからない方ですね」。

 ただその一方、自分の意に沿わなかったり機嫌の悪いときには「ツバ」を吐きかけてくることもあるので要注意とのこと。「そんなに本気で怒っていなかったのでそれほど多量ではなかったのですが、シャンプーのようにすごく泡立ったツバを吐きかけられたことがありました。しかもこれ、すごい悪臭がするんですよ」。このフタコブラクダのツバ吐きは、威嚇や攻撃のときの行動なのだそうです。

 最後にフタコブラクダあるあるについても聞いてみました。

「SUVタイプの車に乗ってサファリゾーン内を監視するのですが、大きい車でも怖がらずに近寄ってきます。しかも遊びで車の飛び出ているパーツを噛むんです。また車のデコボコ具合が丁度いいのか換毛期には体を擦りつけることがあります」。

 フタコブラクダは好奇心旺盛でイタズラ好きな動物なんですね。

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