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クルマ最終更新日:2019.06.06 公開日:2019.06.06

フェラーリ初の量産型PHV、SF90ストラダーレは一体何がすごいのか?

かねてから噂されていたフェラーリ初の量産型PHV(プラグインハイブリッド)が、ついに公開された。その名は「SF90ストラダーレ」。新世代のフェラーリとはいかなるものか。自動車ジャーナリストの大谷達也が、フェラーリ本社のあるマラネロから現地レポートをお届けする。

フェラーリ史上もっとも速い

 5月29日、フェラーリ初の量産型PHV、SF90ストラダーレが同社の本拠地であるイタリア・マラネロで発表された。

 大きなバッテリーとモーターを搭載するPHVは車両が重くなりがちで、機敏さが重視されるスポーツカーとの相性は本来あまりよくない。つまり、既存のスポーツカーにPHVのシステムをただポンと積んだだけでは、ナマクラな走りのクルマになりかねないのだ。

 しかし、フェラーリはF1などで培ってきたテクノロジーをこのSF90にたっぷりと投入。「並みのスーパースポーツカー」どころか、フェラーリ史上もっとも速いモデルを作り上げてしまったのである。

 その事実を示す証拠を、いくつかご紹介しよう。

 エンジンとモーターによる最高出力はなんと1000ps!最高速度は340km/hに達し、0-100km/h加速は2.5秒で駆け抜ける。ちなみに、たとえスーパースポーツカーでも0-100km/h加速で3秒の壁を破るのは容易ではなく、ポルシェでもっともパフォーマンスの高い911GT2 RSでさえ0-100km/h加速は2.8秒でSF90には及ばない。

 さらに、フェラーリのテストコースでもあるフィオラノ・サーキットのコースレコードを保持していたのは新車価格1億6000万円のラ・フェラーリだったが、SF90はその記録を1秒ほども更新する速さを示したという。したがってフェラーリの量産車として史上最速であることは間違いない。

 SF90の速さの秘密はどこにあるのか?

注目のハイブリッドシステム

 キャビン後方にミッドシップされる4.0リッターV8ツインターボエンジンの最高出力は780ps。このエンジンにもさまざまな新機軸が投入されているのだが、注目すべきはこれに組み合わされるハイブリッド・システムで、モーターはフロントに2基、リアに1基の合計3基を搭載。

 基本的にはリア・モーターで発電した電力でフロント・モーターを駆動するのだが、この際、フロント・モーターの出力を左右独立して制御できるようにした。つまり、クルマが自転しようとする力(ヨーモーメント)を生み出し、クルマのコーナリング特性を電子制御できる構成としたのだ。

 ここまでを聞いて「おや?」と思ったあなたは、かなりのスポーツカー通だ。なぜなら、これはホンダNSXに搭載されているスポーツ・ハイブリッドSH-AWDとほぼ同じ原理なのだから・・・。ちなみに同様のシステムを搭載した量産車はホンダ・レジェンド、NSXに続いてSF90ストラダーレが史上3台目となる。

 これだけでもかなり高いパフォーマンスを実現できることは間違いないが、フェラーリはそのポテンシャルをフルに引き出そうとする努力を怠らなかった。たとえば、ボディ構成はアルミとカーボンを組み合わせてスペースフレームを作るというまったく新しい構造。ギアボックスも完全に新設計の8段DCTだが、実はこのギアボックスが車両の低重心化にも大きく役立っている。

 というのも、クルマでもっとも重いパーツであるエンジンを搭載する高さはクラッチのサイズによってほぼ決まるといっても過言ではないのだが、フェラーリはF1の思想を採り入れたまったく新しいクラッチ・レイアウトを導入。その外径は従来型より15mm小さいもので、この分だけエンジンの搭載位置を低くできたという。

 実際、ガラス製エンジンカバー越しにエンジンルームをのぞき込むと、地面にそのまま横たわっているのではないかと思えるほど低い位置にV8エンジンが見える。おかげで、エンジンの上端からエンジンカバーまで40〜50cmはあろうかという空間がぽっかりとできあがっているくらいだ。

発売時期と価格は?

 フェラーリは軽量化のために最善の努力を尽くしたものの、それでもSF90の乾燥重量は1570kgで、同じV8エンジンを積む最新モデルF8トリブートより200kg以上も重い。それでも機敏なハンドリングを生み出すには低重心化がいちばんの近道。

 そのことを確認しようとしてフェラーリの技術陣を率いるCTOのミハエル・ライタスに真意をただしたところ、「そのとおりです。私たちは車両重量の重さを帳消しにするために低重心化を心がけました」と答えてくれたのである。

V8エンジン+ターボ+3モーターで統合最高出力1000psを発揮するSF90。フェラーリでCTOでを務めるミハエル・ライタス氏がプレゼンテーションを行った。

マラネロで開催されたSF90のお披露目イベント。会場にはフェラーリのF1ドライバーのシャルル・ルクレール(左から2人目)のほか、フェラーリのF1チーム代表のマッティア・ビノット氏(右)らも駆けつけた。

 ただハイブリッド化するだけでなく、基本性能を徹底的に磨き上げてスポーツカーの新たなベンチマークを打ち立てようとしたフェラーリ。価格は未発表ながら、「(約4000万円の)812スーパーファストより高く、(約1億6000万円の)ラ・フェラーリより安い」とのことで、おそらく8000〜9000万円ではないかと予想される。

(文・大谷達也)

Ferrari SF90 Stradale|フェラーリSF90ストラダーレ
ボディサイズ|全長4710×全幅1972×全高11868mm
ホイールベース|2650mm
トレッド 前/後|1679/1652mm
乾燥重量|1570 kg
前後重量配分 前:後|45:55
エンジン|3990cc 90度V型8気筒ターボ
エンジン最高出力|780ps/7500rpm
エンジン最大トルク|800Nm/6000rpm
エンジン圧縮比|9.5:1
モーター最高出力|162 kW(220ps)
モーター航続距離|25 km
バッテリー容量|7.9kWh
統合最高出力|1000ps
トランスミッション|8段AT(F1デュアルクラッチ)
タイヤ 前/後|255/35R20 / 315/30R20
0-100km/h加速|2.5秒
最高速度|340 km/h

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