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最終更新日:2019.06.04 公開日:2019.06.04

災害などのもしもの時のトイレを想像してみる。やっぱりエレベーターにはトイレが必要だ!! 【第13回 オフィス防災EXPO】

地震が頻発する日本。停電や故障などで、もしもエレベーター内に長時間閉じ込められたら、トイレは我慢するしかないのか? エレベーターの閉じ込め事故を想定して開発された非常用トイレ「EVキャビネットチェア」を紹介しよう。

JAFメディアワークス IT Media 部 上條 謙二

「EVキャビネットチェア」の幅・奥行は300㎜、高さは500㎜。エレベーターのコーナーに収まるような仕様。イスとして腰かけるのにもちょうどよい。重量は9.8kg(付属品を含まず)、価格は63,000円(税別)。色は3色ある。

 まいにち(株)は、5月29日~31日の3日間、「第13回 オフィス防災EXPO」において「EVキャビネットチェア」を展示した。

もしも、エレベーターの中に閉じ込めれたら、どのくらいの時間、トイレを我慢できますか?

 私はそもそもトイレがとても近いタイプの人間なので、常に「ここでトイレに行きたくなったらどうするか?」を考えている。出かけた先でも、まずチェックするのはトイレの場所。だから移動手段である車や電車(通勤の)に乗っている間は緊張する。またトイレ設備のない閉鎖空間も緊張を強いられる。はっきり言って苦手だ。すぐにトイレに行けないから。

 エレベーターは、その代表的な設備だが、閉鎖時間が短いことで事なきを得ている。しかし、これが災害となったら一気に深刻度は増す。

 2005年2月、中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会が公表した、東京湾北部地震M7.3におけるエレベーター被害想定によれば、エレベーター停止台数は合計で約30万台、エレベーター閉じ込め者数は、1万人以上と算出している(関東1都6県+山梨・静岡県)。また国土交通省の発表データでは、東日本大震災において東京都内で起きた「エレベーターの閉じ込め 84件」の中には、救出まで最大9時間以上を要したケースもあったという(「既設エレベーターの安全確保の促進【日本再生重点化措置要望】(平成24年度概算要求資料)」)。

 災害でエレベーター内に長時間閉じ込められても、安心とゆとりの気持ちを持って、復旧・救助を待つことが理想だ。ただそこにトイレの問題が立ちはだかる。いっそエレベーターの中にトイレを作れば安心なのだが・・・。

通常はイスとして使用、もしものときは非常用トイレに早変わり。

チェア側面の右上にある「開閉ボタン」(丸い部分)を押し込んで「座面シート」を外すと、中層の「トイレボックス」が現れる。イタズラ防止のため、一度、座面シートを取り外すと工具がないと再度開閉ボタンのロックができない仕組みになっている。

こちらが「トイレボックス」。ビニール製の排便袋をセットして使用する。用を足した後は、便凝固剤を振りかける。

下層の「収納ボックス」。災害用トイレセットをはじめ、非常用飲料水や非常用食料など、非常時に必要な物資を収納できる。

 「EVキャビネットチェア」は、エレベーターのコーナーに置ける非常用トイレだ。外見は、エレベーターに設置されたコーナースツールといった感じで、トイレには見えない。知らない人は消火器の格納場所と勘違いするかも。

 シンプルな3層構造で、天板部分の「座面シート」、中層部分が「トイレボックス」、一番下の下層部分は「収納ボックス」となっている。収納ボックスには非常用トイレの処理セット(ビニール袋や便凝固剤など)、非常用飲料水や非常用食料、防寒用のブランケット、懐中電灯や救助用の笛などを収納できる。

 通常は、エレベーター内で高齢者や妊婦、体調が悪い人が腰かけるイスとして使用。非常時には、座面シートを取り外し、中層部分のトイレボックスを取り出して、収納ボックスに入れてあるトイレ用品のビニール袋をセットし、便凝固剤を使用すれば、後処理も楽な簡易トイレとして利用できる。一番下の収納ボックスは安定させるためエレベータに固定設置しておくが、トイレボックスは取り外してどの位置にも自由に配置できるので、排便時に窮屈な姿勢をとることなく利用できる。

 今や、1都3県(埼玉・千葉・神奈川)にいて15階以上の居住世帯は約9.6万世帯(総務省統計局「平成22年国勢調査人口等基本集計」)にも及ぶという。エレベーター付きの集合住宅となると、かなりの世帯数に上るだろう。

 地震が頻発する日本列島だけに、エレベーターの中の防災対応はよりきめ細やかなものが求められる。特にトイレが近い私としては、例えばパーテーションによってプライバシーはもちろん臭いまで防ぐなど、エレベーター設備側にもまだまだ工夫してほしい設備はある。しかし現状のエレベーターでは非常時のトイレについては全く想定されていないことを考えたら、この「EVキャビネットチェア」の設置によって一定の安心感が得られるメリットは小さくないと思うのである。

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