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最終更新日:2019.05.15 公開日:2019.05.15

「クイックアタッカー」や「火災調査車」など。日本最強の装備を誇る東京消防庁の消防車に迫ってみた! その2

日本で最も装備と人員が充実した消防組織、東京消防庁。その2で取り上げるのは、ポンプ車やはしご車といった主力の消防車が活躍するための支援車輌と消火活動の指揮拠点となる指揮車、そして特殊な消防車両などだ。

 2018年4月1日現在、1977台の消防車・救急車を配備する東京消防庁。その中には、8機の消防ヘリ、10艇の消防艇も含まれる。この中に含まれないのが、無人走行放水設備(ロボット消防車)が4組(2台1組)とドローン2台などもある。

 今回は、消防車両のうち、指揮車輌や支援車両など、7種類の車両をピックアップ。撮影は、2019年1月6日に東京ビッグサイトで行われた出初め式およびその一環として実施された車両広報展示にて行った。

2台1組のオフロードバイクで編成される「クイックアタッカー」

2018年1月6日に実施された出初め式で行われた消防演技。そのひとつである「倒壊建物演技」の1場面。最初に機動力を活かして、クイックアタッカーが駆けつけたという設定。

 渋滞の発生している高速道路や、狭くアップダウンの厳しい山間地域など、大型の消防車では現場到着に時間がかかったり、近づくこと自体が難しかったりする場合もある。そうした状況に備え、真っ先に現場に入って初期消火や救助・救急活動を行えるようにと、1997年に結成されたのが消防活動二輪車、通称「クイックアタッカー」だ。オフロードバイク2台1組で編成されている。その通称は、火災に素早く立ち向かい、迅速な消防活動を行うことから命名された。

 2台1組の理由は、それぞれ装備が異なるからだ。I型(1号車)は可搬式消火器具「インパルス銃」を装備。II型(2号車)は、簡易救助器具、消火器、応急救護資機材などだ。主に高速道路の出入り口が付近にある消防署や山間部に近い八王子消防署などに配備されている。

「クイックアタッカー(消防活動二輪車)」。全長約2100×全幅約860×全高約1250mm、ホイールベース1360mm。総重量約160kg。乗車定員1人。排気量249cc・4サイクル空冷単気筒エンジン「G370E」型、最高出力14kW/7500rpm、最大トルク19N・m/6500rpm。深川消防署所属。展示車のベース車両ヤマハ「セロー」2017年式。

I型の装備。可搬式消火器具「インパルス銃」を備える。このときは直接荷台に装備されておらず、黒いキャリングバッグの中に収納されていたようだ。

II型の装備。簡易救助器具、消火器、応急救護資機材などを装備。

広域的な災害時でも指揮本部が運用する「指揮統制車」

「指揮統制車」。全長約8380×全幅約2470×全高約3570mm、ホイールベース3310mm。総重量約1万2400kg。乗車定員12人。排気量7790cc・直列6気筒ディーゼルエンジン「6HK1-TCC」型、最高出力191kW/2400rpm、最大トルク761N・m/1450rpm。神田消防署所属。展示車のベース車両いすゞ「フォワード」2009年式。

 「指揮統制車」は、各種災害現場において指揮本部が運用したり、広域消防支援に用いられたりする指揮系の車両だ。車両総重量14トン級トラックをベースとした高床四輪駆動車となっている。後部に乗員室が架装されており、トイレや給水設備なども装備。

 指揮系の車両としては、ほかにもトヨタ「ハイエース」などの9人乗りワンボックス型車両をベースに、無線機架台や指揮台などを装備した「指揮隊車」もある。

指揮隊車はこのようなワンボックスカーが用いられている。画像は「東京DMAT連携車」。東京DMAT(ディーマット:Disaster Medical Assistance Team)とは、東京都の派遣医療チームのこと。震災などの自然災害、大規模交通事故などの都市型災害の現場に東京消防庁と共に出動し、応急治療、トリアージ(多数の傷病者がいる場合、重症度に基づき判断し、助けられる傷病者を優先して治療を行うこと)、同乗搬送などの救命処置を行う。「東京DMAT連携車」は、東京DMATと連携するための東京消防庁側の指揮車両の1種。

火災現場で発生原因の調査を行う「火災調査車」

「火災調査車」。全長約6100×全幅約2100×全高約2500mm、ホイールベース3550mm。総重量約6200kg。乗車定員10人。排気量4899cc・直列4気筒ディーゼルエンジン、最高出力103kW/2700rpm、最大トルク412N・m/1600rpm。調査課所属。ベース車両未確認。

 火災の発生現場において、その原因を調査するための専用車両。発電機やエアコンプレッサーなどを初め、調査に必要な資機材を搭載している。反転式の座席および折り畳み式のテーブル、窓にはプライバシーを確保するためのカーテンなどが用意されており、関係者からの状況聴取や供述書の作成、資料分析などを行えるようになっている。普通免許(AT限定)で運転可能。調査現場で電動工具類を使用できるよう、車内と車体側面にAC100Vコンセントも備えられている。

車両後部に設けられた電動ウインチの荷揚げ能力は100kg。

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続いては「照明電源車(小型)」や「資材搬送車」などを紹介!

夜間の火災現場における消火・救助活動を支える「照明電源車(小型)」

「照明電源車(小型)」。全長約5760×全幅約2160×全高約2740mm、ホイールベース2800mm。総重量約7250kg。乗車定員3人。排気量2999cc・直列4気筒ディーゼルエンジン「4JJ1」型、最高出力110kW/2800rpm、最大トルク375N・m/1400~2800rpm。所属。展示車両のベース車両いすゞ「エルフ」2017年式。

 「照明電源車(小型)」は、夜間の災害・事故現場を照らして消火・救助活動をしやすくするための車両だ。装備した発電機により電動の消防・救助用機器に電力を供給することも可能。従来の「照明電源車」は全長約6710×全幅約2350×全高約3450mm、総重量約9825kgと大型だったが、小型化したことで取り回しがよくなったという。

照明にはLEDが使用されており、消費電力を抑え、長寿命化が図られている。

1万Lという大量の消火用水を輸送できる「10トン水槽車」

「10トン水槽車」。全長約9300×全幅約2500×全高約3400mm、ホイールベース5810mm。総重量約2万1200kg。乗車定員3人。排気量12882cc・直列6気筒ディーゼルターボエンジン「6M70」型、最高出力257kW/2000rpm、最大トルク1810N・m/1100rpm。第八方面本部所属。展示車両のベース車両三菱ふそう「スーパーグレート」2008年式。

 「10トン水槽車」は、その名の通り10トン=1万Lの消火用水を運ぶことが可能だ。これにより近場に消火栓などのない山間部や高速道路上での火災、または震災が発生した際に消火用水を輸送できる。車両後部の水槽はステンレス製。また可搬式動力ポンプおよび放水銃を装備している。

ルーフ上に設置された放水銃。巨大なアームは、隣に並んでいた「屈折放水塔車」のもの。

サンダーバード2号のようにコンテナごと資機材を運べる「資材搬送車」

「資材搬送車」。全長約6470×全幅約2320×全高約3170mm、ホイールベース3790mm。総重量約1万985kg。乗車定員3人。排気量5123cc・直列4気筒ディーゼルエンジン「A05C」型、最高出力177kW/2300rpm、最大トルク794N・m/1400rpm。大塚消防署所属。ベース車両日野「レンジャー」2017年式。

 「資材搬送車」の大きな特徴は、コンテナ着脱装置を備えていること。災害や事故の状況に合わせ、一般的な内容の一般救助用コンテナ、小型コンテナ、危険物用コンテナの3種類から選択して搭載できる仕組みを持つ。コンテナを取り替えるだけなので、たとえていうなら”走るサンダーバード2号”ともいうべき支援車両だ。

 また、全長約8600×全幅約2500×全高約3100mm、総重量14500kgという「大型資材搬送車」もある。こちらもコンテナ着脱装置を備えており、一般救助用、小型、ロボット用、危険物用、粉末消火薬剤放射装置の5種類がある。ロボット用とは、消防ロボット「無人走行放水車装備(デュアルファイター)」の「無人走行放水車ドラゴン」と「障害物除去車セーバー」のコンビの搬送用だ。

「資材搬送車」のリアビュー。展示車両に搭載されていたコンテナは一般救助用コンテナ。

油圧リフト付きで特殊なストレッチャーも積載可能な「特殊救急車」

「特殊救急車」。全長約6600×全幅約2100×全高約2800mm、ホイールベース3310mm。総重量約5000kg。乗車定員10人。排気量4478cc・直列6気筒ガソリンエンジン「TB45」型、最高出力127kW/4400rpm、最大トルク314N・m/3600rpm。第三方面本部所属。ベース車両日産「シビリアン」2013年式。

 「特殊救急車」は、感染傷病者搬送用のカプセル型ストレッチャーおよび体重のある傷病者に対応したストレッチャーを後部ドアから積載できるよう、油圧式リフトを備えた大型救急車だ。

 また展示車両はマイクロバスがベースだが、さらに大型のトラックベースの全長約1100×全幅約2500×全高3780mm、総重量1万9000kgの「特殊救急車」もある。こちらは通称「スーパーアンビュランス」と呼ばれている。

「特殊救急車」のリアビュー。ストレッチャーの陰にあるのが油圧リフト。

こちらも「特殊救急車」の1種だが、通称「スーパーアンビュランス」と呼ばれるトラックベースの1台。いすゞ「エルフ」ベースだ。通常の救急車と同様の患者搬送のほか、救護所としての機能も有する。大規模災害および多数の傷病者が生じた際に、災害・事故現場で、ボディを左右に拡張することで、最大40平方メートルのフラットな床面となる。最大8床のベッドを備えることが可能だ。


 どのような状況下でも確実に現場に駆けつけ、市民の命と財産を守れるよう、東京消防庁はさまざまな車両を開発して配備してきた。

 危険な火災や災害の最前線で活躍するのはポンプ車やはしご車。そしてその活躍を支えているのが、今回紹介した指揮車や支援車である。東京は、こうした頼りになる日本最強の装備で守られているのだ。

 その1とその2で紹介した以外にもまだまださまざまな用途の消防車がある。今後、近くの消防署の前を通るときは、どのような消防車が配備されているのか、あなたもぜひチェックしてみてほしい。

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