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最終更新日:2018.07.13 公開日:2018.07.13

国交省による2017年度河川水質調査

日本には数多く美しい河川があるが、2017年の調査で、水質の汚濁・汚染状況が低いとして発表された一級河川は163本中の16本。(画像はイメージであり、水質が最も良好な河川16本のうちの1本ではありません)

 7月7日の「川の日」に合わせ、国土交通省水管理・国土保全局が毎年発表しているのが、全国一級河川の水質調査だ。国交省は、高度経済成長時代に工場排水や生活排水などによる河川の水質汚濁・汚染が顕在化してきたことから、1971(昭和46)年より本格的な水質調査の取りまとめを開始。そしてこの度、2017年度の水質調査結果がまとめられ、全国16本の河川が「水質が最も良好な河川」として6日に発表された。

 国交省が水質調査を始めた1971年当時は、環境問題が顕在化してきていた時期。当時、全国の河川において、水質の汚れを表す指標のBODの平均値は5.0mg/Lを超え、一級河川の全調査地点の27%において、水質改善が急務だったという。

 BOD(Biochemical oxygen demand)とは「生物化学的酸素要求量」といい、河川の汚れを表すのに一般的に使われる指標で、この値が大きくなるほど、汚濁が進んでいることを表す。水中の汚濁物質(有機物)を微生物が分解したときに消費した酸素量のことで、酸素の消費量が増えていくと、その水域の溶存酸素量がなくなっていくため、そこには魚類などが棲めなくなってしまう。

 このように汚濁・汚染が進んでいた日本の河川だが、その後、排水規制、下水道整備、河川浄化事業などが推進され、また住民が参加するクリーン活動なども活発に行われるようにもなり、徐々に改善。

 例えば、東京都と神奈川県の間を流れる多摩川は昭和40年代当時は洗剤の泡が浮くほど水質が悪化していたが、昭和50年代後半にはアユの遡上が確認されるほどになった(BODが3.0mg/L以下になると、サケやアユが生息できるとされる)。さらに近年では、清流として名高い高知県の四万十川(しまんとがわ)の水質に迫るほどだという。

 このように、水質が改善し続けているのが日本の河川の現状だ。ただし、都市部を流れる河川はまだまだ水質改善が必要な状況である。

多摩川の景観。行政による河川浄化事業から、住民が参加するクリーン作戦まで、官民によるさまざまな取り組みが結実し、近年では高知・四万十川の水質に迫るほどの良好さを取り戻し、アユの遡上も見られるようになった。

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2017年の最も水質がいい河川はどれだ!?

2017年度「水質が最も良好な河川」はこの16本!

河川といってもさまざま。コンクリートで覆われて排水路のようになっている都会の河川も多い。国交省は、毎年条件を満たした一級河川を対象として発表している。(画像はイメージであり、水質が最も良好な河川16本のうちの1本ではありません)

 「水質が最も良好な河川」の定義とは、まず以下の条件を満たす一級河川が対象となる。

●一級河川(本川):直轄管理区間に調査地点が2か所以上ある河川
●一級河川(支川):直轄管理区間延長(川の長さ)が概ね10km以上、かつ直轄管理区間に調査地点が2か所以上ある河川

※調査地点数:1096地点(109水系に1080地点に都道府県管理の16地点を加えたもの)
 国交省が直轄管理する河川の総延長:約1万590km(2017年4月現在)

 この条件を満たす全国の一級河川163本のうち、以下のふたつの条件をどちらも満たすものが「水質が最も良好な河川」となる。163本の中には湖沼や海域として指定されている調査地点およびダム貯水池は含まれていない。

●各調査地点のBOD年平均値による平均が0.5mg/L(環境省の定めるBODの報告下限値)
●各調査地点のBOD75%値(※)による平均が0.5mg/L

※BOD75%値:年間の日間平均値の全データを小さいものから順に並べ、その合計数に0.75をかけた値(小数点以下は切り上げて整数にする)のこと。例えば毎月1回測定した場合、1年間で12個のデータを取得できるので、水質のよい方から数えて12×0.75=9番目の値を評価することになる。

 地区別に分類し、五十音順で紹介していく。

地区別「水質が最も良好な河川」

【北海道】
・沙流川(さるがわ)/沙流川水系 ※直近10年間で7回(14年から4年連続)
・後志利別川(しりべしとしべつがわ)/後志利別川水系 ※直近10年間で8回(14年から4年連続)
・尻別川(しりべつがわ)/尻別川水系 ※直近10年間で9回(09年から9年連続)

【東北】
・荒川(あらかわ)/阿武隈川水系(福島県) ※直近10年間で9回(10年から8年連続)
・鮭川(さけがわ)/最上川水系(山形県) ※初
・玉川(たまがわ)/雄物川水系(秋田県) ※16年が初(2年連続)

【北陸】
・黒部川(くろべがわ)/黒部川水系(富山県) ※直近10年間で4回

【近畿】
・熊野川(くまのがわ)/新宮川水系(三重県、奈良県、和歌山県)

【中国】
・小鴨川(おがもがわ)/天神川水系(鳥取県) ※直近10年間で4回(15年から3年連続)
・佐波川(さばがわ)/佐波川水系(山口県) ※16年が初(2年連続)
・天神川(てんじんがわ)/天神川水系(鳥取県) ※15年が初(2回目)

【九州】
・川辺川(かわべがわ)/球磨川水系(熊本県) ※06年から12年連続
・厳木川(きゅうらぎがわ)/松浦川水系(佐賀県) ※15年が初(3年連続)
・球磨川(くまがわ)/球磨川水系(熊本県、宮崎県、鹿児島県) ※15年が初(3年連続)
・五ヶ瀬川(ごかせがわ)/五ヶ瀬川水系(熊本県、大分県、宮崎県) ※直近10年間で6回(13年から5年連続)
・本庄川(ほんじょうがわ)/大淀川水系(宮崎県) ※14年が初(3回目)

蛇行する河川。(画像はイメージであり、水質が最も良好な河川16本のうちの1本ではありません)

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この10年で水質が大きく改善した河川に迫る!

過去10年間でBOD値が大幅改善した河川ベスト5!

都市部の運河は湾岸の工場地帯などを通っていることが一般的なため、かつては汚染・汚濁が進んでしまっていた。近年は、こうした運河も水質改善が進んでいる。(画像はイメージであり、水質が大幅に改善した5本のうちの1本ではありません)

 2007年と2017年のBOD値を比較し、10年間で水質改善幅の大きい地点のベスト5を紹介だ。

第1位:猪名川・利倉(いながわ・とくら)/淀川水系(兵庫県・大阪府)
 8.2→2.4mg/L(改善幅5.8mg/L)
第2位:山科川・中野橋(やましながわ・なかのばし)/淀川水系(京都府)
 7.4→2.1mg/L(改善幅5.3mg/L)
第3位:利根運河・運河/合流前(とねがわうんが・うんがごうりゅうまえ)/利根川水系(千葉県)
 9.8→5.3mg/L(改善幅4.5mg/L)
第4位:佐保川・群界橋(さほがわ・ぐんかいばし)/大和川水系(奈良県)
 6.7→2.5mg/L(改善幅4.2mg/L)
第5位:大和川・太子橋(やまとがわ・たいしばし)/大和川水系(奈良県・大阪府)
 7.1→3.2mg/L(改善幅3.9mg/L)

BOD値が環境基準で満足した地点の割合

現在、日本の河川でBODの環境基準を満足する調査地点は96%に及ぶ。(画像はイメージです)

 全国の一級河川において、BODの環境基準を満足した調査地点の割合について。888地点中の854地点で、96%だった。

 さらに、湖沼および海域におけるCODの環境基準を満足した地点の割合については、100地点中の41地点で41%だった。

 COD(Chemical Oxygen Demand)とは「化学的酸素要求量」のことで、湖沼および海域の水質汚濁・汚染状況を測定する代表的な指標だ。BODと同様に、数値が大きいほどその水域が汚れていることを示す。

 またダイオキシン類が水質環境基準を満足した地点の割合、人の健康の保護に関する環境基準満足率のどちらも99%だった。

 さらに、機械類の不法投棄などによる、油類の流出といった水質事故は右肩下がりで減ってきている。上水道の取水停止を伴わない事故の発生件数は、2016年度より104件減った全国で848件だった。上水道の取水停止を伴う事故の発生件数はここ数年は横ばいで、2016年度より3件増えて全国で17件だった。

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見た目など、人の感覚に頼る評価も実施中!

地域住民の協力による感覚的な調査結果は?

科学的な検査による評価だけでなく、人の感覚に頼った評価も行われている。水際なども含め、ゴミの有無といった見た目、水の臭いなどは人の感覚での「美しさ」にとっては非常に重要だ。(画像はイメージです)

 ここまで紹介してきた河川は、BODを基にした環境基準で選ばれたものだ。国交省では、こうした環境基準によるものだけでなく、多様な視点での評価するための指標についても検討。その結果として、2005(平成17)年からは一般市民の協力を得て、河川におけるゴミの量や水の臭いなどを実際に体感してもらう形での評価を開始した。

 全国299の地点のうち、2017年度に住民が参加したのは204地点(68.2%)。下の一覧の見方は、数値が一般市民が参加した地点の数、カッコ内の数値は一般市民が参加していないものも含めた全地点の数。パーセンテージは、そのランクが占めている割合を示したもの。

【感覚的な河川の水質指標による年間の総合評価ランク別地点数】
Aランク:40(59)/19.1%
Bランク:96(133)/47.1%
Cランク:59(92)/28.9%
Dランク:9(15)/4.4%

 2017年の水質調査に参加した一般市民は、小中学生が約6000人を占め、全国合計で7598人。Aランクのみ河川名が発表されている。複数地点がAランク評価を受けている河川もあるため、河川数は50本だ。

【地域別Aランク評価河川】
●北海道(4本)
 漁川(いざりがわ)、札内川(さつないがわ)、後志利別川(しりべしとしべつがわ)、名寄川(なよろがわ)
●東北(1本)
 荒川(あらかわ)
●関東(5本)
 男鹿川(おじかがわ)、鬼怒川(きぬがわ)、久慈川(くじがわ)、多摩川(たまがわ)、那珂川(なかがわ)
●中部(10本)
 虻川(あぶがわ)、揖斐川(いびがわ)、大田切川(おおたぎりがわ)、櫛田川(くしだがわ)、鈴鹿川(すずかがわ)、天竜川(てんりゅうがわ)、長良川(ながらがわ)、前沢川(まえざわがわ)、松川(まつかわ)、横川川(よこかわがわ)
●北陸(3本)
 黒部川(くろべがわ)、庄川(しょうがわ)、常願寺川(じょうがんじがわ)
●近畿(5本)
 石徹白川(いとしろがわ)、紀伊丹生川(きいにゅうがわ)、九頭竜川(くずりゅうがわ)、瀬田川(せたがわ)、千手川(せんじゅ(ず)がわ)
●中国(8本)
 小鴨川(おがもがわ)、江の川(ごうのかわ)、金剛川(こんごうがわ)、佐波川(さばがわ)、高梁川(たかはしがわ)、天神川(てんじんがわ)、三徳川(みとくがわ)、吉井川(よしいがわ)
●四国(3本)
 重信川(しげのぶがわ)、四万十川(しまんとがわ)、仁淀川(によどがわ)
●九州(11本)
 芋川(いもかわ)、大野川(おおのがわ)、大淀川(おおよどがわ)、小丸川(おまるがわ)、川辺川(かわべがわ)、球磨川(くまがわ)、高山川(たかやまがわ)、番匠川(ばんじょうがわ)、鳳来川(ほうらいがわ)、山国川(やまくにがわ)、山田川(やまだがわ)

※河川は複数の都道府県にまたがって流れることも多いため、今回は一般的な地区区分ではなく、その河川を管轄する国交省の各地方整備局の区分に従っています。

【評価項目と評価レベル説明】
ランクA:顔を川の水につけやすい(泳ぎたいと思うきれいな川)

ゴミの量:川の中や水際にゴミは見当たらないか、ゴミはあるがまったく気にならない / 透視度:100cm以上 / 川底の感触:快適である / 水の臭い:不快でない / 糞便性大腸菌数:100個/100ml以下

ランクB:川の中に入って遊びやすい

ゴミの量:川の中や水際にゴミは目につくが、がまんできる / 透視度:70cm以上 / 川底の感触:不快感がない / 水の臭い:不快でない / 糞便性大腸菌数:1000個/100ml以下

ランクC:川の中には入れないが、川に近づくことができる

ゴミの量:川の中や水際にゴミがあって不快である / 透視度:30cm以上 / 川底の感触:不快である / 水の臭い:水に鼻を近づけると不快な臭いを感じる / 糞便性大腸菌数:1000個/100mlを超える

ランクD:川の水に魅力がなく、川に近づきにくい

ゴミの量:川の中や水際にゴミがあってとても不快である / 透視度:30cm未満 / 川底の感触:不快である / 水の臭い:水に鼻を近づけるととても不快な臭いを感じる / 糞便性大腸菌数:1000個/100mlを超える

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