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道路・交通最終更新日:2023.08.15 公開日:2023.06.27

海上国道ってなんだ!? 海の上を走る超特殊な国道の実態に迫る

国道は道路である。当然、クルマやバイクで走行できる道路を想像するはずだ。しかし日本には、海上の航路で道路と道路を結ぶ超特殊な国道が存在する。今回はそんな海上国道の実態に迫りたい。

文=宮本 菜々(KURU KURA)

海上国道とは海の上の国道!

画像はあくまで海上国道のイメージ © KEIKOLovesNature – stock.adobe.comをもとに作成

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国土交通省によれば、地上につくられた道路や橋梁、海底トンネルなどの構造物はなくても、フェリー航路など、道路と道路を結ぶひとつの交通系統としての機能があると判断できれば、国道として指定できるとしている。

また道路法において「道路」とは、一般交通の用に供する道で、高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道のことを指し、トンネル、橋、渡船施設、道路用エレベーターなど、道路と一体となってその効用を全うする施設または工作物および道路の不足物で当該道路に付属して設けられているものを含むと規定しているという。

(国土交通No.102 教えて国土交通省!)

海上国道はなぜ存在しているのか。その理由は、フェリーを利用したりして海を越えることができるのならば、たとえクルマやバイクで直接走ることができないとしても、国道としての条件をばっちり満たしているからだ。これは島国の日本らしい事例かもしれない。

海上国道は全国に24路線もある!

海上国道のある佐渡島の港 © majonit – stock.adobe.com

国土交通省の道路統計年報(2022年)によると、海上国道は24路線ある。また、国道の総延長66416.1kmに対して、海上区間の総延長は1953.1km。想像以上に長い(!)と思ってしまった。

例えば、国道279号は起点を北海道函館市、終点を青森県野辺地町としており、函館-大間が海上区間となっている。ここにはちょうど津軽海峡フェリーの航路が通っている。

国道279号の海上区間。津軽海峡フェリーの公式サイトをもとに作成

 

次に、海上国道でも特徴的な国道350号を取り上げたい。国道350号は、起点を新潟県新潟市、終点を同県上越市としており、新潟港-両津港(佐渡)間と小木港(佐渡)-直江津港間を海上区間としている。いずれの海上区間も佐渡汽船のフェリー航路が通っている。

国道350号は佐渡を横断する区間以外は海上区間となっている。(c) J BOY - stock.adobe.comをもとに作成

地図を見るとわかりやすいが、国道350号は佐渡を横断する道路である。海上国道として指定されたのは1975年のこと。県庁所在地の新潟市と同県第3の都市である上越市をフェリー航路で結ぶことから国道に指定されており、佐渡の主要道路であった県道45号を国道350に格上げするに至っている。

ちなみに、総延長(海上区間を含む)で国道最長となるのは、国道58号である。くわしくは“「日本で一番長い国道」は何号? 国道の長さランキングTOP3!”で説明しているのでぜひ読んでみてほしい。

ただし、国道として指定された当初はフェリー航路が存在していたが、現在は就航しておらず、道路と道路がフェリーで結ばれていない、島と島とを結ぶフェリー航路がないなど、クルマやバイクで走破できないようなケースもある。

これまで、青函フェリーや津軽海峡フェリーを利用している筆者だが、船の甲板で海を眺めながらぼうっとしているだけで、道路上、しかも国道であるという実感はいっさい抱いていなかった。振り返ると、非常にもったいない気がする。今度、渡船するときは、いま国道の海上区間を走っているんだ!というその事実を噛みしめたい。

最後に、海上国道全24路線の総延長、実延長、海上区間延長を掲載しておく。なお、都道府県は起終点ではなく海上区間の所在地である。知らないだけで、あなたが生まれ育った町や住んでいる町にも海上国道があるかもしれない。

<海上国道全24路線の一覧>

■国道16号:(千葉県)
総延長348.4km 実延長326.2km 海上区間5.0km

■国道42号:(三重県)
総延長522.4km 実延長 481.7km 海上区間19.6km

■国道57号:(長崎県・熊本県)
総延長302.7km 実延長218.9km 海上区間 27.1km

■国道58号:(鹿児島・沖縄県)
総延長879.6km 実延長270.1km 海上区間609.5km

■国道197号:(愛媛県・大分県)
総延長274.9km 実延長203.9km 海上区間30.0km

■国道224号:(鹿児島県)
総延長22.9km 実延長13.5km 海上区間8.8km

■国道260号:(三重県)
総延長98.6km 実延長91.3km 海上区間2.5km

■国道269号:(鹿児島県)
総延長168.4km 実延長146.1km 海上区間17.0km

■国道279号:(北海道)
総延長176.5km 実延長157.4km 海上区間19.0km

■国道280号:(北海道)
総延長189.6km 実延長100.8km 海上区間17.0km

■国道317号:(愛媛県)
総延長189.5km 実延長172.4km 海上区間15.1km

■国道324号:(熊本県)
総延長137.6km 実延長86.3km 海上区間33.7km

■国道338号:(北海道)
総延長260.4 km 実延長238.3 km 海上区間19.0 km

■国道350号:(新潟県)
総延長195.5 km 実延長50.3 km 海上区間145.2 km

■国道357号:(東京都・神奈川県)
総延長88.4 km 実延長75.8 km 海上区間0.4 km

■国道382号:(佐賀県・長崎県)
総延長201.2 km 実延長106.9 km 海上区間80.2 km

■国道384号:(長崎県)
総延長201.5 km 実延長96.2 km 海上区間105.3 km

■国道389号:(熊本県・鹿児島県)
総延長189.2 km 実延長120.3 km 海上区間36.5 km

■国道390号:(沖縄県)
総延長552.2 km 実延長63.2 km 海上区間489.0 km

■国道436号:(兵庫県・香川県)
総延長96.6 km 実延長30.3 km 海上区間64.1 km

■国道437号:(広島県)
総延長87.5 km 実延長62.0 km 海上区間25.5 km

■国道485号:(島根県)
総延長160.8 km 実延長45.8 km 海上区間97.6 km

■国道487号:(広島県)
総延長63.6 km 実延長59.4 km 海上区間4.0 km

■国道499号:(鹿児島県)
総延長111.2 km 実延長29.2 km 海上区間82.0 km

資料:国土交通省の道路統計年報(2022年)をもとに作成

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