ル・マンはスーパーカー天国! 11台が出走のフェラーリ「488 GTE」
ナイトセクションを走るフェラーリ「488 GTE」。イタリアのチーム「AFコルセ」の71号車。画像は世界耐久選手権(WEC)公式サイトより。
現地時間6月17日15時から18日15時まで、仏サルト市のサルト・サーキットで開催された第85回ル・マン24時間レース(世界耐久選手権(WEC)2017シーズン第3戦)。
同レースには4つのカテゴリーがあり、上のふたつはレース専用車だが、下のふたつは「LM GTE Pro(プロ)」と「LM GTE Am(アマチュア)」といい、高性能GTカー、いわゆるスーパーカーをベースとしたレーシングカーで参戦できるクラスとなっている。
今回参戦したスーパーカーは、フェラーリ「488 GTE」が11台、ポルシェ「911 RSR」が6台(その内4台はAmクラスなので、最新モデルで参戦してはいけないルールにより「タイプ991」)、アストン・マーチン「V8 ヴァンテージ GTE」が5台、フォード「GT」が4台、GM「シボレー コルベット C7」が3台(その内1台は、Amクラスなので「Z06」)だ。ル・マンは、世界的に知られたスーパーカーが対決する、最も有名なレースなのである。第1弾として、フェラーリ「488 GTE」を盛りだくさんで紹介しよう。
フェラーリ 488 GTEは市販車488 GTBベースのレーシングカー
488 GTEのベースとなった市販車「488 GTB」。このほか、オープントップタイプの「488 スパイダー」もある。画像はフェラーリ公式サイトより。
フェラーリ 488 GTEは、V8モデルの市販車「488 GTB」をベースにしたレース用車両だ。第85回ル・マン24時間には、LM GTE Proクラスに3台、同Amクラスに8台の合計11台が参戦し、GTEクラスの最多車種となった。
488 GTEのスペックはあまり公開されておらず、以下の通り。なお、最大トルクは市販の488 GTBの方が760N・m/3000rpmと出ている(厳密には最高出力も2kWほど488 GTBの方が高い)。
【スペック】
最高出力:490kW/5500rpm
最大トルク:650N・m/5250rpm
最高速度:時速330km以上(488 GTBの公称値)
車両価格:税込3070万円(488 GTBの正規代理店での価格で、オープンタイプの「スパイダー」は税込3450万円)
AFコルセ・71号車
488 GTE勢の最上位フィニッシュとなったのが、AFコルセの71号車。総合22位、クラス5位という結果を残した。ダビデ・リゴン、サム・バード、ミゲル・モリーナのトリオがドライブした。
AFコルセの71号車。28周遅れの339周でフィニッシュし、総合22位・クラス5位。ベストラップは3分51秒846。画像はフェラーリ公式サイトより。
市販車の488 GTBとの外見上の違いは、大きなリアウィングやリア・ディフューザーなどのレース用の空力パーツが装備されていること。ほかにもレース用の空力パーツが追加されている。さらに、カーナンバーが発光する、クラス3位以上の時に順位を示すLEDランプが3つカーナンバーの横に備えられているなどのル・マン仕様の装備も追加されている。画像はWEC公式サイトより。
AFコルセ・51号車
AFコルセは2台の488 GTEを走らせた。51号車は、ジェームス・カラド、アレッサンドロ・ピエール-グイディ、ミケーレ・ルゴロ。
AFコルサの51号車。トップから55周遅れの312周で24時間を走りきり488 GTE勢の中では最後尾だが、総合47位、クラス11位の結果を残した。ベストラップは3分51秒422。逆にベストラップでは488 GTE勢のトップ。画像はWEC公式サイトより。
ナイトセッションを走る51号車。夜間でも視認性をよくするため、カーナンバー部分が発光。またそのほかにもパーツを点灯させている。なお、現在のル・マン参戦車両は、クラス3位以上になると順位がわかるように、3つのLEDライトが順位に合わせてその数だけ点灯する。点灯数が0の場合は、4位以下。画像はフェラーリ公式サイトより。
GTEクラスは各所で激戦が展開した。51号車の後方にいるのは、アストン・マーチン「ヴァンテージ」。今回、英国の「アストン・マーチン・レーシング」の97号車がGTE Proクラスの優勝を飾った。さらにその後方には、フォード「GT」。こちらは米国の「フォード チップ・ガナッシ チームUK」所属の67号車がGTE Proクラス2位となっている。画像はフェラーリ公式サイトより。
リジ・コンペティション・82号車
惜しくも72周でリタイヤしてしまったが、元F1ドライバーのジャンカルロ・フィジケラを擁して、話題となったのが、米国のリジ・コンペティション(コンペティツィオーネ)だ。あとの2名は、トニー・ヴァイランダー、ピエール・カッファー。
リジ・コンペティションの488 GTE・82号車。フィジケラらプラチナドライバー3人を要していたが、72周目、カッファーのドライブの最中、LMP2クラスのTDSレーシングの28号車「オレカ 07 – ギブソン」に接触され、ガードレールに激突、クラッシュとなった。カッファーは病院に搬送されたが、命に別状はない。28号車は7分間のペナルティストップを受けた。画像はリジ・コンペティション公式サイトより。
82号車を別角度から。488 GTEには、公道では装備できない空力パーツが装備されており、フロントスポイラーもよりレース仕様となっている。画像はリジ・コンペティション公式サイトより。
82号車を後方から。リア・ディフューザーの形状がよくわかる。488 GTBもリア・ディフューザーを備えるが、488 GTEは整流板が路面をこすってしまいそうなほど下に延ばされている。画像はWEC公式サイトより。
488 GTBのリア。ディフューザーの形状や整流板の数が異なるのがわかる。画像はフェラーリ公式サイトより。
JMWモータースポーツ・84号車
Amクラスは、16台中の8台が488 GTEという、一大勢力である。結果も、488 GTEの1-2-3フィニッシュ。表彰台独占となった。クラス優勝したのが英国のJMWモータースポーツで、ロブ・スミス、ウィル・スティーブンス、ドリス・バンスールのトリオがドライブした。
JMWモータースポーツの84号車。34周遅れの333周でフィニッシュ。総合27位、クラス優勝。ベストラップは3分54秒461。画像はフェラーリ公式サイトより。
スピリット・オブ・レース・55号車
Amクラス2位となったが、チェコの「スピリット・オブ・レース」の55号車。ドライバーはダンカン・キャメロン、アーロン・スコット、マルコ・チオチの3名。
55号車は、36周遅れの331周でフィニッシュ。総合29位、クラス2位。ベストラップは3分53秒944。画像はフェラーリ公式サイトより。
スクーデリア・クルサ・62号車
Amクラス3位となったのが、米国の「スクーデリア・コルサ」の62号車。ドライバーはクーパー・マクニール、ウィリアム・スウィードラー、タウンゼント・ベルの3名が操った。ホワイト系のボディが印象的。
62号車は36周遅れの331周でフィニッシュ。総合30位、クラス3位だ。ベストラップは3分55秒010だ。画像はスクーデリア・コルサ公式サイトより。
クリアウォーター・レーシング・61号車
日本人ドライバーの澤圭太を擁してクラス4位となったのが、シンガポールの「クリアウォーター・レーシング」の61号車。アジア系のチームも参戦している。澤とトリオを結成したのは、モク-ウェン・サン、マシュー・グリフィンの2選手だ。
61号車は37周遅れの330周でフィニッシュ。総合32位、クラス5位。ベストラップは3分54秒977。画像はWEC公式サイトより。なお、この画像はル・マンでのものではなく、第2戦スパ・フランコルシャン(ベルギー)でのもの。
クリアウォーター・レーシング・60号車
クリアウォーター・レーシングが走らせたもう1台が60号車。こちらも日本人選手がおり、日本ではチーム監督などをしているベテランの加藤寛規がスターティングドライバーを務めた。加藤と組むのは、リチャード・ウィー、アルバロ・パレンテのふたり。
ル・マンの名物のひとつが、リパブリック広場における公式車検での記念撮影。全チームが撮影を行う。60号車は、レースでは40周遅れの327周でゴールし、総合41位、クラス11位となった。ベストラップは3分54秒089。画像はWEC公式サイトより。
スピリット・オブ・レース・54号車
チェコのスピリット・オブ・レースのもう1台は、54号車。シルバーの塗装がナイトセッションでは特に映える。トーマス・フローア、フランチェスコ・カステラッチ、オリビエ・ベレッタがトリオを組んだ。
54号車は41周遅れの326周でフィニッシュ。総合42位、クラス12位という結果を残した。ベストラップは3分56秒298。画像はWEC公式サイトより。
DHレーシング・83号車
アジア系のレーシングチームのひとつ、香港が拠点のDHレーシング。同チームの83号車は、トレーシー・クローン 、ニクラス・ヨンソン、アンドレア・ベルトリーニのトリオがステアリングを握った。
47周遅れの320周でゴールを迎え、ベストラップは3分55秒058。すぐ後ろはアストン・マーチン。画像はフェラーリ公式サイトより。
スクーデリア・コルサ・65号車
米国のスクーデリア・コルサのもう1台である65号車。こちらはフェラーリらしい赤だが、米国のチームらしくルーフいっぱいに星条旗が描かれている。クリスティナ・ニールセン、アレッサンドロ・バルザン、ブレット・カーティスの3人が乗り込んだ。
65号車は53周遅れの314周で24時間を迎えた。総合45位、クラス14位。ベストラップは3分54秒843。画像はスクーデリア・コルサ公式サイトより。
ル・マンはスーパーカー天国第2弾は、『英米対決! アストン・マーチン「ヴァンテージ」vsGM「コルベット・スティングレー」』、第3弾『米独対決! フォード「GT」vsポルシェ「911 RSR」』を予定。ご期待いただきたい!
2017年6月21日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)