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クルマ最終更新日:2017.06.28 公開日:2017.06.28

語り継ぎたい国産メーカーのクルマと技術たち後編:1970~90年代編

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1973年に発売されたホンダ「シビックCVCC」。ホンダ独自の環境技術を搭載したCVCCエンジンにより、従来よりクリーンになったことはもちろん、燃費のいいクルマとして日本だけでなく米国でも大いに評価された。ホンダはCVCC技術を、他メーカーにも技術提携を結べるように公開し、トヨタなどが実際に提携した。

 5月24日から26日までパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2017」。そこで特別展示された、1950年代から90年代までを彩った国産の名車やエポックメイキング的なクルマたちを、テクノロジーの視点から2回に分けて紹介している。後編は、70~90年代の国産車とそこで実用化されたさまざまな技術たちだ。

1973年:ホンダ「シビック CVCC」

 60年代に入ってクルマの台数が増加していくと、排気ガスによる大気汚染が問題となっていく。そして、70年に世界中の自動車メーカーに衝撃を与えたのが、米国発の排気ガス規制「マスキー法」だった。

 排ガス中のCO(一酸化炭素)とHC(炭化水素)については75年型車から70年型車の1/10とし、NOx(窒素酸化物)については76年型車から71年型車の1/10にするという内容だったのである。

 そんな厳しい条件をクリアすべく、苦難の末にホンダが開発したのがCVCCエンジンである。「Compound Vortex Controlled Combustion」の略で、日本語では「複合渦流調速燃焼方式」という。

 CVCCは燃焼室が主副ふたつある複合(複式)型なのが特徴で、副燃焼室の火炎を主燃焼室に渦流として噴出させることで燃焼を早める仕組みである。また、燃焼速度を制御する点も特徴となっていた。

 CVCCの特徴は従来エンジンのシリンダーヘッドから上の交換だけで済むことから生産設備を活かすことができ、さらに触媒などの排出ガス浄化装置を必要としないことが大きなメリットだった。

 そしてCVCCエンジンを搭載したシビックは73年に発売され、昭和50年排出ガス規制をクリアしたことから、低公害車優遇税制の適用を受けたのである。

 また米国ではマスキー法の試験に74年に合格し、さらに78年まで4年連続で燃費1位を獲得。また、当時の多くの排ガス規制対策車が無鉛ガソリンを必要とし、供給設備のないガソリンスタンドも多いことから問題となったが、CVCCは無鉛・有鉛問わなかったことから「燃料を選ばない低公害車」として米国に浸透していったのである。

【スペック】
全長×全幅×全高:3695×1505×1325mm
ホイールベース:2280mm
車両重量:745kg
エンジン:直列4気筒
排気量:1488cc
最高出力:46.3kW(63PS)/5500rpm
最大トルク:100N・m(10.2kg・m)/3000rpm

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昭和50年排気ガス規制の施行前に販売されたクルマはそのまま販売できたため、シビックにはCVCCを搭載していない車種もラインナップされていた。

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次は、トヨタ「コロナ」と激しい死闘を繰り広げたあのクルマ!

1979年:日産「ダットサン ブルーバード 1800SSS」

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日産「ダットサン ブルーバード 1800SSS」。ダットサンの名称は日産よりも実は歴史があり、その由来は同社の前身である快進社で橋本増治郎が1914年(大正3年)に開発した「DAT号」まで遡る。新会社設立や合併、吸収、社名変更などを経て日産自動車が誕生するのは34年(昭和9年)のことだ。

 60年代から70年代にかて、トヨタ「コロナ」と激しい販売合戦、いわゆる「BC戦争」を繰り広げたのが日産「ブルーバード」だ。初代ブルーバードの「310型」は、55年発売の「ダットサン・セダン(110型)」、57年発売の「ダットサン1000(210型)」の後を継ぎ、59年8月に発売された。

 画像の2ドアハードトップ「1800SSS」は6代目の「910型」系の1台で、79年11月に発売された。なおSSSとは2代目からラインナップに加えられたブルーバードの伝統的なグレードで、「スーパー・スポーツ・セダン」を意味し、走りを追求した1台だ。

 6代目はデザインが3代目の「510型」系の直線的なスタイルに回帰したこと、走行安定性の高さが評されたサスペンション「ゼロスクラブ」などにより「走りのブルが復活した」といわれるほど硬派なクルマに仕上がったこと、それらに加えて歌手の沢田研二をイメージキャラクターに登用し、「ザ・スーパースター」、「ブルーバード、お前の時代だ。」というキャッチコピーが大好評となり、82年2月まで小型車クラスの販売で27か月連続トップという記録を打ち立てた。

 エンジンの排気量は1600、1800、2000の3種類が用意され、すべて4気筒に統一。1800SSSに搭載された「Z18型」エンジンは最高出力105馬力を絞り出した。

【スペック】
全長×全幅×全高:4360×1655×1370mm
ホイールベース:2525mm
車両重量:1050kg
エンジン:Z18型(直列4気筒・OHC)
排気量:1770cc
最高出力:77kW(105PS)/6000rpm
最大トルク:147N・m(15.0kg・m)/3600rpm

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ブルSSSとしては5代目、1800SSSとしては4代目となる910型1800SSS。80年にはターボを追加した「1800SSSターボ」も発売され、最高出力は135PSにアップした。ブルーバードは惜しまれつつも10代目「U14型」が2001年8月に販売終了となり、現行車種から姿を消した。

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さらに引き続き日産を代表するあのクルマ!

1983年日産「スカイライン 2000 ターボ RS」

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80年代のアクションTVドラマ「西部警察」で、大門軍団の刑事たちが乗り込んだ「マシンRS」シリーズとして活躍した日産「スカイライン 2000 ターボRS」。劇中の車両はドアミラーになっているほか、ホイールもエンケイ製に交換され、さらに各所にエアロパーツなどが装着されていた。

 日産と合併する前のプリンス自動車で開発された「スカイライン」は合併後もニューモデルが作られ続けている。2017年で60周年となり、13代目が現行モデルとして販売中だ。画像の2000 ターボRSを含む6代目の「R30型」系は81年に発売された。

 2000 ターボRSは83年2月に発売され、4バルブヘッドのNAエンジン「FJ20E型」にターボを追加した「F20ET型」を搭載。歴代最強の190馬力を絞り出したことから、「GT-R」の名が復活することも期待されたほどで、「史上最強のスカイライン」というキャッチコピーが与えられた。なお、4バルブDOHC+ターボの組み合わせは、日本車初となる。

 また常に新技術が投入されてきたのがスカイラインで、このR30型系には、量産車としては世界初となる「アジャスタブル・ショック・アブソーバー」が採用された。それにより、確実なロードホールディングと快適な乗り心地を両立させたという。

 なおRSとは「レーシング・スポーツ」を意味しており、その名の通りに10年ぶりとなるレースシーンへの復活を果たした。

【スペック】
全長×全幅×全高:4595×1665×1385mm
ホイールベース:2615mm
車両重量:1165kg
エンジン:FJ20ET(直列4気筒DOHC)
排気量:1990cc
最高出力:140kW(190PS)/6400rpm
最大トルク:225N・m(23.0kg・m)/4800rpm

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この2000ターボRSは前期型で、83年8月のマイナーチェンジ後は、グリル(ナンバープレートの上の横串状のエアインテーク)が廃された後期型は「鉄仮面」と呼ばれ人気を博した。また、R30型系全体では、広告キャラクターとしてポール・ニューマンを起用したことから、「ニューマン・スカイライン」と呼ばれた。

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安全装備を追求した1台!

1985年:ホンダ「レジェンド」

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乗員保護のための安全装備が求められるようになってきた時代に、国産車初となるエアバッグ装着車を設定したのがホンダの初代「レジェンド」だった。ただし、画像の「V6Xi 2500」(85年発売)にはエアバッグは搭載されておらず、87年9月発売からのモデルに装着された。

 クルマの高性能化において、排気ガスのクリーン化・高燃費化の次にクルマに求められるようになったのが、乗員保護性能(安全性)の高さである。ホンダは現在も続く高級車「レジェンド」の初代モデルにおいて、エアバッグ搭載したグレードをラインナップした。

 エアバッグシステムは、エアバッグと各種機器の状態を診断するユニットなどで構成される。時速約16km以上の衝突に相当する衝撃を前方から受けると、各センサーが関知し、作動する仕組みだ。

 センサーは衝撃を感知するとハンドル中央部に収納されたインフレーターに信号を送って点火装置を作動させ、約0.03秒後に微量の火薬に着火。そのときの熱と圧力により固体燃料の「窒化ナトリウム」が化学反応して窒素ガスが約0.03秒で容量約60Lのエアバッグを膨張させるのである。

 エアバッグはドライバーの顔面を瞬間的に受け止めると、ふたつの排気孔から窒素ガスを放出することでドライバーの顔面に対する衝撃を緩和させるのである。

【スペック】
全長×全幅×全高:4810×1735×1390mm
ホイールベース:2760mm
車両重量:1340kg
エンジン:V型6気筒 24バルブ+PGM-FI
排気量:2493cc
最高出力:121.4kW(165PS)/6000rpm
最大トルク:210.8N・m(21.5kg・m)/4500rpm

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ドアミラーが主流となってきた時代だが、まだ過渡期ともいえる時期であったため、初代レジェンドにはフェンダーミラー装着車も設定されていた。

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最後はホンダ初のあのスーパーカー!

1990年:ホンダ「NSX」

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ホンダ初のスーパーカーとして90年に登場した「NSX」。NSXとは、「新しいスポーツカーX」を意味する「New Sportscar X」の略だ。Xには「未知数」のほか、「無限の可能性」という意味もある。なお、現行(2代目)NSXは、同じNSXでも「新時代のスーパースポーツ体験=New Sports eXperience」と解釈が改められている。

 ホンダが、「過去に例のない、新しい考えと新しい性能を持ったスポーツカーを想像したい。自由な発想の中から次の時代を見据え、自分たちでベストと信じるものを想像したい」という一貫したテーマのもと、6年半に及ぶ開発期間をかけて誕生させたのが初代「NSX」である。90年9月に発売された。

 初代NSXの技術面における最大の特徴は、量産車としては世界初となる「オール・アルミ・モノコック・ボディ」を採用したこと。しかもアルミ合金の採用はボディだけに留まらず、エンジン、シャシー、足回り、シートの構造部材に至るまで多用され、大幅な軽量化が実現された。

 アルミ合金は鉄に対して1.4倍の板厚で同等の面剛性を得ることが可能なのに対し比重は約1/3しかなく、クルマを軽量化するのに適した素材のひとつだ。初代NSXではホワイトボディ(ボディシェルの各部品を溶接して組み立てた状態)で210kgと、鉄製の場合と比べて140kgの軽量化を実現した。全体では約200kgの軽量化を実現したという。

 なお剛性に関しては板厚を増やすのではなく、アルミ合金の押し出し材を使用することで鉄製を上回るようにした。ちなみに2代目NSXでもアルミ合金の押し出し材が利用されており、そのほか複数の素材と組み合わせた新開発のスペースフレームが採用されている。

【スペック】
全長×全幅×全高:4430×1810×1170mm
ホイールベース:2530mm
車両重量:1390kg
エンジン:水冷V型6気筒VTEC
排気量:2977cc
最高出力:195.0kW(265PS)/6800rpm
最大トルク:294.1N・m(30.0kg・m)/5400rpm

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高性能・高品質の厳格な条件を満たすため、ホンダは栃木に新たに少量生産専用のNSX用新工場を建設。クラフトマンシップ的に生産されたことから、初代NSXの1日の生産台数は25台だった。

2017年6月26日(JAFメディアワークス IT Media部 日高 保)

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