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クルマ最終更新日:2022.12.29 公開日:2022.12.29

トヨタ勝田選手が3位入賞!──WRCラリージャパン2022を振り返る

2022年11月10日から13日にわたり開催された世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリージャパンで、日本人ドライバーの勝田貴元選手(トヨタ)が3位表彰台を獲得した。12年ぶりの開催となった日本でのWRCだが、スケジュール変更やタイヤグリップが把握しづらい路面状況等により順位の変動が激しいレースとなった。

WRC

文と写真=小林祐史(YKイメージ)

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勝田選手が最終日に逆転3位で表彰台獲得

セレモリアルフィニッシュで声援に応える勝田貴元選手セレモリアルフィニッシュで声援に応える勝田貴元選手

 2022年11月10日(木)から13日(日)にわたり世界ラリー選手権(WRC)第13戦ラリージャパンが開催された。北海道札幌市で開催されたラリージャパンから12年ぶりの開催となった今大会は、舗装路(ターマック)中心のコースが設定されていた。

 ただしターマックといっても山間部の道路のため道幅は狭く、路面にはたくさんの落ち葉が散乱。晴天といえども路面温度が低いままで、タイヤのグリップが安定しない状況が続いた。

 加えて多くのドライバーが日本でのラリーは初体験だったため、コースアウトやアンダーステア、側溝にタイヤを落としパンクするなどで苦しめられた。そのような路面状況もあって4日間にわたって開催された今大会は、順位変動が多いレースとなった。

1日に使えるタイヤは6本まで

 順位をキープするのが難しいラリーで、日本人ドライバーの勝田選手は最終日をスタートする時点で4位につけていた。一方で優勝争いをしていたのは、ヒョンデのヌービル選手とトヨタのエルフィン・エバンス選手だった。猛烈な追い上げを見せていたエバンス選手だったが、SS16でパンクに見舞われてしまい、5番手まで順位を後退。残りのSS(スペシャルステージ)は2つのみ、さらに雨が降り始めたが、エバンス選手はレインタイヤを車に積んでおらず、追撃は不可能な状況となってしまった。

 代わりに3位に浮上したのが勝田選手だった。最終ステージで前年チャンピオンであるトヨタのセバスチャン・オジェ選手に追い上げられたが、勝田選手がタイム差を守り切り、母国での3位入賞を果たした。

優勝したヌービル選手が、2日目のリエゾン区間である豊田市小渡町(おどまち)を走行するところ優勝したヌービル選手が2日目のリエゾン区間である豊田市小渡町(おどまち)を走行するところ

 WRCのいまのレギュレーションでは、車に装着されている分も含めて1日に使えるタイヤは6本までという決まりになっている。今大会の4日目のように途中から路面状況が大きく変わることが予想される天気は、使用するタイヤをどのような組み合わせにするかが重要な鍵になる。

タイヤの6本をどのような組み合わせにするかが勝負の鍵となるWRCWRCは使用できる6本のタイヤをどのような組み合わせにするかが勝負の鍵となる

タイヤ選択が勝敗を決める

 3日目に各ドライバーが選択したタイヤの組み合わせは、首位だったヌービル選手はドライタイヤ4本を装着して、ウエット用を車内に2本積むという安全策を選択。対して、追い上げるエバンス選手とオジェ選手は、ドライ6本という雨が降る前に首位に出るというギャンブルに打って出る。

 その中で勝田選手は5本がドライで1本のみウェットという折衷案だった。逆に下位に沈んでいたフォードのクレイグ・ブリーン選手は、6本中4本をウェットにして雨のSSでステージタイムの1位を取ることだけに絞った内訳だった。ブリーン選手はこれで雨が降り出し後のSS18とSS19でいずれも1位を記録している。

 WRCの公式ウェブサイトでは、各ドライバーのタイヤ6本の内訳も発表されているので、その点も注目して今後を予想するのも楽しみの1つだ。なお雪やアイスバーンで出走するモンテカルロやスウェーデンラリーはスパイクタイヤ、スタッドレスタイヤも加えられるので、さらにタイヤ選択が重要な鍵となる。

スケジュール変更が多発

2日目、早朝のSS2でヒョンデのダニ・ソルド選手のラリーカーが炎上 ©Jaanus Ree / Red Bull Content Pool2日目、早朝のSS2でヒョンデのダニ・ソルド選手のラリーカーが炎上 ©Jaanus Ree / Red Bull Content Pool

 今回のラリージャパンは、ステージキャンセルが続出した。

 その一因に、早朝から出走しなければならないタイムスケジュールがある。2日目以降は朝6時にベース基地の豊田スタジアムを出発して、7時からSSでタイム計測がはじまる。このような早朝スケジュールはラリージャパン以外でもあるが、多くのドライバーが日本の道路を初体験で、早朝の山間部は日光があたっても路面温度が低いところが多く、落ち葉や砂等の滑り具合を把握しきれなかったドライバーたちが、コースアウトを引き起こしてしまったようだ。

 また2日目のSS2では、ヒョンデのダニ・ソルドのラリーカーが走行中に出火するというアクシデントに見舞われる。ソルド選手とコ・ドライバーはマシンを停めて消火作業を行ったが、マシンは全焼。ソルド選手のいまのラリーカーはハイブリッドなのでバッテリーに火の手が及ぶと消火作業が困難になる。後続のドライバーや、コースのセーフティスタッフ、地域の消防車らが協力して消火作業にあったが、消すことはできなかった。

 このSS2の消火作業により、SS3がキャンセルされ、SS4はスケジュールより20分遅れてスタート。しかし今度はフォードのブリーン選手がコースオフしてしまい、ガードレールを破損。さらに、ブリーン選手の後方で一般車両がコースに進入するというインシデントも発生し途中キャンセルに。また同日午後のSS7は、午前中のSS4と同じコースだったため破損したガードレールの修復が間に合わず、こちらも中止となった。

波乱続きとなったラリージャパンの課題

 本来であれば2日目までに7つのSSが行われるスケジュールだったが、2つがキャンセル、3つが途中キャンセルで、出走車全てのタイムが計測できたのは2つのみ。これにより2日目が終わった時点で「キャンセルが多く、順位を上げる機会が失われた」と落胆するドライバーも多かった。

 そしてステージキャンセルは3日目にも起きてしまった。

 岡崎市の河川敷で行われる予定だったSS13とSS14では、なんとセッション開始直前のタイミングで、ラリーカーが川に転落した際に必用な潜水士(救助隊員)が正しく配置されていないことが発覚。30分遅れで到着したが、15時36分に開始予定だったSS13はキャンセルされ、SS14は予定の15時49分から16時30分に変更してスタートととなった。

SS14をタイムアタックする勝田貴元選手。路面が舗装路と未舗装路が混在していた。未舗装路部分はラリーカーが通り過ぎるたびに砂塵が濃くなっていた

SS14をタイムアタックする勝田貴元。路面が舗装路と未舗装路が混在していた。未舗装路部分はラリーカーが通り過ぎるたびに砂塵が濃くなっていた

SS14最後の出走車だったダイハツ コペンは日没後の暗い中でのタイムアタックとなったSS14最後の出走者だったダイハツ コペンは日没後の暗い中でのタイムアタックとなった

 今回のラリージャパンは公道でスムーズにラリーを進行していくことの難しさを浮き彫りにした。重大事故に発展する可能性のある出来事は徹底的に原因を洗い出してほしい。


2022年ラリージャパン リザルト

1位
#11 ティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組
ヒョンデi20 N WRCラリー1
ステージタイム:2時間43分52秒3

2位
#8 オィット・タナック/マルティン・ジュルペオジャ組
ヒョンデi20 N WRCラリー1
ステージタイム:2時間45分03秒4

3位
#18 勝田貴元/アーロン・ジョンストン組
トヨタGRヤリス ラリー1 ハイブリッド
ステージタイム:2時間46分03秒6

4位
#1 セバスチャン・オジェ/ベンジャミン・ヴェイラス組
トヨタGRヤリス ラリー1 ハイブリッド
ステージタイム:2時間46分15秒9

5位
#33 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組
トヨタGRヤリス ラリー1 ハイブリッド
ステージタイム:2時間47分57秒4

6位
#44 ガス・グリーンスミス/ジョナス・アンダーソン組
フォード プーマ ハイブリッド ラリー1
ステージタイム:2時間47分59秒7

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