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クルマ最終更新日:2023.06.19 公開日:2023.01.05

シンプルだが効果絶大!? 国交省が送迎バス置き去り防止装置のガイドライン策定。

2022年9月、静岡県で保育園の送迎用バスに置き去りにされた女児が死亡する痛ましい事件が発生した。これを受け、送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置が義務化されるが、国土交通省ではそのための安全措置のガイドラインを策定した。

文=原田磨由子
資料=国土交通省

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確認忘れをチェックすることで、置き去りを防ぐ

(c)blew_f – stock.adobe.com

 国土交通省は、送迎バスの置き去り防止を支援する安全装置の義務化に伴い、ワーキンググループを設置。現在の送迎バスの運用実態や、安全装置の開発状況などを踏まえたガイドラインを策定した。

ガイドラインは、置き去り防止を支援する安全装置として2種類の方式を想定し、それぞれが最低限満たすべき要件を定めている。2種類の方式のひとつは、確認忘れというヒューマンエラーをなくすための「降車時確認式」。運転者等が車内の確認を忘れていないかをチェックし警告するという方法だ。この場合、チェック自体は運転者等が行うことになる。

もうひとつは、カメラ等のセンサーで車内に残された子どもを検知する「自動検知式」。国土交通省は2023年4月から、この安全装置の装備義務化に向けた法令の整備と、ガイドラインの規定を満たす装置のリストを公表するなど、準備を進めている。

■装置の要件概要
(1)降車時確認式の装置の作動(押しボタン式など)
・エンジン停止後に、運転者等に車内の確認を促す車内向けの警報を発する
・置き去りにされた子どもがいないか、運転者等が確認しつつ車内を移動し、車両後部の装置を操作することで、警報を解除できる
・車内の確認と装置の操作が行われないまま一定時間が経過すると、更に車外向けの警報を発する

●降車時確認式の装置の考え方
運転者等が自ら押しボタンで警報を解除することで、車内確認を促す。また、操作することでのみ警報が停止するため、運転者等が車内確認を行わずに降車したと考えられる一定時間経過後に車外への報知も行う。

(2)自動検知式の装置の作動
・エンジン停止から一定時間後に、カメラ等のセンサーにより車内を検知する
・置き去りにされた子どもを検知した場合、車外に警報を発する

●自動検知式の装置の考え方
自動検知式の装置は、運転者等が確認を忘れた場合や、確認しても万一の見落としが起きた場合に有効だが、この装置の搭載をもって人による確認が不要となるものではない。自動検知式の装置は運転者等が車外にいる時に検知を行うことが前提なので、車外への報知のみでよい。

(3)両方式に共通の要件
・運転者等が車内の確認を怠った場合は、速やかに車内への警報を行い、15分以内に車外への警報を発すること(※自動検知式においては15分以内にセンサーの作動を開始)
・子どもがいたずらできない位置に警報を停止する装置を設置すること
・十分な耐久性を有すること(例:−30~65℃への耐温性、耐震性、防水、防塵等)
・装置が故障・電源喪失した場合には、運転者等に対してアラーム等で故障を通知すること。

●両方式に共通の考え方
降車確認式と自動検知式の装置は、それぞれ異なるヒューマンエラーへの対策。前者は運転者等に車内の確認を促し確認忘れを防止すること、後者は運転者等が確認を忘れた場合や、置き去りにされた乗員を見落としてしまった場合に車外に向けてその旨を知らせることを目的としている。よって、いずれかの機能を有する装置のみを装備したとしても、十分にヒューマンエラーを補完できることが期待されるが、装置としての共通のガイドラインが必要。

これで置き去り事故がなくなることを願う

2022年の11月に開催されたバス関連の展示会「バステク in 首都圏」でも見ることができたが、さまざまな企業がすでに置き去り防止対策の商品やサービス開発に乗り出している。装置の構造もそこまで複雑さはなく設置費用も補助される。義務化の対象となる幼稚園、認定こども園、保育所、特定支援学校など用の送迎バスは約4万4,000台とのことで、2023年4月の義務化に違反した園は業務停止命令の対象となる。

車内確認用と検知センサーでの置き去り防止策は、いずれも高い効果が見込めそうだ。まずは送迎バスでの置き去り事故を徹底的になくし、自家用車での置き去り事故防止の対策も進めて欲しいところだ。

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