たしかに私は高齢者だ。だからどうした!
JAF Mate読者から寄稿を募り、このたび8作品を大公開。この企画では、記事を多く読んでもらうほど、投稿者様への謝礼もUPします! 集計期間は5/10正午まで。気に入った記事は、ぜひお友達にも紹介してファンを増やしてあげてくださいね。※PV集計は終了しました。
それでは、ペンネーム・しげただ さんの作品をどうぞ!
いよいよ届いた高齢者講習の通知
満72歳で運転免許証の更新を迎える私に「免許の有効期間が満了する日に70歳以上の方は、高齢者講習を受講することが義務付けられております。」との通知が届いた。いよいよ来るものが来たかと早速、自動車学校に電話し予約を取る。
自動車学校には若い人があまりいないと観察しつつ、講習料5,600円を支払い、8人の高齢者と講習に臨む。奥様風の女性や一見紳士風、おっちゃん風の元気な人もいて艶やかなはげ頭には感心しきり。総じて浅黒、白髪で「みんな70代なんだ」と連帯感が湧く。
内容の濃い講習の数々、無事にクリア
まずはビデオで加齢により視野が狭くなったり、反応時間が遅くなる危険性を認識し、その後3人のグループに分かれて視力検査。動体視力は5段階で「3:ふつう」の評価。夜間やまぶしい光の下では「2:やや劣っている」は納得だが、通常、運転時は眼鏡を使用しているのに裸眼での検査はどうなんだ。
次は運転シミュレータ検査。黄色信号が出たらアクセルを離しすぐに踏み込む。赤表示では直ちにブレーキ、即加速。黄色や赤信号はともかく、急に青信号が出現するのは想定外で、思わずアクセルを離す。そう私は人間が素直なのだ。
その後は突然現れる矢印に従ったハンドル操作、画面の四隅に不意に出る「一時停止」、「パーキング」、「注意」等への対応。「一時停止」ではブレーキを踏み、すぐに通常走行に戻る。ハンドル転把の際「カタ」と音がするが、ふと気付くと年間走行2万キロと豪語した会社役員風の人物の反応が私よりも一瞬遅い、ブレーキ音も同様だ。それらの音が聞こえると遠慮がちにガッツポーズをする私がいた。諸君、小人だと言うなかれ…。
この「運転操作」の「選択反応」「注意配分」は「3:むらもなく平均的」の評価。悪くても「4」は行くだろうと思っていたが世の中そうは甘くない。思えば学校時代の通信簿もそんな感じであったか。
続いてはコースでの実車運転。高齢者の事故が急増している交通情勢を反映し車庫入れ後、急発進して10センチの段差を乗り越え、即急ブレーキという練習は得難い経験となった。以上で180分間の講習が終わり、晴れて「高齢者講習終了証明書」を手にしたのである。
気力・体力・歌唱力が支えだ。だからどうした!
私は週1回、近くの公園で自分なりの自主トレを行っている。なので「やや劣っている」とか「平均的」との評価は残念至極。時に脈拍の乱れを気にしつつ酷暑の日々は経口補水液を手に、厳寒期は使い捨てカイロをポケットにひとり続けてきた営為は一体何だったのだ。
だが待てよ、人生そう悪いことばかりではないぞ。かつて「じいじは髪の毛が消えている」と言われた頭には前立腺の薬のせいで産毛が生えてきたし、いつぞやは夜空を見上げ、人には聞こえないようひそかに「宝くじ当たれ」と唱えた瞬間星が流れて実際当たったよね、1億円じゃないけど3,000円が…。
今回の高齢者講習では多くのことを学び、安全運転に努めようと心に誓った。自分が「高齢者」であることも十分に自覚させられた。さりながら私には「気力」、「体力」そして「歌唱力」がある。この際、大きな声をあげて言いたい。 「たしかに私は高齢者だ。だからどうした!」と…。
投稿者:しげただ さん(神奈川県)