幻の阪神高速「大阪泉北線」が新たな姿へ。都市計画道路「天王寺大和川線」として期待される未来とは? 【いま気になる道路計画】
高速道路として日の目を見ることがなかった阪神高速道路「大阪泉北線」。その跡地は新たな都市計画道路「天王寺大和川線」の整備に活用されようとしている。廃止までの経緯と、新たな道路計画の進捗を追う。
大阪泉北線が果たせなかった夢
阪神高速道路「大阪泉北線」は、1981年(昭和56年)の都市計画決定を受け、昭和末期から平成初期にかけて整備を進めていたものの、2003年(平成15年)に事業を廃止した「幻の道路」として知られている。何故、事業を凍結ではなく廃止したのだろうか。
この「大阪泉北線」は、大阪市阿倍野区美章園1丁目(JR美章園駅付近)から住吉区山之内1丁目(JR我孫子町駅付近)までの南北軸として計画された。しかも、JR阪和線の高架化と連携して、高速道路の2階にJR阪和線、3階に大阪泉北線を設ける「高架一体構造」でつくる大規模な事業だった。
きっかけとなったのは、1995年(平成7年)に発生した「阪神・淡路大震災」だった。これを機に高架一体構造を見直すことになったのだ。そして、1998年(平成10年)以降は工事を休止。地下化などを検討するものの、2003年に事業廃止を決定。
理由については、高架一体構造の見直しに伴う事業費の増大と工期の長期化、その他、交通需要の減少や他路線による代替が可能といった見解があった。なお、JR阪和線は、2006年(平成18年)に美章園~杉本町間の全線高架化を実現している。
「大阪泉北線」の事業廃止後、都市計画決定した「天王寺大和川線」は、この高架化したJR阪和線の側道に都市計画道路を整備するというもの。高速道路ではないものの、大阪市域南部の南北軸として道路の整備を進めることになったのだった。
天王寺大和川線に寄せられる期待
「天王寺大和川線」は、阿倍野区天王寺町南1丁目から住吉区山之内元町を結ぶ、全長約5.5kmの都市計画道路として計画されている。気になる事業の進捗だが、用地取得や基本設計案の作成は進んでいるものの、計画全体の進捗は停滞気味だ。住民説明会ではさまざまな意見が寄せられており、関係機関との協議が続いている状況である。
「天王寺大和川線」が完成すれば、「大阪泉北線」が担うはずだった大阪市域南部の南北軸の役割を引き継ぎ、交通利便性向上や地域の活性化などに寄与することが期待されている。
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