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最終更新日:2024.12.20 公開日:2024.12.20

なぜスズキ「スイフト」は若者にも人気なのか? 海外市場でも強い理由を探った!【クルマの経済学】

海外市場で売れているスズキの新型「スイフト」は、日本の若者にも人気があるという。若年層にはSUVが好まれる傾向にあるなか、なぜコンパクトハッチバックのスイフトが支持されているのだろうか? 自動車ジャーナリストの山崎 明氏がその理由を探る!

文=山崎 明

新型スイフトの国内での人気ボディカラーは、1位がピュアホワイトパール、2位がフロンティアブルーパールメタリック(写真)、3位がスターシルバーメタリック。写真=スズキ

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なぜスイフトはグローバルで支持される?

2023年12月、新型スズキ・スイフトが発売された。スズキの資料によれば新型は4代目にあたり、初代は2004年に発売とある。しかし実際にはスイフトという名の車は2000年に発売されている。

ただし、このモデルは現在のスイフトとはイメージの異なるややSUVテイストのモデルで、海外ではイグニスという名で販売されていた。イグニスは一旦消滅するものの、その後小型SUVとして日本でもイグニスの名で販売された。つまり日本における初代スイフトは初代イグニスなのだが、グローバル視点では2004年発売のスイフトが初代スイフトということになる。

スズキは日本では軽自動車がメインのため、登録車のスイフトはそれほど目立った存在ではないかもしれないが、グローバルでみればスズキの屋台骨ともいえるメジャーな車種なのである。生産台数は2004年から現在までで900万台に達している。日本でも年間2.5万台ほどが売れており(スイフトスポーツ含む)、Bセグメント車としてはマツダ2とほぼ同等の販売台数である。

しかし世界では年平均45万台も売れているわけで、日本での販売はあくまで一部というわけだ。スイフトは日本を含めて170の国と地域にて販売されているが、販売台数が多いのはインド、ヨーロッパだ(現在、スズキはアメリカと中国では四輪車の販売はしていない)。

スズキの新型Z12E型エンジンは特別なメカニズムを使うことなく軽量化と効率アップを徹底的に追求している。

このような特徴を持つスイフトだから、この4代目の新型も当然グローバルモデルとして開発されている。基本的にどの国も同じスタイル、同じエンジンで販売されるのが前提である。走行性能が重要視されるヨーロッパ、耐久性やコストが重視されるインド、ファッション性も重要な日本とすべての市場のニーズを満足させないといけないという、非常に難しい車種でもある。また時代の要請から、CO2の削減(=燃費の低減)も重要課題である。

この新型スイフト、販売は好調に推移しており、日本では2024年1-6月で前年比32%増となっている。しかもこれはスイフトの販売台数の約3割を占めるスイフトスポーツはまだ旧型のままという段階での数字である。

新型スイフトの販売動向で特徴的なのは、Bセグメントハッチバックとしては異例なことに若年層の購入比率が高いということだ。現在、日本のBセグメントハッチバック車のユーザー層は50代以上がメインだが、スイフトは40代が平均と明確に若く、20~30代の若年層も3割を占めるという。現在、若年層はSUVがメインとなっているのだが、スイフトに限っては小型ハッチバックであっても支持されているのである。

スイフトのMTモデルに需要あり!

またトランスミッションはオートマチック(AT)だけでなくマニュアル(MT)も選べるのも特徴だ。スイフトはグローバルモデルなので、今でもMT需要が多い地域のためにMTモデルは必要不可欠なのである。ヨーロッパでは今でも7割がMT車ということだ。ちなみにトヨタ・ヤリスとホンダ・フィット(ヨーロッパではJAZZという名称で売られている)は環境性能重視のためヨーロッパではハイブリッドのみとなっており、MT需要の多いヨーロッパでもMTは販売されていない。

日本では新型スイフト購入者の約1割がMTを選んでいるという。スイフトのスポーツモデルであるスイフトスポーツはまだモデルチェンジしていないが、現行モデルではなんと約6割がMTを選んでいるらしい。現在、日本のMT比率は1%少々らしいので、この数字は驚異的である。日本で売られているMT車の多くはこのスイフトとマツダ・ロードスター(7割以上がMT)の2モデルで占められるのではないだろうか。

2025年2月に生産を終了する現行モデルの「スイフトスポーツ」。購入者のトランスミッション比率は6段MTが約6割、6段ATが約4割だという。写真は特別仕様車「ZC33S Final Edition」。

なぜスイフト購入者は若年層が多く、MT比率も高いのだろうか。私の20代後半の息子もクルマの購入を検討しているのだが、有力候補のひとつがスイフトだという。息子は私の影響からか、MTにこだわりがあるのでMTが選べることが必要条件なので当然といえば当然なのだが。

この理由を探るために、新型スイフトを4日間にわたって借り出し、じっくり試乗することにした。もちろん借りたのはMTモデルである(グレードは中間グレードのハイブリッドMX、ボディカラーはフレイムオレンジパール)。

今回試乗で借りた一台。エクステリアはスイフトらしさを残しつつ先進的なイメージも感じられるデザイン。新旧スイフトでユーザー構成を比較すると、先代モデルは女性ユーザーが3割弱だったのに対して、新型は3割強となり、女性ユーザーが増加しているという。

スイフトを選ぶ人は運転が好き?

走り出してまず感じることは、身のこなしが軽いということである。パワーがあるわけではないが、走りが軽快でコーナリングがとても楽しい。カタログを見ると車重はなんと920kg、軽さが売りの私のND型ロードスターより100kgも軽いのである。ヤリスは980kg、マツダ2は1040kg(共にガソリンのMT車)なので、MTを選べる競合車と比較してもかなり軽い。車重は軽くても安定感はあり、ステアリングフィールなども欧州車と遜色のないレベルである。この走りであればヨーロッパでの評価も高いことも理解できる。私の息子も試乗し、久しぶりのMT車の運転で車の運転の愉しさを再認識したようだったが、単にMTだっただけでなくスイフトであったこともその印象を強めることになったと思う。

これでスイフトが選ばれる理由がほぼ明確になったと思う。スイフトを選ぶ人は運転が好きな人だということだ。この軽快感は他車では味わうことのできない、唯一無二のものなのである。

久しぶりにマニュアル車の運転を楽しむ筆者の息子(20代)。

初代から続くスイフトらしいスタイリング

スイフトが運転好きの若者に選ばれる理由は他にもある。まずはスタイリングだ。選択理由としてスタイリングを上げる人も多いらしい。新型スイフトは初代スイフトから続く、一見してスイフトとわかる鏡餅スタイルのデザインアイデンティティを維持している。デザイナーはスイフトらしさを守りつつ新しさ、先進感を感じさせることに苦慮したという。

たしかに、シンプルでありながら欧州車に通じるような個性があって、積極的に選びたいと思わせるエクステリアデザインだと思う。ボディカラーも魅力的なものがラインナップされている。また新型はインテリアも2トーンとなってクオリティも向上しているように感じる。

藤沢~青山~お台場~藤沢というルートでの燃費データ。24.8km/Lという素晴らしい結果に。

さらに、試乗して驚いたのが燃費である。私の住む藤沢から青山~お台場を経由して藤沢まで戻るルートで24.8km/Lという燃費をマークしたのである。新型スイフトはマイルドハイブリッドという簡便な、ゆえに安価で軽量なハイブリッドシステムを採用しているが、それ以上に新型エンジンの効率の高さと軽さが効果を発揮しているようだ。新型のZ12E型エンジンは特別なメカニズムを使うことなく軽量化と効率アップを徹底的に追求したものである。またボディの空力性能にもこだわったということで、エンジン下や床下に空気抵抗を減じるための整流板が設置されている。この総合効果で、簡便なマイルドハイブリッドにもかかわらずフルハイブリッドに匹敵する燃費を実現しているのだ。

スイフトという車は従来の車の良さ、愉しさを維持した上で最高レベルの環境性能も持った車なのだ。しかも試乗したMTモデルの価格は192万2800円と、軽の上級モデルと大差ない価格で買えるのである。

スイフト、運転好きの方は一度試乗してみることを強くお勧めしたい。

スイフトの全長は3860mmと、Bセグメントの中でもコンパクトなサイズも魅力のひとつ。

SPECIFICATIONS
スズキ スイフト ハイブリッドMX|Suzuki Swift Hybrid MX
ボディサイズ:全長3860×全幅1695×全高1500mm
ホイールベース:2450mm
車両重量:920kg
駆動方式:2WD(FF)
エンジン:水冷4サイクル直列3気筒
総排気量:1197cc
エンジン最高出力:60kw(82PS)/5700rpm
エンジン最大トルク:108Nm(11kg・m)/4500rpm
モーター最高出力:2.3kW(3.1PS)/1100rpm
モーター最大トルク:60Nm(6.1kg・m)/100rpm
トランスミッション:5段MT
価格:192万2800円

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