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最終更新日:2024.09.06 公開日:2024.09.05

なぜ関越道は首都高と「直接」つながらない? 幻の「10号練馬線」の構想に夢を見る。【いま気になる道路計画】

関越道と首都高はなぜ「直接」接続されていないのか。首都圏屈指の渋滞ポイントとなっているここに、実は、首都高の中央環状線と関越道の練馬ICを接続する「首都高速10号練馬線」という幻の道路の構想が存在している。一体どんなものなのか、そしてなぜできないのか。

文=宮本 奈々(KURU KURA編集部)

関越道と首都高が「直接」つながってない理由

首都高と接続していない練馬IC。(c) gosaro - stock.adobe.com

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東名高速は3号渋谷線と、中央道は4号新宿線と、東北道は川口線と、常磐道は6号三郷線というように、関東の主要な高速道路は首都高と「直接」接続している。ただし、関越道を除いては……。

首都高から関越道に向かうには、いったん一般道を経由して練馬ICから入るか、外環道の大泉JCTから合流するしか方法がない。しかも、付近の一般道である環七や環八、目白通りは混雑しやすく、首都高から外環道を経由して向かうのも遠回りなうえ通行料金もかさむ。

首都高速道路の中央環状線と関越道の練馬ICが接続していれば……。(画像:首都高速道路の路線図を元に作成)

もし、関越道が首都高3号渋谷線と接続する東名高速のように、首都高とダイレクトにつながっていれば、わざわざ一般道を走ったり、遠回りしたりしなくてもスムーズに行き来できるはずなのに。首都圏の高速道路を利用するドライバーなら一度ならず、二度、三度は思ったのではないだろうか。

そんな誰もが「あればいいのに」と思うこの道路、実は構想自体は存在している。それが「首都高速10号練馬線」だ。

幻の「高速10号練馬線」の構想

関越道と首都高を結ぶ高速10号練馬線の構想で考えられているのは、中央環状線の池袋付近と関越道の練馬ICを接続するというルートだ。首都高側の接続箇所は、中央環状線の西池袋出入口の南、位置としては中央環状線と目白通りの交点付近。関越道側の接続箇所は練馬IC付近となっている。東京都の「都市づくりのグランドデザイン(2017年)」の資料でも、高速道路ネットワークの「検討路線」として明記されている。

首都高速10号練馬線の路線図。(画像:東京都の都市づくりのグランドデザインより抜粋)

時間を遡ると、高度経済成長期の延伸計画図にも「10号線」の計画を確認できる。当初は、5号池袋線の途中(早稲田あたり)で分岐し、中央環状線と接続し、さらに関越道の練馬ICと接続する構想だったというのだ。

この東京都市整備局の資料では高速10号線は高速5号池袋線の途中で分岐している。図には幻の内環状線の文字も。(画像:東京都市整備局)

ここで、現在の早稲田出口を見てみたい。江戸川橋のあたりで本線と分岐。そのまま神田川上を高架で遡上して鶴巻町の交差点に流入するつくりとなっている。実際に早稲田出口で下りてみればわかるが、出口にしてはやたら長い。当初、計画された高速10号練馬線の分岐点としてつくられた……ともいわれている。

首都高と関越道は接続されるのか

大規模な工事を経て開通した山手トンネル。(c) w_p_o - stock.adobe.com

高速10号練馬線は検討路線となっているものの、現状は「棚上げ」されており、事業の進展はみられていない。事実上の凍結といえるだろう。首都高も、都市計画などの諸手続は行われていないとしたうえで、計画の具体化については、今後、国や東京都によって検討されていくものと見解を示している。

明確な理由は明らかとなっていないものの、交通量、環境面、費用面、さらに困難を極めるであろう用地取得の問題が立ちはだかっていることは想像に難くない。

加えて、首都圏の道路ネットワークを構成する「3環状9放射(3つの環状の道路と9つの放射状の道路網の総称)」の計画で、特に都心の混雑を緩和するため、外環道をはじめとした環状の道路網の整備を積極的に推し進めていることも理由のひとつとして考えられる。現在工事が進められる外環道(大泉〜東名間)が開通すれば、練馬IC付近の渋滞も大幅に改善されるだろう。

3環状9放射の概略図。3環状の整備の遅れは都心の混雑を生み出した。(画像:国土交通省関東地方整備局)

そもそも、東名高速、中央道、関越道、東北道など、放射方向の高速道路の整備を急いだため環状道路網の整備が遅れた。それにより都心に用事がないにも関わらず、ただ通るだけという「通過交通」が集中し、慢性的な渋滞を引き起こすことになったという背景がある。

となると、この幻の高速10号練馬線の凍結が解除され実現に向けて動き出すのは、3環状の整備の後ということになるだろう。そこから用地の買収など、地道に事業を進めていくのだから、何十年後になるかもわからない。それでも、高速10号練馬線が検討路線となっている限り、その可能性は残り続ける。

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