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最終更新日:2021.06.15 公開日:2021.06.15

「ダマジカ」|第29回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課草食動物担当飯髙さんに、「ダマジカ」を解説してもらいました。

文・上條 謙二

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掌状角(しょうじょうかく)で角合わせ

ダマジカは、繁殖期を迎えるとオス同士が角合わせを頻繁に行うようになる。

 「ダマジカ」(別名「ファロージカ」)は、ヨーロッパ地中海沿岸から小アジア、イランにかけての森林や草原に生息する偶蹄目シカ科の動物です。体長は1.1~1.9m、体重は40~100kgほどあります。

 ダマジカの身体的な特徴は、手のひらのような形に広がる独特の形の角(掌状角)があることです。この形の角を持っているシカ科の動物はその他にトナカイやヘラジカなどがいます。

 シカ科の動物の角は「枝角」と呼ばれており、ウシ科の動物のように頭骨がのびたものではなく、頭骨の上にある角質がさまざまな形にのびたもので、一年ごとに生え変わります。シカ科の動物では、角があるのはほとんどがオスで、メスは持っていません(トナカイなどの例外あり)。オスはこの角を、メスを獲得するための戦いに使います。

 ダマジカも繁殖期を迎えるとオス同士の角合わせを頻繁に行うようになります。園内のダマジカも、頭を下げて、お互いがグイグイと、角と角を激しくぶつけ合います。

 「1頭と角合わせした後に、また別の個体と角合わせすることもあります。大きくて立派な角を持ったオスが戦いを仕掛けてくることが多い」そうです(※飯髙さん以下同)。

 また体に白い斑点があることも特徴の一つです。成獣の体の⾊は、多くの場合⾚みを帯びた薄い灰⾊で胴の側⾯部に⽩の斑点がありますが、⽩⾊や焦げ茶⾊の個体もいます。また体色と関係なく、尾の裏側は白くなっています。

ゲップのような鳴き声⁉

ダマジカは、4〜6⽉にかけて年に1回1頭の⼦供を出産する。

 野生下のダマジカは、森林や草原で群れを作って生活します。オスはふだん単独で行動していますが、繁殖期を迎えるとオスは群れを形成して縄張りをつくり、そこを訪れたメスと繁殖を行う形式をとります。

 群れを作って暮らすダマジカは、相手の尻の匂いを嗅いで仲間同士のコミュニケーションをとります。お互いの匂いを嗅ぎ合って、仲間として認識し合いながら、徐々に関係性を築き上げていきます。

 ダマジカのオスが他の個体(メス)の匂いを嗅いでいるとき、時折上唇を反らして歯を露出させる行動をとることがあります。これは「フレーメン反応」と呼ばれるもので、尿や各分泌腺などからの分泌物中に含まれるフェロモン物質を鋤鼻器(じょびき)と呼ばれる器官に送りやすくするためにとる行動と考えられています。匂いに反応して行う生理現象で、ダマジカ以外の他の動物でも生殖行動の一つとしてよく見られます。

 またダマジカはコミュニケーションをとるのに鳴き声を出すことがありますが、大人の鳴き声は鼻が詰まったような、くぐもった声を上げます。「例えるなら人間のゲップのような鳴き声」で、オスだけがこの声を発して、メスは出しません。とくに繁殖期になると多くなります。

岩陰の子供を見つけるのに一苦労

ダマジカは、オスは早くて生後17か月、メスは16か月ほどで成獣となる。

 そんなダマジカは、どんな性質の動物なのでしょうか? 「基本的に活発で、警戒心はそれほど強くない」そうです。園内でもエサを求めて歩き回り、エサをあげると近寄ってくることが多い、人懐こい面のある動物です。

 最後に「ダマジカあるある」についても伺いました。

 それは「子供を岩陰に隠すようにして生むので、子供探しに一苦労すること」だそうです。草食動物のダマジカは、赤ちゃんのときから、本能的に身を隠す習性が身についており、岩陰でじっとしていることが多いです。しかも体の毛の色が灰褐色だったりするので岩の色に溶け込んでなかなか見つけることができません。

「ダマジカは、大人のオスでもふだんは割と臆病ですが、発情期になるとそれが一変して、激しくオス同士は角合わせをします。いつもと違って戦闘的な面もあることに驚かされます」と飼育担当の飯髙さん。

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