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最終更新日:2020.05.20 公開日:2020.05.20

「ライオン」|第3回アニマル”しっかり”みるみる

世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの面倒をみる飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークで肉食動物を担当する仁科さんに、「ライオン」を解説してもらいました。

JAFメディアワークス IT Media部 上條 謙二

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ネコ科なのに「群れ」で暮らします

ライオンのオスは独占欲は強いものの、メスにはとても気を遣うのだという。

 ライオンという動物種に特有の習性って何でしょうか?

「それは、ネコ科の動物には珍しく『群れ』をつくることです。富士サファリパークでは、一つの群れに、2~3頭のオス(兄弟のことが多い)とその周りに10頭前後のメスで構成されています」と仁科さん。

 よく考えるとライオンって不思議です。個人主義の権化みたいなネコ科の動物でありながら、協調性がなによりも求められる群れという集団を作るのですから。群れで暮らす習性を身につけた理由は縄張りを守るためと考えられているそうですが(諸説あり)、人間関係ならぬ、ライオン関係(!?)がうまく築けるものなのかと仁科さんのお話を伺っていてつい要らぬ心配をしてしまいます。

 そんなライオンですがそれなりに気遣いはしているようで…。

「オスはメスに執着があって独占欲が強いのですが、その一方でとても気を遣っています。ペアのメスが少しでも動こうとしたら立ち上がって道を譲ったり、その先にオスがいようものなら自分の相手だからと主張します。ウォーキングサファリのエサあげのポイントでは、自分のペアのメスがエサを取りやすいようにスペースを確保してあげたりもするんです」(仁科さん※以下同)

 また群れで狩りをするだけに、狩りを意識した行動がよく見受けられます。 「例えば、一頭が落ちている小枝をいじっていると他の個体がそれを奪おうとしてお互いで引っ張り合うような行動が見られます。また若い個体同士が、他の個体の背後から近寄ってとびかかるような行動もよく見られます。これらは狩りのシミュレーションともいえる行動です」。

 そういえばネコもそれと似たような行動をよくしますね。

 群れ同士の存在を示すための行動というのもあるとのこと、「『咆哮(ほうこう)』というんですが、朝方夕方、遠くに向かって野太い声で鳴き合うんです。一頭あたり、少なくて3~4回、普通は10回程度。数分間ぐらい続きます。サファリゾーンから数百m離れた入口付近の駐車場でも聞こえることがあります」。

 ネコも発情期を迎えると大きな声で鳴くことはありますけど、ライオンの場合は群れの存在を示すために吼えるんですね。

ネコと共通するこんな行動!

余分な体力を消耗しないよう、昼夜を問わずライオンはよく寝る。

 ネコと似たような習性・行動はまだあります。

「ネコと同様、水浴びすることを嫌がります。自分の臭いが消えてしまうのが嫌なんです」。結果、夏場のライオンは獣特有の体臭が強くなるそうです。

 ライオンもネコと同様に長時間寝ていることが多いそうで、 「1日のうち20時間くらいは寝ています。つまり残りの4時間が獲物をしとめるために費やす時間というわけです」。

 自然界は毎日十分な食事にありつける環境ではないので、余分な体力を消耗しないために寝ています。獲物をしとめられるチャンスが来た時のために体力温存というわけです。園内のライオンは、朝方と夕方が一番活発に動く時間帯とのこと。

 あと赤ちゃん時代の鳴き声ですが、ネコにかなり似ていて可愛らしい鳴き声だそうです。

すべてが可愛すぎる! 赤ちゃんライオン

赤ちゃんライオンの鳴き声はネコのような声。

 猛獣として認知されているライオンですが、赤ちゃんのうちは別。体のつくりから違っています。大人のライオンは全身が筋肉質でがっちりして力強いのですが、生まれて間もない赤ちゃんのうちは筋力もなく、生後3週齢くらいでようやく歩けるようになるそうです。

「赤ちゃんの体毛はふわふわ。そして鼻がピンク色。それが大人になると黒く変わっていきます。瞳の色も赤ちゃんのときは『キトゥンブルー』といわれる青っぽい色。それが大人になると黄色や金色に変わります」。

 赤ちゃん時代(若い個体も)には、体に斑点が残っています(自然界でのカムフラージュのための柄)。また仕草も違ってきます。大人の精悍な表情に比べて赤ちゃんの表情はとろんとしており、また自分の動きがうまく制御できなくて尻もちをついてしまったりするそうです。

「とくにミルクを飲んだ後の赤ちゃんのお腹には注目。タプタプに大きくなったお腹がとても愛くるしいです」。

富士にはサンショウバラがよく似合う

富士箱根地区で見られるサンショウバラの花にそっと近寄るオスライオン。

「ライオンの親子は顔だけでなく性格まで似ているのが面白い」と仁科さん。

 ライオンあるあるについても聞いてみました。

「ライオンの赤ちゃんの顔ですが、親の顔に似ています。おまけに性格まで似ているんです」。

 親子で顔や性格まで似てくるっていうのは、人間と変わりないようですね。

 6月の園内では、このあたり(富士箱根地区に分布)の山地で咲く「サンショウバラ」の花が見ごろとなります。淡いピンク色をした一重咲きの花で、バラというよりもフヨウやツバキに似た形をしています。幹は太く草というより木で、バラ科の植物にお決まりのとげがあちこちに生えています。ライオンがこのサンショウバラによく近づいていることがあるそうです。

 実はライオン、花を愛でるのではなく、とげのある木に体のかゆいところを擦りつけるのが目的で近寄っているんだそうですが。

※富士サファリパークは、当面の間、新型コロナウイルスによる感染症の流行拡大を受けた政府の緊急事態宣言の発出に伴い臨時休業中です【2020年5月20日現在】

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