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最終更新日:2020.09.10 公開日:2020.09.10

【くるくら座談会】アフターコロナのクルマがどうなるか考えてみた。【前編】

新型コロナ対策で、生活や仕事のスタイルが大きく変わるなか、マイカーやモビリティは今後どうなっていくのか? クルマの最新技術とライフスタイルを研究している三菱総合研究所の杉浦孝明氏と、カーナビやETCなどの開発に長く携わってきた浮穴浩二氏、それとくるくら記者の3名で、アフターコロナのクルマと車社会について考えました。

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 車のある豊かな暮らしを提案する情報サイト『くるくら』の「くるくらカーライフ座談会」。その第1回目は、今、最も気になる新型コロナウイルス感染症をテーマに、コロナ禍がクルマやこれからのモビリティーをどう変えていくのか、また今後どのような車種やサービスが人気になるのかを考えてみました。

 参加するのは、クルマやモビリティに詳しい2名の専門家と、これからの生活がどう変わっていくのか気になっている30代のくるくら記者。ちなみに、座談会とはいっても、密を避けてオンライン座談会で実施。新しいアイデアも、いろいろでてきました。

杉浦孝明(すぎうら たかあき):1995年、株式会社三菱総合研究所に入社。ITS、自動車の情報化、カーライフスタイル、自動車を起点としたビジネス開発を専門に各種コンサルティング、メディアなどで活躍中。with コロナにおける自動車や社会機能に求められる要件についても研究している。現在、同社営業本部 副本部長。趣味はヒップホップダンス。

浮穴浩二(うけな こうじ):大学時代は医学系と工学系の二分野を学ぶ。1970年、松下電器産業株式会社に入社。通信車載系ITSとして、ナビ、緊急通報システム、TELEMATICSシステム、ETCなどの開発に黎明期から携わった。現在はUKコンサルタント代表として、ITS関連の海外調査や、企画事業のコンサルティングなどで活躍中。趣味は海釣り、旅行食べ歩き、菜園など。

コロナ禍ではクルマのメリットが大きい。特に軽自動車に注目!?

くるくら記者(以下、記者):新型コロナの影響はさまざまですが、クルマに関係するものでいうと、公共交通機関よりも他人との接触を避けやすいことから、マイカーの利用が注目されているように感じます。コロナ禍の中では、やはりマイカーにはメリットがあるのでしょうか。

杉浦孝明(以下、杉浦):新型コロナの感染が拡がり始めて半年ほど経った今、世の中では活動を自粛されていたり在宅勤務など新しい働き方に対応したり、いろいろ苦労をされている状況になっていますよね。

 クルマという視点では、今回のような感染症流行が起きるとプライベートな空間をいかに確保するかということが重要な観点になってきます。都会では公共交通機関を利用することが一般的でしたが、こうした都会などにおいても、他人と隣りあわせになる公共交通機関と異なり、家族だけ、自分だけのプライベートな空間で移動でき、過ごすことができるマイカーの価値というのは、再度見直されてきているんじゃないかなと感じています。

浮穴浩二(以下、浮穴):今、杉浦さんが仰ってくれたことと似た話にはなりますが、私はITS、つまりIntelligent Transport Systemsという分野で、人とクルマそして道路の間で情報全てをつなぐことで、交通を効率よく安全に、そして環境にも配慮していくことを目標に数十年やってきました。

 交通や移動が大切なのは、人が成長するためには、コミュニケーションを取って、意見をいい合うことが必要だと思うからです。直接会うことで成長していくものだと思っています。しかし今回、自粛で人と会わないようにという話が出てきて、私は何をやっていたのだろうかという思いを強くしました。そんな中、公共交通を利用すると感染するのではないかという不安があるなら、自分のクルマで移動すれば安全ではないかと思うわけです。そしてこれからのマイカーは、今までと違った形に変化していくのではないかと考えています。

記者:私の周りでも、人には会いたくても、公の場に出ていくのが怖いという人が増えています。それでも仕事に行かなくてはいけない人や、通院などどうしても移動しなければいけない人たちもいて、そうした人達が安全に移動できるものということで、たしかにマイカーは安心感があるなと感じます。

 そして、今までマイカーに乗っていなかった人も運転するようになると、より使いやすいクルマが求められるようになると思っています。小さいお子さんがいらっしゃって運転に集中できないようなお母さんでも安心して乗れるクルマとか、世代や用途に合わせてカスタマイズしていけるようなクルマとか。今よりもっと生活に寄り添った気楽なマイカーが生まれてくれば、出かけなければいけない人達のストレスも、もっと減らすことができそうですよね。

 一方で、コロナ禍の前は、若者のクルマ離れが進んでいると盛んにいわれていました。そんな若者達が、コロナ禍をきっかけに、再びマイカーに興味を持つようになるのかも気になっています。

杉浦:若者と一言にいっても、20代、30代、あるいは既婚者、お子さんがいるとかご両親と同居されているとか、さまざまな立場によってマイカーへの感触は違うのかなと思うんです。若者の観点では、外出自粛があったものの、いろいろな場所に出かけたい気持ちが強いと思っています。人間って、移動して、場所が変わることで気分や気持ちが変わって、精神的にも活性剤としていい効果があると思うんです。実際、若者の車離れがいわれている今日においても、コロナ禍の公共交通や人ごみを避けるために、レンタカーを利用する若者も結構多いと聞いています。

 また、高齢の方と同居されている方や、小さいお子さんがいらっしゃる方でも、日常移動はクルマの方が安心して出かけられるという声も非常によく聞きましたね。

記者:そういえば、コロナ禍が問題になってから、新車販売は減りましたが、中古の軽自動車が売れているという話を聞きました。

杉浦:そうでしょうね。クルマの一番大事なところって、使いやすい道具だということだと思うんです。日常的に外出時の移動手段として使いやすいようコンパクトで快適なクルマの良さは、見直されてくると思うんですよね。たとえば、子どもを乗り降りさせやすいとか、狭い道でも走りやすい、狭い駐車場でも止めやすい。そういった要素は再評価されるようになってくるんじゃないでしょうか。

 そしてそれは、日本の自動車メーカーの得意な領域です。グローバルなマーケットにおいても、これから日本の自動車メーカーはその領域での競争ならアドバンテージも出てくると思います。

浮穴:超小型電気自動車では、コンビニなどが配達用に導入している「コムス」がありますね。あのような小型EVでかつ2人乗りできて、子どもも乗せられるとか、買い物かごが付いていて時速30~40kmぐらいで走行できるようになれば、日常的に買い物や子どもの送り迎えなどにも普及すると思うんです。

 ただ、そういった新しいクルマは、新しい制度や規則をつくる必要がありますし、制限速度をどうするか、クルマの安全性をどうするかなど、課題もあります。安全性が高いに越したことはありませんが、それで多くのユーザーが買えないほど高価になっては意味がないですし。

 ドイツの場合は、ベンツのsmartから小型モビリティの普及がスタートしました。駐車場でも、大型車が多い中、smart2台、1つの駐車枠に止まっているのをよく見かけます。smartくらいか、あるいはもう少し小さくて、車道で流れに乗れるぐらいの速度が出せる信頼性の高い電気自動車が出たら、日本の新しいビジネスとして世界に広げられるのではないかと思います。

記者:そういうコンパクトなクルマが出てきたら乗ってみたいですね。私は体が小さいほうなので、大きいクルマだとハンドルを持て余してしまったり、視界にハンドルがかかってしまうことが多くて困ってしまいます。女性のドライバーの方でも、そういう人は多いんじゃないかな。操作性も含めてコンパクトだと気楽に日常使いができるのかなと感じます。

 ただ、女性に多いのかもしれませんが、やはり車は怖いと思う部分もあるので、バイクやミニカーのように身体がむき出しではなく、通常のクルマのようにしっかりと囲まれたデザインの方が安心ですね。それに合わせて、交通ルールなどの規則も整備されて、小さくても車道を安心して走れるようになれば嬉しいなと思っています。

杉浦:小型モビリティの可能性もすごく高いと思いますが、日本の自動車産業がこれまで辿ってきた道を考えると、軽自動車って侮れないと思うんですよね。実際、今は軽自動車がすごく売れていますよね。最近は性能もかなり上がってきていて、コストパフォーマンスも良い。

 例えば、エアコンの装備とか、使いやすく見やすいカーナビなども含めて、機能が充実していますよね。日本の軽自動車ってすごく性能が良いはずなんです。新しい未来のモビリティを待つまでもなく、日本の軽自動車をグローバルに展開することはビジネス的チャンスが大きいと個人的には思います。

浮穴:昭和世代の感覚だと、軽自動車は安くて大衆的なクルマというイメージが払拭できずにいるのですが、これからの時代の若い世代にはそうした軽自動車のイメージは変わってくるということなんでしょうね。

記者:私が免許を取りたての頃は、「もし事故で横っ腹を当てられたら危ない」と親からいわれて、子どもには軽自動車を買わせたくない雰囲気がありました。知人の女の子でも、父親がそういうことをいうって人は多かったです。ただ、今となってみると、クルマを所有している友人は、ほぼ軽自動車を選んでますね(笑)。

浮穴:価格が安いからかな。

記者:それもありますが、価格よりデザインというか、コーディネートのひとつとして選んでいるのかなと思うところがあります。軽自動車って、小さくてかわいいデザインが多いので、特に女性にとっては、自分のイメージとコーディネートしやすいところがあるんだと思います。

 なので、今後マイカーが感染予防になるし、ウィズコロナやアフターコロナの生活様式の中で見直されていくと、今までのように「えっ、軽なの?」というネガティブな思いはなくなっていくんじゃないかと。自然にそういった流れになっていきそうです。私自身も、軽自動車のデザインの方がかわいいと思うことがあるので、日常的に乗るならかわいい方にしたいという気持ちは大きいですね。

クルマのエアコンフィルターが洗えるような手軽さをクルマにも

記者:アフターコロナは、マイカーのメリットが見直されそうですが、その一方で、クルマは密室ですよね。そうなると、1人で乗るときはいいのですが、複数で乗ると密になりませんか?

浮穴:空気質(※)を良くするための空気清浄機を、車内に導入する取り組みは既に行われているそうです。花粉やたばこの煙は、ほぼミクロン単位ほどの大きさなんです。PM2.5は、2.5ミクロンですね。そのくらいまで除去できる空気清浄機を使い、イオンも発生させて空気中を除菌することで対応してきました。でも、今回の新型コロナウイルスは50ナノといって、0.05ミクロンになる。それを除去できるものは、作られたとしても非常に高価なものになると思います。

 だから、窓を開けるとかで対応するしかないんです。飛行機だとジェットエンジンから空気を取り込んで、2分から3分で機内全ての空気が入れ替わる仕組みなんだそうです。クルマで同じことをするのは無理かもしれませんが、こういう技術や流体力学を応用して温度を維持しながら空気の入れ替えをできればいいですね。窓を開けてもいいんだけど、夏だとすぐに車内が暑くなって、冷やすのにまた燃料をたくさん使うことになりますからね。0.1ミクロン以下のものが除去できる空気清浄機の研究は進んでいるはずですから、車内に設置できるようになれば世界的に需要が高いものになっていくと思います。

※建物内等の空気中のガス成分量のこと

杉浦:社内でお子さんがいらっしゃる方も含めた、20代から40代くらいの女性に意見を聞くと、男性とは違った価値観や観点が結構あったんです。新型コロナのような病原体に感染しないための清潔さというのはもちろん、臭いや汚れにもすごく敏感でした。あとは、例えば夏だと日焼けしないとか、肌が乾燥しないようなクルマとか。新型コロナの感染予防の観点からも、女性ならではの衛生的なこだわりがさらに強まったように感じてるんですが、女性の視点で、クルマにこんな機能があったらいいなとか、ありますか。

記者:今は、電車の窓が全部閉まっている方が気になりますが、エアコンが強力なので窓を開けても涼しいですよね。でも、クルマの場合は暑くなるので、開けたくないです。車内が涼しくないと、出かけるためにメイクしたのに汗をかいてしまうし、マスクだけでも化粧崩れはあるのに嫌だよねという話は、周りの友人ともします。とはいえ、感染は避けたいし、先ほど話に出たような空気清浄機が早くできるといいですね。

杉浦:たしかに、浮穴さんのお話にもあったように、今までのクルマって、内気循環と外気を取り込むスイッチはあっても、強制的に外気と内気を入れ替える機能は、あまり想定されていなかったですね。

浮穴:そうですね。ただ今後は、飛行機のように10分に1回ぐらいは、自動的に全ての空気が入れ替わるシステムができる可能性はありますね。

記者:強制的に外気と内気を入れ替える場合、ウイルスや花粉とかを除くフィルターも大切だと思うのですが、交換の回数が増えたり、高かったりして、それでまたお金がかかるのも嫌なので、気軽にフィルターを変えたりできるような方法はないでしょうか。

浮穴:技術的に0.5ミクロンぐらいまでは今の技術でもすぐにできるんです。花粉は30ミクロンぐらいあるので除去できます。0.5ミクロン以下のサイズは、除去することが難しいというだけで、既に技術が存在していますし、イオン化するなどさらに進化することで可能性はありますよ。あとはフィルターの値段のほかに、さきほど話に出た交換やクリーニングをどうするかですね。技術はあるけど、使いやすくするのが難しいと思います。

杉浦:ナビ、オーディオ、燃費などはクルマ選びの着眼点として認知されていると思いますが、エアコンやフィルターの性能を見ることは今まではありませんでしたよね。新型コロナをきっかけに、暑さ対策も含めて、そういう基本的な機能が見直される可能性ってあるんじゃないかと思いました。

記者:そうですよね。エアコンってフィルター掃除をしてないとカビ臭かったりしますよね。クルマ独特の臭いも、今まではしょうがないって思ってたところもあるんですけれど、もっと日常的に使うようになってくるとその臭いが嫌だ、耐えられないという人にとっては、家のエアコンみたいに、クルマのエアコンも自分でフィルター掃除ができるようになってほしいですね。

杉浦:それいいですね。日本の自動車メーカーの方にも、考えていただきたいですね。例えば、ダッシュボードを開けてガシャってエアコンのフィルターを取りだしたら、水洗いができるとか。自分で手軽にフィルターを入れ替えできるクルマがあったら、結構売れそうですよね。そこだけでも女性にも響きそうな気がします。

記者:ダッシュボードを開けて取り出せる手軽さって素敵ですね。

杉浦:エアコンの手入れって、自分ではなかなかできないですよね。ディーラーとか工場に頼めば、フィルター交換やガスの充てんとか、点検としてやってくれたりはしますけれど。臭いとかのことも考えていくと、気持ち的にもフィルターが水洗いでガシャガシャって洗えたらすごく気持ちいいですよね。

記者:自分で見て綺麗になったことが分かるのが、一番気持ちよいのでそうなって欲しいなと思いますね。なるでしょうか。なってほしいんですけれど。アフターコロナできっと売れますよ。でも、ならないかも。

杉浦:今日のこの座談会を日本の自動車メーカーの方や、エアコンシステムを開発・製造していらっしゃるサプライヤーの方が見ていらっしゃったら、是非作ってください(笑)。

後編は、「カーシェアの衛生面」と「アフターコロナにおいて求められるサービス」について語り合います。近日公開予定なのでお楽しみに!

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