「アジアゾウ」|第7回アニマル”しっかり”みるみる
世界中から集まったさまざまな動物たちを、間近で見て・感じられる施設がサファリパーク。そんなサファリパークで動物たちの世話をする飼育員さんに、知っておくとちょっぴり動物通になれるポイントを、 "しっかり" ご指導いただきました。富士山の自然豊かな環境にある富士サファリパークの動物展示課飼育担当の吉村さんに、「アジアゾウ」を解説してもらいました。
自由に器用に使いこなせる、長い鼻
大きな体に長い鼻。動物園の人気者のアジアゾウは、インド、ネパール、タイ、ラオスなど、東南アジアの森林地帯に生息しています。
その重い体を支えるためにアジアゾウの足のつくりには特徴があります。4本の太い足には、前足に5つ、後ろ足に4つのしっかりした蹄(ひづめ)があります。足裏は1~2cmほどもある厚いパッドのようになっており、体重の負担を和らげるクッションの役目を果たしています。
「しかも足裏の表面には亀裂のような溝があって、足にかかる重さを分散でき、地面をしっかりとらえられる仕組みにもなっています」(※吉村さん以下同)
またアジアゾウは体の各部分をとても器用に使いこなします。ゾウといえばその長い鼻が特徴ですが、大人のアジアゾウの長さは2mほど。実はゾウの鼻は、上唇と鼻の部分がつながって長く伸びたものです。鼻の中には骨がなく筋肉で構成され、全体を自由に動かせます。とくに鼻先の部位の動きは滑らか。
鼻を使って物を上手につかめるのは、鼻の先端上側に1つだけ角のような突起(指状突起)があって細かく動かせるから。人間の指のような機能がある部分で、「例えば地面に落ちている小さな枝やエサで食べるワラの細い1本も簡単につかめる」のだそうです。
アジアゾウの耳(耳介)は巨大で60~70cmほどあります。耳を澄ますときには広げて集音器のようにして使います。よく耳をパタパタさせるのは暑いときの体温調節のため。アジアゾウの耳には血管が網の目状に走っていて、血液を空気にあてて冷やす仕組みになっています。車のラジエターみたいですね。
それでも体を冷やし足りないときは水浴び。「とくに気温が高い夏場は好んで水浴びします」とのこと。
「パオーン」の鳴き声は、驚いたとき!
アジアゾウは頭がよくて温厚な性格の動物です。そのため古くから家畜として人間に飼育され、木材などの大きくて重い荷物を運んだり、人を背中に乗せたり、祭礼の行事に使われたりなど、さまざまな役務を担ってきました。
またアジアゾウは、仲間意識がとても強い動物なのだそうです。例えば施設内で工事があって大きな音がしたりすると、危険を察して速やかに真ん中に子供のゾウを配して、その周りを大人のオスが守るように丸く円陣を組んだりすることがあるそうです。
「力の弱い子供を守るために群れで統一した行動がとれる。こんな難しいチームワークがとれるのはコミュニケーション能力が発達しているからこそ」。
実はアジアゾウは人間の耳には聞き取れない低周波の鳴き声を発してお互いで会話しているそうです。アジアゾウの暮らすような森林や草地では、低周波の鳴き声はその音が通り抜けやすい特性があるので、コミュニケーションがとりやすいとの説も。
その他にも、長い鼻を使ってお互いの臭いを嗅ぎ合ったり、ちょっとした体の動きや尻尾の動きでコミュニケーションをとったりすることもできるそうです。
また、鳴き声(人間の耳にも聞こえる)にもいくつか特徴があるそうで、「驚いたときには、トランペットみたいな、いわゆるゾウの代名詞的な鳴き声の『パオーン』。怖がっているときには、腹の底まで響くような大きくて低い鳴き声」を出すのだそうです。
アジアゾウのオナラは、バイクのエンジン音!?
園内のアジアゾウは、「主に牧草(乾草)、ペレット(固形飼料)、野菜や果物(人参、バナナ、サツマイモなど)、竹や笹などを食べている」そうです。アジアゾウの1日の食事量は約100㎏前後。大きな体を維持するため1日の大半を食事することに費やさなければなりません。そのためアジアゾウの睡眠時間はそれほど長くないとのことで、園内のアジアゾウでは「平均で5~6時間くらい」。食事の量が多ければ、当然出る方も多くて、「1日30~40㎏くらいの量の糞をする」そうです。
最後に、「アジアゾウあるある」について伺ってみました。
その1、意外に臆病で、自分より小さい動物であっても怖がって悲鳴(!?)をあげること。「例えば普段見慣れない生まれたばかりの赤ちゃんラクダが目に入っただけで、怖くなって大きな鳴き声を出しながら逃げる」そうです。
その2、オナラの音がすごく大きいこと。「始終しているわけではないですが、最初に飼育に入った担当者はびっくりするほど大きいんです。音の感じは『バイクのエンジン音』みたい。臭いはあまりない」そうです。糞は結構臭いがあるそうですが…。