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最終更新日:2020.01.23 公開日:2020.01.23

トヨタはなぜ街を作るのか? 実証都市「コネクティッド・シティ」の狙いを考える

トヨタは1月6日、米国ラスベガスで開催されたIT家電ショー「CES(セス)2020」で、あらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」を東富士(静岡県裾野市)に設置すると発表した。トヨタが考える未来の都市とは如何なるものか。ITジャーナリストの会田肇氏がレポートする。

文・会田 肇

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トヨタ自動車がCES2020で発表した「コネクティッド・シティ」プロジェクト「Woven City」

「Woven City(ウーブン・シティ)」って何だ?

 新年が明けた1月初旬、米国ラスベガスでは毎年恒例となっているIT家電ショー「CES(セス)2020」が開催された。会期はわずか4日間でしかないが、そこに世界中160か国・4500社が出展し、18万人もの来場者が訪れた。そのCESで一際注目を浴びたのが、トヨタ自動車が発表した実証都市「コネクティッド・シティ」プロジェクトである。

 CESは元々、家電ショーとしてスタートしたイベントだったが、近年は電動化した自動車の登場をきっかけに自動車メーカーが相次いで出展するようになり、部品メーカーを含めた参加メーカー数はモーターショーを凌駕する勢い。その影響もあり、ほぼ同時期に開催されていた北米自動車ショーは6月に開催時期をずらさざるを得なくなったほどだ。今やCESが市場に与える影響は極めて大きいと言えるのだ。

「Woven City」ではe-Paletteが人やモノ、サービスの移動だけでなく店舗としても活躍する

 そこで発表されたトヨタの実証都市「コネクティッド・シティ」プロジェクトとはどんなものなのか。CES2020開催の前日に開かれたプレスカンファレンスでは、豊田章男社長が自ら登壇して説明を行った。それによると、街はCASE、AI、パーソナルモビリティ、ロボット等の実証を実施することを目的に建設し、街の名称は網の目のように道が織り込まれ合う街の姿から「Woven City(ウーブン・シティ)」と名付けられた。

建設地はトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)跡地を利用。初期は2000名程度の住民が暮らすことを想定し、将来的には約70.8万平方メートルにまで拡張する

世界がトヨタに注目した理由

 建設地は2020年末に閉鎖予定のトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)跡地を利用する。街の設計はデンマークの著名な建築家ビャルケ・インゲルス氏が担当。初期はトヨタの従業員やプロジェクトの関係者をはじめ、2000名程度の住民が暮らすことを想定し、将来的には175エーカー(約70.8万平方メートル)の規模で段階的に街づくりを拡張していくことを想定する。

 このプロジェクトの最大の特徴は、人々が実際に生活を送るリアルな環境の下で、自動運転をはじめ、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、AI技術などの導入や検証が行える実証都市のスタイルとしていることにある。つまり、この街では、技術やサービスの開発と実証のサイクルを素早く回すことで、新たな価値やビジネスモデルを生み出し続けることを最大の目的としているのだ。

「Woven City」ではあらゆるものがコネクテッドでつながり、サスティナブルなサービスが基本となる

街の設計はデンマークの著名な建築家ビャルケ・インゲルス氏(右)が担当する

 実はこうした街作りは既に米国や中国でも行われてきたが、それらは政府や自治体主導で開発され、そこに各企業が担当を受け持つ形で事業は進められてきた。つまり、今回のプロジェクトのように一企業がすべてを手掛ける例はこれまでなかったわけで、そこに世界が注目した理由がある。豊田章男社長は一昨年のCES2018で「今や自動車業界は100年に一度の大変革期にある。トヨタは単に自動車を作るメーカーにはとどまらず、自動車に関するあらゆるサービスを手掛けていく」と宣言した。それを具体的に実証していく場が「Woven City」というわけだ。

ラスベガスコンベンションセンターのノースホールに出展したトヨタ。ここでもメインは「Woven City」だ

インフラは燃料電池技術をフル活用

 構想では、街を通る道はカテゴリー別に大きく3つに分ける。一つはスピードが速い車両専用道で、「e-Palette」など完全自動運転かつゼロエミッションのモビリティのみが走行する道。二つ目は歩行者とスピードが遅いパーソナルモビリティが共存するプロムナードのような道。三つ目が歩行者専用の公園内歩道のような道。それらの道を網の目のように織り込ませることで、使い勝手までも考慮した街作りを目指すとしている。

 特にe-Paletteは単に人の輸送やモノの配達だけにとどまらず、移動用店舗としても使われるなど、街のさまざまな場所で活躍させる。街の中心や各ブロックには、住民同士もつながり合うことでコミュニティが形成されるよう、人々の集いの場となる公園・広場を作る予定だ。インフラは燃料電池技術をフル活用する。地下には燃料電池発電を行う施設を用意し、各戸の屋根には太陽光発電パネルを設置するなどして、環境との調和やサステイナビリティを前提として街づくりを進めていくという。

東京モーターショーでデビューした「新しい時代の愛車」を具現化したコンセプトカー「LQ」。他にも「ヒューマン・サポート・ロボット」など新たなロボットも出展した

 トヨタが年頭にブチ上げた壮大なプロジェクトについて豊田章男社長は「インフラを含めてゼロから作り上げることは、オペレーションを含めた将来技術の開発に向けてユニークな機会となる。バーチャルとリアルの世界の両方でAIなどの将来技術を実証すれば、街に住む人々や建物、車などモノとサービスが情報でつながることでポテンシャルを最大限引き出せると考える」と述べた。トヨタが描くコネクティッド・シティは我々にどんな未来をもたらしてくれるのだろうか。

CES2020のプレスカンファレンスで「Woven City」について説明する豊田章男社長

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