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最終更新日:2019.09.06 公開日:2019.09.06

ポルシェ初の電気自動車「タイカン」が登場。これまでのEVとは一体何が違うのか?

ポルシェは9月4日、同社初の電気自動車(EV)「タイカン」を発表しました。老舗スポーツメーカーが作る電気自動車とは一体どのようなクルマなのでしょうか。ワールドプレミアの会場のひとつとなった中国から、モータージャーナリストの大谷達也がレポートします。

文・大谷達也

電気自動車に対するポルシェの考え

 ポルシェ初の電気自動車(EV)「タイカン」が発表されました。しかも発表会はドイツ(ベルリン)、カナダ(トロント)、中国(福州)の3ヵ所で同日、同時に開催されたのです。

 なぜ、ポルシェは3大陸をつないで発表会を行ったのか。同社取締役のミハエル・シュタイナー氏に訊ねてみました。

「理由はふたつあります。ひとつは、ヨーロッパ、北米、そして中国が電気自動車の主要な市場と考えられること。もうひとつの理由として、ベルリンでは太陽光発電、トロントでは水力発電、福州では風力発電が盛んなことが挙げられます。電気自動車は自然エネルギーから生み出された電力を用いることで初めて価値あるものになります。そこで、この3都市で発表会を行うことにしました」

ポルシェAGで取締役 リサーチ&デベロップメントを務めるミハエル・シュタイナー氏

 EVが走行時にCO2を発生しないことはよく知られています。しかし、その電気を発電する過程では、自然エネルギー等で発電しない限りCO2が発生します。とりわけ石炭による火力発電はCO2の発生量が多く、発電時も含めたCO2の排出量は、よくできたハイブリッド車と大きく変わらないとさえいわれます。EVにはCO2を発生しない自然エネルギー由来の電力を用いるべきとポルシェが主張するのは、このためです。

 93.4kWhという大容量リチウムイオン・バッテリーを搭載するタイカンは1回の充電で最大450kmも走れる「足の長さ」が自慢です。バッテリー容量がおおむね80kWhを越えると400km前後の航続距離を実現できるようになり、長距離ドライブでの利便性がぐっと向上します。

 日本の高速道路は制限速度が基本的に100㎞/hなので、400kmを走るには4時間を要します。たいていのドライバーは4時間も走れば休憩したり食事をしたりしたくなるでしょう。そのついでに充電も行えば、EVでも効率よく長距離ドライブができることになります。

電気自動車になっても、ポルシェらしさは健在?

 このようなEVの先駆けはテスラで、ジャガーIペイス、アウディe-tron、メルセデス・ベンツEQC、そして今回発表されたタイカンなども同じカテゴリーに分類できます。私は、大容量バッテリーを搭載したこの種のEVのことを”第2世代EV”と呼び、それ以前のEVと区別しています。

 こうした様々なライバルが存在する長距離型EVのジャンルにポルシェは挑戦するわけですが、通常のガソリン・エンジンやディーゼル・エンジン(この種のエンジンのことを内燃機関と呼びます)を積む既存の自動車と異なり、EVではメーカーごとの特色が出しにくいともいえます。

 たとえば、ポルシェの代表的モデルである911は伝統的に水平対向6気筒という他にほとんどない形式のエンジンを用いていますが、前輪と後輪にそれぞれ1基、合計で2基のモーターを搭載するタイカンの駆動系レイアウトはテスラ(一部モデルを除く)、Iペイス、e-tron、EQCと共通です。

 タイカンに搭載されるモーターは、ポルシェが独自の改良を施した永久磁石シンクロナスモーターと呼ばれるもので、小型・軽量、高出力、高効率、高い性能安定性などを誇りますが、だからといって従来のエンジンのように「モーターの回り方がポルシェだけは違う」ということは起こりにくいと想像されます。つまり、EVはそれだけメーカーの独自性が打ち出しにくいのです。

 そこでポルシェは自分たちの伝統に徹底的にこだわったクルマ作りでタイカンを開発しました。停止状態から200km/hまでの加速を連続で26回行っても過熱などによる性能劣化がほとんど見られない点は、いかにもポルシェらしいといえます。公道を走るために作られた一般的な量産車は、サーキットを数周全開走行しただけで冷却が間に合わなくなり、性能低下を引き起こすケースが少なくありませんが、ポルシェの作るスポーツカーは何周走ってもあまり性能に変化が見られない強靱さが売り物です。それと同様の価値を、ポルシェはEVでも実現したといえるでしょう。

 ちなみにタイカンの0-200km/h加速タイムは10秒以下で、これ自体も驚くべき性能ですが、26回でこの発進加速を繰り返しても性能の低下は1秒以下の範囲だったそうです。ポルシェの首脳陣は「2、3回全開加速を行えばすぐに性能が低下する他社のEVとは大きく異なる」と自慢げに語っていました。

ポルシェ独自の強み、それは800Vの超急速充電システム

 800Vという高電圧で充電を行う電気系もポルシェ独自のものでる。従来は400Vが一般的でしたが、かりに充電時の電流量が同じとすれば、800Vシステムは従来の2倍のスピードで充電できます。

 これを生かし、タイカンはイタリアのナルドというテストコースで連続高速走行テストを実施。充電時間を含めて24時間で3425kmを走破しました。これには前述した800Vシステムが間違いなく威力を発揮しているはずです。

 なお、日本では法規制の問題などもあって800Vでの充電は当面できない見通しですが、一般的な急速充電の3倍に相当する150kwというパワーの充電器を用意し(現行のCHAdeMO規格では実行充電出力が50kw、次世代のCHAdeMO規格で150kwまで向上させる予定)、充電量80%まで30分ほどでチャージできるスピードを実現する計画だといいます。

 さらにはポルシェにとってはお馴染みのニュルブルクリンクでタイムアタックを敢行し、7分42秒というスポーツセダンEVの最速タイムを記録した模様です。

 ひと目見ただけでポルシェとわかるデザインが与えられたタイカン。ポルシェの個性がEV市場でどのように受け入れられるのか、今後の動向が注目されます。

【Specification】
ポルシェ タイカン ターボ S|Porsche Taycan Turbo S
ボディ|全長4,963×全幅1,966×全高1378mm
ホイールベース|2,900mm
車両重量|2295kg
電気モーター|永久磁石同期モーター(前後)
バッテリー容量(総合)|93.4kWh
最高出力|761PS(オーバーブースト時)
最大トルク|1050Nm(オーバーブースト時)
トランスミッション|前1段 後2段
駆動方式|AWD
サスペンション|前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
タイヤ|前265/35R21(101YXL) 後305/30R21(104YXL)
最高速度|260km/h
0-100km/h加速|2.8秒(ローンチコントロール時)
航続距離(WLTP)|412km
電力消費率|26.9kwh/100km
CO2排出量|0g/km
トランク容量|366リッター
定員|4名
価格|未定

ポルシェ タイカン ターボ|Porsche Taycan Turbo
ボディ|全長4,963×全幅1,966×全高1381mm
ホイールベース|2,900mm
車両重量|2305kg
電気モーター|永久磁石同期モーター(前後)
バッテリー容量(総合)|93.4kWh
最高出力|680PS(オーバーブースト時)
最大トルク|850Nm(オーバーブースト時)
トランスミッション|前1段 後2段
駆動方式|AWD
サスペンション|前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
タイヤ|前245/45R20(103YXL) 後285/40R20(108YXL)
最高速度|260km/h
0-100km/h加速|3.2秒(ローンチコントロール時)
航続距離(WLTP)|450km
電力消費率|26.0kwh/100km
CO2排出量|0g/km
トランク容量|366リッター
定員|4名
価格|未定

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