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最終更新日:2019.04.10 公開日:2019.04.10

一発試験で免許を取る!【その2】

自動車ライターを母に持ち、幼少時から多くの検定試験を受けてきたという筆者。超難関と言われる「一発試験」にあえてチャレンジする様子を自らレポート! 今回は【その2】をお送りする。

「一発試験で免許取得」の道は想像以上に険しいと実感することに。難しいとは聞いていたが、これほどとは!

「教習所に通わず免許を取る!」と誓いを立てて、一発試験での免許取得にチャレンジ。1月末には仮免許の学科試験に合格し、2月からは母の実家がある山口県で仮免許の技能検定を受けることになった。しかし、緊張したまま挑んだ1回目は不合格に…。

ここまでが前回のあらすじ。今回はその後の仮免技能検定の挑戦記をお届けしよう。

→教習所に通わず、一発試験で免許を取る!【その1】はこちら

3月4日午前 晴れ【2回目】

この日は大混雑だった運転免許試験場。およそ99.9%が指定教習所で技能検定を受けていることが、この写真からもお分かりいただけるだろう。

 3月1日が山口県の公立高校卒業式だったこともあって、この日の運転免許試験場はものすごく混んでいた。昨日までガラガラだったのに、いったい何事かと思いきや、試験場にやってきたのは大半が私と同じ18歳の若者たち。彼らは指定自動車教習所を卒業し、普通免許試験(本免許の学科試験)のために来ていた。同じ18歳だし、同志だと思いたいところだが、彼らはすでに自動車教習所を卒業し、ペーパーテストをクリアすれば晴れて普通運転免許証を手に入れられる立場。それに比べ私は仮免さえ合格しておらず、技能検定を受けに来ているのは、文字通り私だけだった。ポツンとひとり、勝手に孤独を噛みしめつつ技能試験の受付へ足を運んだ。

周囲は大賑わいにもかかわらず、ポツンとひとり技能検定の手続きをする筆者。

 2回目となる仮免技能検定は、初回と同じ検定員が担当だった。決して知り合いというわけではないが、前回お世話になっている人というだけで緊張感は全然違ってくる。もしかしたら、私はかなり運がいいのかもしれない。一度私の運転を見てもらっていることだし、2回目で合格できればかなり優秀な部類に入るはずだ。というわけで、ガチガチに緊張してしまった初回より、だいぶリラックスして本番に臨んだ。しかし、結果はまたもや不合格。

 1回目に指摘された「安全確認」や「停止線での停車」など、しっかりできていたはずなのに何故だ! 検定員に不合格となってしまった原因を聞いたところ「まず、ハンドルの回しが足りない」とシビアな指摘。そこを指摘されるとは思ってもみなかった。腕を交差させずにハンドルを回す「送りハンドル気味」になっているので、左右の腕をしっかりクロスさせてハンドルを回す「クロスハンドル」に変えなくてはいけないらしい。またハンドルさばき以外にも「一時停止した際の左右の確認は目だけでなく、顔を左右に動かす」など、いくつも細かい指摘を受けてしまった。

 2回目だというのに、1度目とは異なる指摘をあれこれ受けてしまったのは、正直ショックだった。かなり落ち込みかけたが、検定員から最後に「私も一発免許で取りましたよ。頑張ってくださいね」の一言をもらって少し心が温かくなった。

 考えてみると、検定員は通常だと不合格の理由以外に細かい指摘までしてくれないもの。だが、この時はまるで教習所の教官のように、多くのことを教えてくれたのだ。これらの指摘をありがたく受け入れて、次こそがんばろう!

3月11日午前 晴れ【3回目】

3度目のチャレンジの直前。送り迎えをしてくれた母親のクルマで、ハンドルの回しの特訓を受けているところ。母の指導の元、ひたすらハンドルの回し方を体に覚え込ませられた。

 2回目の不合格から1週間後、3度目のチャレンジに臨んだ。ここで何とか「3度目の正直」を実現したいところだ。今回はこれまで2回とは違う検定員だったが、若くてフレンドリーな雰囲気の方だったので、肩の力を抜いて臨むことができた。母の指導の元、ハンドルの回しは駐車場で地道にトレーニングを積んだおかげでうまく行った。「よし、今回こそは順調だ」と思いきや、あろうことか今度は交差点で大きなミスをしてしまった。

 なんと、交差点に入る直前で信号が黄色になったのだ。交差点よりある程度手前であれば、私だって当然ブレーキをかけた。しかし、黄色になるタイミングが遅かったため、そのまま通過しようとし、検定員に補助ブレーキを引かれてしまったのだ。検定はここで終了してしまった。

 実はこの時。私は「停まるべきか進むべきか」ものすごく迷った。だが、その時に頭をよぎったのが友人の経験談。私と同じく一発免許に挑戦した友人が「黄色で停まったら急ブレーキのようになって大幅に減点され、その場で検定が終了しまった」と言っていたのだ。私は事前にこの話を聞いていたので、黄色信号に気づいたものの「急ブレーキになるよりマシだ」と考えて交差点を通過してしまったのだ。

 ブレーキをかけるべきかの判断とタイミングは本当に難しい。友人は黄色信号でブレーキを踏んで不合格。私は踏まずに不合格になった。この日からしばらく、私には街中の黄色信号が、不合格へ足を引っ張る悪魔のように見え、朝食の目玉焼きを見るだけでドキッとする日々が続いた。

3月14日午後 晴れ【4回目】

4回目も今までとは違う検定員だった。検定員から呼ばれてコースへ案内される瞬間はいつも緊張が高まる。

 母の実家で過ごす日々も残り少なくなってきた。気持ちが焦る。

 そのせいか、これまで以上にギクシャクしてしまい、またもや不合格に。今回もこれまでとは別の検定員だったので「何がダメなのか」を改めて聞いてみた。「安全確認は問題ありません。良くできている」との答え。それよりも「ハンドルの回し方」がまだ完璧ではないとのことだった。またハンドルか、やれやれ。明日からまた、母親からハンドル回しのトレーニングを受ける日々が続くことになりそうだ。

 ちなみにこの日は、私以外に外国人の受験者がいた。米軍の人だったが除隊する(日本人と結婚して日本に住む)とのことで、日本の免許を改めて取得しなくてはならないそうだ。彼も「日本の免許は信じられないほど難しい! アメリカはもっとイージーなのに」と、肩をすくめて両手を広げるあのポーズで嘆いていた。

3月19日午後 晴れ【5回目】

何度も通った山口県総合交通センターとテストコース。これまで4度もチャレンジし、良くも悪くも見慣れた景色になってしまった。ここでの思い出を苦いものにはしたくない。帰京直前のラストチャンス、結果はいかに!

 これまでに同じ試験場で4度もチャレンジしてきた。それだけに、少しでも慣れたコースで今回を最後のチャレンジにしたい。このまま神奈川に帰ってしまったら、また初めての試験場とテストコースで受験しなければならなくなる。しかし、次に検定の申し込みができたのは前回から5日後の19日だった。本来の予定では、18日の夜に下関を発つことになっていたが、神奈川に帰る予定を繰り下げて、19日にもう一度だけ同じ試験場で検定を受けて帰ることにした。20日の午後には、東京で通っていた高校の卒業式があるので、19日が山口県で検定を受ける最後のチャンス。何としても合格して帰りたい!

 しかし、そんな思いも空しく5回目もまさかの不合格に。自分では慣れてリラックスしていたつもりだが、体の動きが付いてこなかったようだ。しかも、今回は検定中にエンストまでしてしまった。検定員は4回目と同じだったが、やはり「ハンドルの回しが足りない」との指摘を受けた。なんということだろうか。仮免検定に合格するどころか、母親のハンドル回しトレーニングからもまだまだ卒業できそうもない。

 ちなみにこの日、駅で偶然にも前回会った元米軍の人に遭遇したのだが、なんと彼は合格したそうだ。電車が来るまでの間、彼と日本の教習所の話をしていた。その中で、日本の教習所でかかる費用について話すと「30万円もかかるの? クレージーだね。アメリカならカースタントの養成スクールに通える金額だよ」と驚いていた。そして自分の一発免許の費用も30万円近くかかってしまったらどうしよう? という思いまで頭をよぎってしまった。

5度目の正直ならず。次の舞台は神奈川県へ。

 結局、2か月近く滞在していた山口県では、仮免の技能検定に合格できなかった。正直なところ、こちらにいる間に最低でも仮免許までは取れると思っていた。だが、その見込みは甘かった。

 私は幼少の頃からさまざまな資格試験に挑戦してきた。最も大変だったのは、小3の時に挑んだ英検準1級だが、それも5回目で合格している。仮免のための技能試験は、英検準1級以上の難関だったのである。

 今度は山口県から住民票を移し、神奈川で技能検定を受けることになる。神奈川県の場合、有料ではあるが試験場のコースで練習ができるのが大きなメリットだ。何度か自主トレをしてから、改めて技能検定に臨みたいと思っている。とはいえ、不慣れなコースで改めてチャレンジしなければならないのは大きなプレッシャーだ。

 ハンドル回しをマスターし、エンストにも気を付ける。そして、何といっても恐ろしいのが悪魔の黄色信号。不合格が続いたら、私の「一発試験」への挑戦そのものに黄色信号が灯ってしまいそうだ。

 絶望にひしがれた山口県を後に、次のステージとなるのは神奈川県。編集部からは「もう不合格編は掲載できません」とも言われている。心機一転、次回は「合格」の文字が躍る完結編レポートになるよう臨みたいと考えている。

2019年4月1日(雨輝・加藤博人)

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