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クルマ最終更新日:2023.07.07 公開日:2023.07.07

消防車のことを”ラフランス”と呼ぶ地域があるって、ホント?

ラ・フランスは洋梨のことだが、それがどうして消防車と結びつくのだろうか? 日本に唯一残っているという、あるクラシック消防車とともに紹介しよう。

文=岩井リョースケ(KURU KURA)

アメリカの大手消防車メーカーが由来?

消防車=ラ・フランスのイメージ写真。(c)Stanisław Tokarski - stock.adobe.com

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日本で消防ポンプ車の製作が始まったのは1939年ころで、それまでは海外から輸入していた。東京消防庁の記録では1911年に大阪府が初めてドイツのベンツ社から消防ポンプ車を輸入、1917年には東京”市”がアメリカから消防ポンプ車を初めて購入した実績があるが、このメーカーこそ「アメリカン・ラフランス社(ALF社)」である。

では、東京市の人が消防車をラフランスと呼ぶのかと言えば、そうではない。方言でそう呼ぶ地域とは、富山県富山市のことだ。

なぜこの地域限定かというと、富山市でも1921年ころからALF社の消防ポンプ車を導入していたから。当時、日本で普及していた消防車というのは、蒸気ポンプのように、蒸気機関の圧力で放水する装置を馬で引くタイプや手押し式のポンプが主流であったため、8人まで乗れて放水距離が39m、最高速度が時速80kmも出る消防ポンプ自動車のインパクトは相当なものであったハズだ。

こうして富山市では消防車というカテゴリーがメーカー名の略称で定着したそうだ。しかし、古い方言であるため今では一部の年配者にしか通用せず、ほとんど死語と化している。これは高級車のことをベンツと呼ぶ人がいるのと似たようなものだろう。他の地域ではラフランスと呼ばない理由には、アメリカ以外にもドイツやイギリスなどから消防ポンプ車を輸入した実績があるため、メーカー名では定着しなかったと思われる。

もう一つの謎、フランス原産のラ・フランスがなぜ社名に使われているかというと、共同創設者のトラクストン・スローカム・ラフランス(Truxton Slocum LaFrance)が由来となっている。ラフランスという名前は珍しい気がするが、これには本名の”Hyenveux(ハイエンヴ―)”がアメリカ人には発音しづらいと本人が知ったため、フランス移民人である本人が自ら改名したという経緯があるそうだ。

ALF社の1927年製の消防車。日本が1917年に輸入したクルマに近いモデルと思われる。(c)Stanisław Tokarski - stock.adobe.com

国内に現存する唯一のALF製消防車!

1962年製、American LaFrance社の900 Series Pumper。こちらはルーフが存在しないオープンキャブタイプ。

そもそも今回、なぜラ・フランスの話をしたかというと、6月に東京ビッグサイトで開催された東京国際消防防災展に、ALF社の消防ポンプ車が出展されていたからだ。この車両は同社の900シリーズのPumperというモデルで、アメリカのペンシルベニア州で1963年から2009年まで実際に活躍していた車両だ。900シリーズは1958年にALF社が発表したモデルで、同社を代表するシリーズとして、消防車ファンから根強い人気を誇っている。

ちなみにALF社は1832年に創業し、米国でも最も古い消防自動車メーカーのひとつであったが、2014年に惜しまれつつ事業を終了した。日本にあるALF社の消防車はこのPumperのみで、貴重な一台だそうだ。ギャラリーページにその他のディテール写真を納めているので、じっくりと眺めてみて欲しい。

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