光熱費の自給率100%を目指したモデルハウス。その秘密は高気密高断熱性。
広島県の坂本建設工業株式会社が、光熱費の自給率100%を目指したモデルハウスを11月23日にオープンした。太陽光発電をフル活用した高気密高断熱住宅で「365日、昼も夜も太陽の光で暮らす自給率100%」を目指すという。そんなことは可能なのだろうか?
広島県の坂本建設工業株式会社が、光熱費の自給率100%を目指したモデルハウスを11月23日にオープンした。太陽光発電をフル活用した高気密高断熱住宅で「365日、昼も夜も太陽の光で暮らす自給率100%」がコンセプトだという。
近年注目されている高気密高断熱住宅と、基準となる3つの数値を紹介!
光熱費自給率100%を目指す「S-Smart2020」とは
モデルハウス「S-Smart2020」は、太陽光発電10.98kw搭載、200V 設備(エアコン、エコキュート、IHクッキングヒーター)対応の9.8kwh大型蓄電池で、電気を買わない暮らしを実現(※400kWhで試算)する。遠隔でエアコン、エコキュートを操作できるHEMSも標準仕様として装備。太陽光発電と200V設備対応の蓄電池で「停電しない、電気を買わない、自給自足できる」EVステーション付スマートハウスとなっている。
電気を「作る」だけでは、光熱費自給率100%は実現しない。いかに消費電力を減らすかも重要だ。そこで、冷暖房用の電力を節減するための高気密高断熱性も重視。高断熱性能に優れたトリプルサッシを標準仕様とした。さらに、天井から足元まで室内の気温を25度に維持する気圧調整換気などのシステムを装備。これによって、冷暖房効率を上げ、住宅内の温度をすべて均一にすることを可能にした。気圧調整換気の副次効果として、花粉、粉塵、PM2.5などのアレルギー疾患も抑えることができるという。
太陽光発電をフル活用し、無駄な電力を消費しない高気密高断熱住宅「S-Smart2020」※写真はイメージ
高気密高断熱性を数値化した3つの値とは
ところで、「高気密高断熱」は「S-Smart2020」の専売特許ではない。夏の酷暑から住宅内の室温を守り、冬の冷気を室内に取り込まないために、ハウスメーカーが最も力を入れている住宅性能の一つである。気密性と断熱性を高め、外気温に影響されない屋内を作れば、冷暖房に使う電力が抑えられ、エネルギーロスが少ない住まいにすることができる。
高気密高断熱性は、C値、Q値、UA値と呼ばれる3つの値によって数値化されている。これらの数値は表記する義務はないものの、積極的に公表しているハウスメーカーや工務店は、高気密高断熱住宅に取り組む意識が高いといえる。以下に3つの数値がどのようなものかを紹介したい。
C値=相当すき間面積
「どれくらい家にすき間があるのか」を示した数値。住宅全体のすき間の合計面積を延べ床面積で割ったもの。C値が低ければ低いほど、すき間が少ない家=高気密な家であることとなる。この数値が公表されている12のハウスメーカーの数値を見ると、2.0~0.45の幅の数値が見られた。「S-Smart2020」(床面積000m2)では0.25となっており、非常に高い数値だといえる。
UA値=外皮平均熱貫流率
「どれくらい熱量が外に逃げやすいか」を示した数値。建物の外へ逃げる熱量を外皮(天井、壁、床、窓等)面積の合計で割ったもの。この数値が公表されている14のハウスメーカーの数値を見ると、0.87~0.25の数値が見られたが、「S-Smart2020」では0.41となっている。
Q値=熱損失係数
UA値と同様に「熱量の逃げやすさ」を測る値だが、さらに細かく数値化したものとなっている。換気によって逃げる熱も考慮して算出するため、冷暖房の料金まで考えた断熱性能を知りたい場合には、UA値よりもこちらが参照される。この数値が公表されている18のハウスメーカーの数値を見ると、2.7~0.51の数値が見られたが、「S-Smart2020」では1.2となっている。
これらの値は建物の構造や工法、使用される材質などによって大きく異なるため、平均値や目安の数値を出すことは難しい。とはいえ、いずれの数値も低ければ低いほど、高気密高断熱性が高いということになる。家の断熱性能を比較するためには、C値、Q値、UA値を並べ、最も数値の低い住宅が、高気密高断熱性に優れていることになる。住宅選びの指標として今後、さらに注目されることになるだろう。