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クルマ2018.06.08

【人とくるまのテクノロジー展2018】マツダ「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」

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マツダが展示した、次世代車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」に基づいて開発中のフレーム。研究で開発されたフレームは何種類もあるそうで、今回はその内のひとつが展示された。このフレームは、「アクセラ」の「5ドアハッチバック」タイプのものを改良したものだそうで、特にフロア部分はほぼ完全に別物に取り替えられているという。

 5月23日~25日に神奈川県・パシフィコ横浜で「人とくるまのテクノロジー展 2018 横浜」が開催された。内外の自動車関連会社597社がブースを出展、自社の技術をアピールした。

 マツダが展示した次世代技術のひとつが、車両構造技術「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE(スカイアクティブ-ビークル・アーキテクチャー)」だ。それに基づいて開発が進められているフレーム(基本骨格)が展示された。

マツダの求める次世代車両構造技術とは?

 「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」は、マツダのクルマ作りの核である「人間中心」の思想をさらに突き進めたコンセプトだ。人体がもともと持っているバランス保持能力を最大限に活かすことで、より快適で疲れにくく、環境変化にも即座に対応できる状態をもたらすことができるようなクルマにするのが狙いだ。

 そのため、タイヤ、サスペンション、ボディに加えて、シートまで機能を見つめ直し、クルマとして全体が最適となる視点で開発中だ。ドライバーの運転操作に対する身体バランスの取りやすさを突き詰め、マツダが常々唱えている「人馬一体の走り」における究極の感覚を目指して、開発は進められているという。

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「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」のポイントは?

究極の「人馬一体」を実現するためのコンセプト

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「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」の開発用フレームを全面右側から。ばね上とは、足回り以外のボディ全体を指し、その性能の中核となるのがフレームだ。ひとつのタイヤが路面から受け取ったショックがほかの部分にどう伝わるかといったことは、フレームの構造次第で変わってくる。それが走りに影響を及ぼすのはいうまでもない。

 「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」では、個々のユニットの進化という従来の軸に加え、人間の能力を活かすという新たな軸を設定し、これを極めることによって、人間が本来持っている能力を最大限に活用できるとする。

 人とクルマのコミュニケーションの密度をさらに高め、あたかも人が自分の足で走っているかのような感覚、クルマの存在を忘れるほどに無意識に走行できる、究極の「人馬一体(クルマとの一体化)」を目指して研究開発は進められいる。

バランス保持能力を発揮するために重要な要素はふたつ

 その実現には、人体のバランス保持能力を発揮させる必要があり、キーポイントはふたつだ。そのひとつが、一般的に「ばね上」とまとめて呼ばれる、ボディ全体(シャシー、エンジン、駆動系などを含む)が、あたかも球面上を動くように連続的かつ滑らかに動くことだとする。

 それを実現するには、4輪が遅れなく連動してエネルギーをやり取りすることが重要となり、次の3点が必要だ。

 1点目は、「ばね下」(サスペンションのスプリングに支えられていない、タイヤやホイール、ブレーキなどの足回り)のパーツからばね上に伝える力の波形を滑らかにすること。2点目目は、力の方向をぶれずに単純化すること。そして3点目が、4輪対角の剛性変動を抑えることとしている。

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そして、ふたつ目のキーポイントとは?

シートをばね上と一体で動かすためには?

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前列スペースを撮影。今回はシートは取り付けられていなかったが、シートの取り付け部は非常に重要。仮にシート本体の剛性が高められていたとしても、取り付け部が緩かったら、意味がない。車体からの入力エネルギーが素早く、滑らかにドライバーの骨盤(お尻)に伝わらないため、ドライビングに悪影響を与えてしまう。

 人体のバランス保持能力を発揮させるためのふたつ目のキーポイントが、シートだ。シートがばね上と遅れなく連動して、路面から伝わってくるショックなどの入力エネルギーを滑らかに骨盤に伝える必要があるとマツダは考えている。

 そのために必要なのが、シートの車体への取り付け部と、シート各部の剛性を高めることだ。それと同時に、ばね上から人体まで直線的に荷重が伝達するよう、内部機構の剛性も高められた。

 これらにより、ばね上(ここではシート以外のボディ部分)に対するシートのドライバーの骨盤(お尻)の位置における相対的な動作範囲が縮小。ドライバーの骨盤がばね上と遅れなく連動することができるようにしたことから、入力エネルギーを滑らかにかつ素早く骨盤に伝えられるようになったとしている。

 またシート自体にも、バランス保持能力をフルに発揮できるようにデザインされた。ドライバーの骨盤が立っていて脊柱がS字カーブを維持できる状態で着座できるよう、最新の人間工学的知見が構造に盛り込まれたのである。

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開発された次世代シートは、上部をしっかりとサポートして骨盤を立てることで、ドライバーの脊柱が自然なS字カーブを維持できる点が特徴。脊柱のS字カーブを維持できるようにするため、S字カーブ上部の胸郭重心部を包み込む形状にし、そして適切な硬さにしてあるという。さらに、クッションにも工夫が施されている。シートバックの腰椎部分も含めて、骨盤を包み込む形でサポート。クッション前部(着座面)で大腿部をサポートすることで、骨盤を安定して立てるよう制御している。イラストは、マツダブースの展示。

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ばね上の動きに対し、シートが遅れてしまうことをなくすため、シートの車体への取り付け部とシート各部の剛性が高められた。上図の(A)と(B)は、車体からの入力エネルギーが伝達する際の遅れを発生させてしまう部位であり、その剛性がアップされた。そして、(C)と(D)は、取り付け部の剛性など、伝達特性の変更点(ガタつき)をなくすための構造とした部位。剛性アップで、がたつきがなくなった。イラストは、マツダブースの展示。

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従来のシートに比べ、次世代シートが、ばね上に対するシートの骨盤位置における相対的な動作範囲が縮小したことを示すグラフ。どれだけ縮小したかというと、X方向で73%、Y方向で83%、Z方向で35%。イラストは、マツダブースの展示。

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フレームに多方向の環状構造を持たせることで剛性アップ!

多方向の環状構造で力の伝達の遅れをなくすことに成功

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現行モデルと次世代のフレームの細部の違い。「SKYACTIV」コンセプトの中のボディに関する「SKYACTIV-BODY」には、「フレームのストレート化と連続化」が掲げられている。「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」では、それが細部にわたってさらに推し進められた。現行モデルには存在しないフレームの環状構造、それも前後をつなぐものが各所に設けられ、4軸対角剛性の向上が実現したのである。イラストは、マツダブースの展示。

 入力エネルギーを遅れなく伝達するためにマツダが重視したのが、4軸対角(右F⇔左R、左F⇔右R)剛性の向上だ。そこで、マツダは路面からドライバーの骨盤まで伝わる、入力エネルギーの理想的な伝達経路を見極める一方で、「SKYACTIV-BODY(スカイアクティブ-ボディ)」の基本コンセプトを研ぎ澄ますことにしたという。「SKYACTIV-BODY」のコンセプトとは、「フレームのストレート化と連続化」だ。

 入力エネルギーが、フロントとリアの対角に位置するダンパー間を伝わる際の経路を、上下左右だけでなく、前後方向にもフレームをつなぐと同時に、フレームのストレート化と連続化をさらに推し進め、その結果となる多方向に環状構造を作ることで、4軸対角剛性の向上を実現したのである。

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現行モデルでは、フロント部分だと、カウルサイドとダンパー取り付け部に連続した骨格がないのだが、次世代フレームでは力の流れを解析した上で骨格を効果的に配置して、入力エネルギーの伝達率の向上が図られた。超高張力鋼板が使用されており、軽量化と剛性アップを実現した。

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後部で環状構造が新たに設けられたのが、リアダンパー取り付け部(タイヤハウス部分)、リアドア開口部。

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まだまだ別角度から次世代フレームを紹介!

さらに次世代フレームを別の角度から見てみる

 最後は、今回展示されたフレームを別角度から紹介しよう。リアドア方向から見たものと、ミラーに反射させたアンダーパネルの裏側だ。

 また、「SKYACTIV-VEHICLE ARCHITECTURE」には、静粛性に関するコンセプトも紹介されていた。ノイズのもととなる、ボディに入った振動エネルギーに対して、エネルギーが集まる部位の特質に応じて、「減衰節」や「減衰ボンド」という高効率で振動を減衰させられる構造を新たに設けることで、静粛性を高めたそうである。

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後方から前方を見て撮影。フロアパネルの形状は、必ずしも左右対称ではないことがわかる。

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フロアパネルの裏側。前方から撮影。

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同じくフロアパネルの裏側。右リアドアの横辺りから撮影。

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